どうして今さら
まさかのヒロインであるマーガレットとカミュ第二王子と遭遇。私はカミュ第二王子に、リアスはマーガレットに声をかけられるという事態に、軽くパニックになる。
(どうしてマーガレットはカミュ第二王子ではなく、リアスに声をかけているの!? しかも自己紹介までして「よろしく」って、どういうこと!?)
マーガレットに突然声をかけられ、驚きながらも応対するリアスを見て、心がざわついているのに。
「サンフォード公爵令嬢、あのお茶会で君が見せてくれた珍しい羽根ですが」
カミュ第二王子が話しかけてきた。しかも……。
(羽根!? 何よ羽根って……あ、ああ、フウチョウの尾羽のこと!?)
「あの後、調べたんですよ。フウチョウ、実に希少な鳥です。王宮の鳥園にもいない鳥でした。どうやってあんな鳥の尾羽を手に入れたのですか?」
(どうして今さらそんなこと……。それにどう手に入れたかって、あの羽根、欲しかったのかしら!?)
「祖父からいただいたんです。珍しいものだからと。もしかするとまだ祖父のところにあるかもしれません。殿下が必要でしたら、取り寄せしますので」
「いや、欲しいわけではなく……」
(では何なんですか!? 私は今、リアスがヒロインの毒牙にかからないか、心配で、心配なのに!)
くわっと睨むと、カミュ第二王子は何とも寂しそうな瞳で私を見ていた。
「???」
「……ごめん。その……あの羽根が欲しいわけではなく……君と……話したかったんだ」
「Pardon?」と問い返したくなり、それは呑み込む。
「あの時、蜂のこともあったし、君が見せてくれた面白い植物を外す必要もあり、話が途中で終わってしまいました。もう少し、サンウエストの話も聞きたかったんです……」
(あああああ、そうでしたか、殿下! 人間、未完了のことは忘れられないっていいますもんね。ですがそんな些末なこと、忘れてくださっていいのに! 第二王子ともなると、いろいろ忙しく、覚えることも沢山あるはず。そんな私とのしょうもない会話、しれっと忘れてしまってよかったのに!)
そう思うが、サンウエストで何か気になることがあったのだろう。ならば三年間も忘れずにいたのなら申し訳ない。とっとと解決してあげて、この会話は終了にしたいと思った。
「で、何を聞きたかったのですか、殿下!?」と畳み掛けそうになったが、そこはぐっと堪える。
「なるほど。そうでしたか。確かにあの日はいろいろありましたから……。サンウエストの何が気にかかっているのでしょうか? 私で答えられることであれば、お答えします」
するとカミュ第二王子は「その……具体的にこれというか……」となんだか答えが要領を得ない。
(カミュ第二王子、ゲームの設定では頭脳明晰、打てば響く対応ができる人だったはずでは!?)
こんなにも私がイライラしてしまう理由。それは私がこうしてカミュ第二王子と会話している間にも、マーガレットがリアスと談笑しているからだ。しかも! マーガレットはさりげなくリアスの腕にボディタッチしているのだ!
相手が攻略対象なら、このボディタッチで好感度が1ポイントほど上がるだろうが、リアスは攻略対象ではない。それにマーガレットはカミュ第二王子をロックオンしているのだ。
(リアスには手を出さないで!)
「アドリアナ、どうしたの、顔色が悪いよ」
「リアス……」
リアスはトレイは上手に片腕で持つと、空いたその手で私の頬に優しく触れた。目の端にはそんなリアスを物欲しげに見ているマーガレットの姿が見える。
「リアス、私……」
頬に触れるリアスの手を自分の両手で包む。
そんな反応すると思わなかったのだろう。
リアスの頬と耳がぽっと赤く染まる。
「うん……アドリアナ、どうしたの……?」
私がいつになく甘えることで、リアスは瞬時にとろけるような表情になる。このままリアスの手にキスでもしようと思ったが……。
「私……お腹が空いたわ」
「!?」
「ここ、ピザが焼けるいい香りが漂っているでしょう。もうお腹がペコペコなの」
「アドリアナ……」
私は山猿令嬢を目指していたのだ。可憐な公爵令嬢ではなかった。そもそも男性慣れしていないし、婚約者への甘え方なんて……そう器用にはできない。
その結果。
いつもの私らしい対応になってしまったが……。
「そうだね、アドリアナ。この香りをかいでいたら、お腹がすくよ。僕も同じ。お腹ぺこぺこだよ。早く食べたいね。僕とアドリアナで作った、このハートのピザ。婚約して初めて一緒にした料理だよ。きっと美味しいはず」
いつもの私、それはリアスが好きな私なのだ。
彼はすぐに私の言葉に反応し、甘々な笑顔になった。
こうなるとリアスは私以外はアウトオブ眼中となり、完全に二人の世界オーラを発する。
さすがのマーガレットもこれでは声をかけられないし、それに。
「では次、そちらの二人。ピザをこの窯に入れて」
マーガレットとカミュ第二王子が運んできたピザを焼く番になっていた。
お読みいただき、ありがとうございます!
いろいろと、ハラハラドキドキ!
続きは今晩、更新します~



























































