三年間を思い出す
「アドリアナは僕のこと、好き?」
(美青年リアスのことが好きか、どうかって。それは……)
「す、好きよ。好きに決まっているでしょう! だってリアスはあんなに泣き虫で、私に『僕には無理で……そんな腕力もないから、勝てっこなくて』って言っていたのよ。それがこんなに立派になって! リアスのことは私が育てたようなもの。弟子であり、弟みたいであり、友であり、仲間だけど……。なんだか最近、ドキドキすることが多くて。……これはきっと好きなんだと思うわ」
そう言葉にしながら、美青年リアスと過ごした三年間を思い出す。
馬に乗るのも及び腰で、剣が重たくて持てなかったり、槍を投げようとして自分自身も前のめりなったり。体力づくりのマラソンをして、なんとか走り切って大の字になっていたり。玉のような汗をかきながら、腕立て伏せを頑張っていた。
ところが十三歳になったら、いきなり大人っぽくなって。私と剣の手合わせをしたいと微笑んだかと思ったら、泳げないくせに池に飛び込むし。
(そういえばあの時、私がリアスをお姫様抱っこして助けたのよね)
学院に入学する頃にはすっかり美青年になり、ジャスパー、セーブル、アンバーもリアスには一目置くようになっていた。そして自身のたゆまぬ努力で、デビュタントでのエスコート役を手に入れたのだ。
(こんなに努力家で頑張り屋でめげない一途な美青年。後にも先にもリアスしかいないと思う。弟子だなんて、嘘。弟というのも嘘。友であり仲間というのも嘘。私もずっと……気づけばリアスのこと、好きだった)
「本当に? 僕のこと、アドリアナも好きなの? 僕と婚約してくれるの?」
「男に二言がないように、女にも二言はないわ!」
「アドリアナ……」
「好きなんでしょう、私のこと? 私も好きだって言っているんだから、そこは自信を持ちなさい!」
「! そ、そうだね」
なんだかさっきまで王子様だったのに。私も好きだと言ったら、美青年リアスから乙女になってしまった。
「じゃあ、ちゃんと男らしく、もう一度」
そう言うと美青年リアスは握っていた私の手を一旦離し、片膝を地面につき、跪く。その上で右手を胸に当て、左手を差し出す。
「アドリアナ、愛しています。僕と婚約してください」
月光を受け、キラキラ輝く碧眼で私を見上げたリアスは、今まで見た最上級の笑顔になる。
「リアス、私もあなたを愛しているわ。婚約しましょう」
差し出された手に、自分の手を載せる。
「アドリアナ……」
泣き笑いの美青年リアスが私の手の甲にキスをする。そしてそのまま立ち上がり――。
「永遠に一緒だよ」
「ええ、リアス。ずっとあなたのそばにいるわ」
ふわりと優しく抱き寄せられた。
◇
悪役令嬢として転生したのに。
本来、婚約するはずだったカミュ第二王子とは何もなく。クロノス王立学院に入学しても、ヒロインや攻略対象と同じクラスになることもなかった。
それどころか……。
泣き虫弱虫と言われていたモブ令息が、まさかの美青年へと成長し、悪役令嬢である私にプロポーズしてくれたのだ!
(間違いないく、私、悪役令嬢にならずに済むわ!)
既に水面下で動いていたこともあり、私と美青年リアスとの婚約は、とんとん拍子で話が進む。何より普通なら時間がかかる国王陛下の許可があっさり通ったのも大きい。それは戦争の英雄であるリアスの父親からの「ぜひに陛下、お願いします」という一言があったからだろう。
国の英雄の願い、無下にはできない。それに国に大きく貢献した先代公爵、つまり祖父も国王陛下に働きかけてくれた。そのおかげで、国王陛下の許可もあっという間に下りたのだ。
婚約にあたり結ばれる契約書。それは娘のデビュタントに合わせ、用意している親が多い。私の両親も準備していたのでそちらの締結もスムーズに進む。
こうしてデビュタントからは二か月、プレデビュタントからは四か月後で、リアスと私の婚約は成立。祖父が首都にいる間にこぢんまりと婚約式も挙げることになる。
ちょうど婚約が成立した時、世の中はバカンスシーズン真っ只中。多くの貴族が避暑で首都を離れている。それでもジャスパー、セーブル、アンバー、それにクリスタほかいつものお茶会令嬢仲間が婚約式に参列してくれた。
そんなこんなでクロノス王立学院に入学してから迎えたバカンスシーズンは、あっという間に終わり、まだ残暑が厳しい八月の終わり。学院では林間学校が行われることになった。
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まさかの泣き虫リアスくんと……♡
続きは明日、お昼に公開します〜
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