うんと乙女
林間学校一日目。
午前中、ロッジに到着したら荷物整理、チームで軽く打ち合わせをしたら、男子チームと合流する。そこから用意されている野外炊飯スペースで、昼食作りに挑戦。
午後の予定はクラスごとに変わるが、A組とB組は白樺の森の散策で、C組は湖でボートに乗ったり、釣りに挑戦したりだった。明日は午前中、A組が湖、B組はロッジの後片付け、C組は白樺の森の散策。昼食を挟み、午後はB組が湖、A組とC組は後片付けとなっていた。
昼食作りと言っても、高位貴族の令嬢・令息なのだ。そんな本格的な調理作業はできない。ゆえにメニューはピザ! 具沢山のピザを数種類作り、さらにデザートピザも焼く。生地はあらかじめ用意され、トッピングする肉や野菜はカットしたものも準備されている。さらにピザ窯でピザを焼く職人はいるので、生徒は生地を伸ばし、ソースを敷き、トッピングを載せればよかった。
それでも普段、そんな作業をしないので、生徒たちは大いに盛り上がる。
「生ハムもトッピングしちゃっていいの?」
「いや、それは焼き終わってからじゃない?」
「このポルチーニとマッシュルームで、キノコのピザなんてどう?」
こんな感じで皆、楽しそうに生地を伸ばし、トッピングを行っている。
「わー、見て! レイノルズ侯爵令息とサンフォード公爵令嬢のこのピザ、とっても素敵!」
「生地がハート型で、そのハートに沿って、スライスしたオリーブが並べられているわ。中央はトマトソースで、情熱的な愛を表現したのね!」
「焼きあがったら、生ハムをバラの形にして飾って、さらにバジルを散らすんだって!」
リアスと私とで用意したピザは、早くも女生徒の注目を集めている。ハート型にしようと言い出したのはリアスで、そういう発想ができるところは本当に。
(リアスは私なんかより、うんと乙女だわ!)
「アドリアナ、一緒にこれをピザ窯まで持って行こう」
「あ、それなら私一人で持てるから大丈夫よ」
そう応じると、リアスはうるうるの瞳で私を見つめる。これには「!?」と驚いていると。
「サンフォード公爵令嬢。これは愛の共同作業なんです。一緒にピザ窯まで運ぶことに意味があるんですよ」
そうフォローしてくれるのはアンバー。
「愛の共同作業!?」
驚く私にアンバーが説明してくれる。
「そうです。一緒に生地をハート型に形成し、ソースを塗り、オリーブのトッピングをしましたよね。ここまで二人で頑張っているのです。ピザ窯まで行くのも、二人一緒がいいわけですよ」
「え、そうなの!?」
「そうだと思いますよ」
そこでリアスを見て、声には出さず「そうなの?」と目で尋ねると……。リアスの透明感のある美しい碧眼が「イエス!」を示すがごとく、キラキラと輝いている。しかももしリアスに尻尾があったら、喜びでビュンビュン振っている姿が想像できた。
(リアス、あなた、やっぱり、私なんかよりうんと乙女だわ!)
「分かったわ。じゃあ、一緒に行きましょう」
リアスは嬉しそうに何度もこくこく頷き、すぐにハート型ピザを載せた木製のトレイを手に持つ。私はというと、そのリアスの横に並んで歩くことになる。
「「「いってらっしゃいませ」」」
一緒に作業していた女子チームのみんなと、アンバーとセーブルに見送られ、リアスと歩き出す。
(これって付き添いをしているようなもので、私、不要よね……。それなら別の作業をすればと思ってしまうけど、そこは違うのよね、きっと。こうやって一緒が幸せと)
確認するようにチラッと長身のリアスを見上げると、「!」と彼は私を見る。その瞬間、リアスは全力の笑顔に変わるので、本日何度目か分からない悶絶死の危機を迎える。
「しっかりなさって!」
「ああ、私もくらっと」
「お気を確かに!」
リアスの全力の笑顔は目撃した女生徒たちの、キュン死案件もやはり多発していた。そんなこんなでピザ窯エリアに到着した時。
(げっ)
心の中で叫んでいる。
なぜならピザ窯の列の最後尾、そこにいたのはヒロインであるマーガレットとカミュ第二王子だったのだ!
ストロベリーブロンドをツインテールにして、上目遣いのローズクォーツのような瞳をカミュ第二王子に向けるマーガレットは、まさにぶりっ子オーラ満点。対するカミュ第二王子は、落ち着いた表情でその視線を受け止め、二人は何かを話していたが。
カミュ第二王子のエメラルドのような瞳が私に向けられた。
(やばい、目が合ってしまったわ!)
慌てて逸らしたが。
「君は……サンフォード公爵令嬢だね。三年ぶり、かな。同じ学院だったのに、これまでこんなふうに会うことがなかったね」
「カミュ第二王子殿下、ご挨拶が遅れており、申し訳ありません。私はB組ですので、接点がございませんというか……」
「うん、そうだよね。どう、B組は?」
カミュ第二王子とはあのお茶会以来なのに! まるでそれが昨日の出来事のように話しかけてくる。この事態に焦りながらリアスを見ると……。
「あ~、B組の王子様♡ A組でもあなたのこと、有名なんですよぉ~。すっごいハンサムな令息がいるって。あ、私、マーガレット・ザックラインって言います! よろしくお願いします、レイノルズ侯爵令息♡」
お読みいただきありがとうございます!
ヒロインが絡んできた!
続きはまた明日公開しますね~
引き続きブックマークや☆評価で応援していただけると、とても励みになります!
よろしくお願いいたします☆彡




























































