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第4章【四つの惑星】

 レプ・オルジオンが、次第に小さくなっていった。


 オーロラ・ホライズンの大きな展望窓から、ファフィニョは惑星の山々や再建された街、紫の大地が、ゆっくり一つの球に溶け合っていくのを見ていた。

 三つの太陽は背後へ遠ざかり、船体にオレンジ色の反射を投げかけていた。


 飛び立ったのだ。

 本当に。


 何年もの間、埋もれ、放置され、ほこりをかぶっていたレジスタンスの古い母艦が、再び宇宙を進んでいた。

 ファフィニョはガラスに片手を当てた。

 数秒間、エンジンの音も、中央端末からアクセルが伝える指示も耳に入らなかった。

 赤いボタンを押したらどうなるのかと、ケイルが三度目の質問をしている声も聞こえなかった。

 ただ、遠ざかるレプ・オルジオンを見つめていた。


「で……」と背後でケイルが言った。「このボタンは脱出ポッドを放出するのか、それとも砲を撃つのか?」


「どちらでもありません」とアクセルは答えた。「貨物区画の照明を制御します」


「だったら、どうして赤いんだ?」


「製造者の美的判断に、疑問が残るためです」


 ケイルが押した。

 艦橋全体に、警報が炸裂した。

 照明が消え、赤い点滅灯に切り替わった。

 いくつもの隔壁が、音を立てて閉じた。


「何したの!」とナイラが叫んだ。


「照明を制御するって言っただろ!」


「貨物区画の照明を制御すると言いました」とアクセルは説明した。「それしか接続されていないとは、申し上げていません」


「触る前に、それも教えてくれたら助かったぞ!」


「触れることを推奨してもいません」


 ファフィニョは窓から離れ、端末へ走った。


「アクセル、警報を止めて!」


「処理中」


「ケイル、もう押さないで!」


「直そうとしてるんだ!」


「余計にいろいろ押してるだけだよ!」


「それで直ることもある!」


「統計的には、ありません」とアクセルが言った。


 警報が止まった。

 明かりが戻り、隔壁が金属のため息をつくように開いた。

 そのあ後の静けさは、二秒も続かなかった。


「全部、想定内だった」とケイルは宣言した。


 ナイラは彼を見つめた。


「もう何も触らないで」


「それじゃ、この任務での俺の働きが大幅に制限されるぞ」


「その危険なら受け入れるわ」


 ケイルは両手を上げ、端末から離れた。

 ファフィニョは笑った。

 だが、艦橋の座席の一つに気づくと、笑みが消えた。

 空席だった。


 船のほかの場所と一緒に、そこも掃除されていた。

 背もたれには古い傷がいくつか残り、片側に不揃いな切り込みがあった。

 かつてオーロラ・ホライズンが星々を旅していたころ、ブラックが実際にそこへ座ったことがあるのか、ファフィニョは知らなかった。

 それでも、彼ならその席を選んだと思えた。


 みんなの近くで。

 腕を組み、心配などしていないふりをして。


 ナイラはファフィニョの視線を追った。

 何も言わなかった。

 ただ、肩が触れそうなほど近くへ寄った。


「ファフィニョ」とアクセルが呼んだ。「関係する可能性のある信号を発見しました」


 中央の投影台が起動した。

 その上に、不完全な記号で覆われた青い格子が現れた。


「帝国ネットワークの地図か?」とケイルが尋ねた。


「航行ネットワークの一部です。オーロラ・ホライズンの記録には古い航路がありますが、大半が破損しています。復元には、帝国の標識装置に短時間接続する必要があります」


 ファフィニョは記号を見つめた。


「僕たちを見つけられる?」


「その可能性はあります」


「どれくらい?」


 アクセルはわずかに首を傾げた。


「あなたの許可なしでは試さないよう、ナイラから求められる程度には」


 ファフィニョは彼女を向いた。


「いつから、僕の船で君が許可を出すようになったの?」


 ナイラは片眉を上げた。


「離陸しようとして、あなたが船をぶつけかけたときから」


「あれは回避行動だよ」


「まだ格納庫の中だったけど」


「壁を回避したんだ」


「こすったの」


「だから、回避したんだよ」


 ケイルは、端末 of 側面についた新しい傷を指さした。


「正確に言えば、壁の一部も一緒に乗ってきてる」


 ファフィニョは無視して、投影に向き直った。


「何と戦うのか、知る必要がある」


「接続は短時間だけよ」とナイラは念を押した。「入って、必要なものを写して、すぐ出る」


「百二十秒間は信号を隔離できます」とアクセルは言った。「その後は、発見される確率が大幅に上昇します」


「やって」


 アクセルの青い目が、輝きを増した。

 投影に白い線が現れ、記号の間を進んだ。

 格子が震える。

 しばらく、何も起きなかった。


 そして、地図が開いた。

 暗闇を走る光の血管のように、航路がオーロラ・ホライズンの周囲へ広がった。

 各区画に何百もの赤い点が現れる。

 ステーション、監視拠点、船。

 そして、完全に同期した動きで移動するように見える構造物。


 ケイルが口笛を吹いた。


「ずいぶん広い領土だな」


「領土ではありません」とアクセルは答えた。「基盤設備です」


 投影の端に、球体が現れた。

 初め、ファフィニョは街に覆われた惑星だと思った。

 だが、表面を走る線が道路ではないと気づいた。

 組立用のベルトだった。


 工業用の帯が、極から極まで世界を取り巻いていた。

 巨大な造船所が大気圏の上に浮かび、何千もの構造物が針のように地表から突き出していた。


「ファブリカ07」とアクセルが言った。「帝国ネットワークの主要な軍需生産拠点です。戦闘ユニット、武器、車両、宇宙船を製造しています」


 惑星全体に、何千もの点がともった。


「あれは全部、兵士か?」とケイルが尋ねた。


「違います」


 ケイルはほっと息を吐いた。


「生産施設群です」


 点は、なおも増え続けた。


「そっちのほうが悪いな」とケイルはつぶやいた。


 映像が、二つ目の惑星へ切り替わった。

 ほぼ完全に黒い世界だった。

 細い塔が地表を覆い、濃い雲の中へ消えている。

 白い稲妻が大気を走り、建物から建物へ跳び移っていた。

 その順序は、自然現象にしては整いすぎていた。


「セルヴ09」とアクセルは続けた。「記録、戦略、アクセスコード、予備データを保存しています。また、ネットワークの各部へ配信する命令も処理します」


 ファフィニョは、光を放つ嵐を見つめた。

 その惑星は、眠っているようには見えなかった。

 考えているように見えた。


 三つ目の球体が投影を満たした。

 地殻が割れていた。

 亀裂から強烈な白い光が噴き出し、映像がゆがむほどだった。

 巨大な導管が地表から延び、軌道上の施設へつながっていた。


「コア・オメガ。主要なエネルギー供給源です。中枢施設に電力を供給し、ネットワーク内で消費量の最も多い処理を支えています」


 ファフィニョは地図へ歩み寄った。


「ここだ」


 ナイラは彼を見た。


「何?」


「ここを狙おう。エネルギー源を壊せば、ほかも全部止まる」


「分析が不完全です」とアクセルは言った。「ほかの施設には備蓄と予備システムがあります。コア・オメガが失われればネットワークは弱体化しますが、即座に崩壊するわけではありません」


「なら、対応される前に壊す」


「どんな防衛設備があるのか、わからないのよ」とナイラが指摘した。


「場所はわかった」


「場所を知るのと、入り方を知るのは違う」


 ファフィニョが答えようとしたとき、四つ目の惑星が現れた。

 ほかより小さいが、巨大な構造物に囲まれていた。

 数十もの環が交差し、機械の檻を形作っている。

 何千ものアンテナが宇宙へ向いていた。


「アンテナ・エックス1」とアクセルは説明した。「ほかの三つの惑星間の通信を統括しています。ここを失えば帝国ネットワークの同期は崩れますが、各世界は限られた範囲で自律機能を保ちます」


 ケイルは眉をひそめた。


「工場、記憶、エネルギー、通信か」


「四つの惑星が、一つとして動いてる」とナイラが言った。


「そのとおりです」とアクセルは認めた。「帝国ネットワークは、どれか一つの構成要素が破壊されても、処理をほかへ振り分けられる設計です。一つの惑星への攻撃だけでは足りません」


 投影には、四つの世界を結ぶエネルギーの流れが映っていた。

 ファフィニョは拳を握った。


 基地か、艦隊か、あるいは別の母艦を想像していた。

 こんなものではなかった。

 四つの惑星を丸ごと、一つの機械の部品にしたもの。


「コア・オメガを攻撃する」と彼は繰り返した。「主なエネルギー源がなくなれば、ほかの三つも弱くなる」


 ナイラは航路を指さした。「そこへ行くには、アンテナ・エックス1の防衛線を越えて、セルヴ09のそばを通らなきゃいけない。近づくよりずっと前に見つかるわ」


「なら、速く動けばいい」


「速さだけで、全部を解決はできない」


「ノード・ゼロでは、うまくいった」


 ナイラの表情が変わった。


「あなたはノード・ゼロから、帰ってこられないところだったのよ」


「でも、帰ってきた」


「ブラックは帰ってこなかった」


 艦橋が静まり返った。

 ファフィニョは、何かに胸を打たれた気がした。

 ナイラは目をそらした。

 口にしたことを悔やむようだったが、言葉は取り消さなかった。


「ブラックなら攻撃してた」とファフィニョは言った。「敵の準備が整うまで、待ちはしなかった」


「ブラックがどうしたかなんて、わからないでしょう」


「僕は彼を知ってた」


「私たちだって、みんな知ってた」


 ファフィニョは首を振った。


「彼は絶対に逃げなかった」


 ナイラは、まっすぐ彼を見た。


「あなたは、ブラックならどうしたかを考えてるんじゃない。そうしてくれたはずだって、自分が信じたいことを考えてるの」


 ファフィニョは口を開いたが、何も答えられなかった。

 鋭い信号音が、言い争いを断ち切った。


 アクセルが投影を向いた。


「警告。接続に外部からの応答がありました」


 地図の青い線が赤く変わった。

 中央にメッセージが現れた。


 ユニットを識別。


 アクセルが動きを止めた。

 その下に、二つ目のメッセージが現れた。


 継承されたアクセス権を検出。


「どういう意味だ?」とケイルが尋ねた。


「わかりません」


 ファフィニョは彼を見つめた。

 アクセルはいつも答えを持っていた。

 必要以上に正確な答えでも、必ず。

 ただ、わからないと答えることはなかった。


 投影がちらついた。


 主要ユニットが未同期。


 アンテナ・エックス1のすべてのアンテナが、同時に回転した。

 こちらを向いた。


「接続を切って!」とナイラが命じた。


「切れません」


 艦橋の照明が消えた。

 オーロラ・ホライズンが震えた。

 隔壁が閉まり、端末に帝国の記号が現れ始めた。


「アクセル、何が起きてるの?」とファフィニョが尋ねた。


「アンテナ・エックス1が、私のアクセス権を利用して船内システムに侵入しています」


 エンジンがうなった。

 ファフィニョは足元をすくわれ、台につかまった。

 展望窓の向こうで、星々が動き始めた。


「針路が変わってる!」とケイルが叫んだ。


 ナイラが操縦装置へ駆け寄った。


「航行制御が反応しない」


「新たな目的地が設定されました」とアクセルが告げた。「コア・オメガです」


 ファフィニョは投影に映る、ひび割れた惑星を見つめた。

 自分が立てた作戦だ。

 ただし今は、敵がそこへ連れていこうとしていた。


「制御を取り戻して」


「信号を隔離するには、取得したデータを削除する必要があります」


「全部?」


「四つの惑星のおおまかな位置は残せますが、取得した内部航路、防衛記録、侵入地点の情報は失われます」


 あの地図が、本当の弱点を見つける唯一の手掛かりかもしれなかった。

 失えば、ほとんど何も見えないまま進むことになる。


「完全に乗っ取られるまで、あとどれくらい?」とファフィニョが尋ねた。


「五十二秒です」


「情報は残せる」とケイルが言った。「転送が終わる前に、通信中継器を切り離せば……」


「過負荷がシステムを伝わる可能性があります」とアクセルが警告した。「艦橋の電力が失われる確率は、四十四パーセントです」


「もっと分の悪い仕事もしてきた」


「いろいろと納得がいきます」


 ナイラが操縦装置を引いたが、船は旋回を続けた。


「ファフィニョ、決めて!」


 コア・オメガが、開いた傷口のように投影の中で輝いていた。

 地図を残せば、破壊する方法が見つかるかもしれない。

 戦争が本格的に始まる前に、終わらせられるかもしれない。


 ファフィニョは、もう一度空席を見た。

 ブラックなら攻撃していた。

 レプ・オルジオンを離れてから、ずっとそう言い聞かせていた。

 ブラックなら前に進んだ。

 ブラックなら恐れなかった。


 だが、別のことも思い出した。

 ケイルの無茶な案を笑わずに聞くブラック。

 誰にもナイラの計画が理解できなくても、彼女を信じるブラック。

 許可など求めず、ファフィニョと危険の間に立つブラック。


 大事だったのは、恐れを感じないことではなかったのかもしれない。

 自分の恐れの代償を、みんなに払わせないことだったのかもしれない。


「接続を断って」と命じた。


 アクセルが顔を向けた。


「データの削除を承認してください」


 ファフィニョはナイラを見た。


「君の航路で行こう」


 彼女はしばらく視線を合わせ、うなずいた。


「承認する」とファフィニョは言った。「全部消して」


「ケイル、予備の中継器です」とアクセルが指示した。「下のパネル、三本目の伝導ケーブル」


 ケイルは端末の前にひざをつき、覆いを引き剝がした。


「青いのか?」


「違います」


「緑の?」


「それも違います」


「燃えてるように見えるやつ?」


「それです」


「最高だな」


 ケイルは両手をパネルに突っ込んだ。

 放電の光が艦橋を照らした。


「今です!」とアクセルが叫んだ。


 ケイルはケーブルを引き抜いた。

 地図が消えた。

 船が激しく揺れ、ファフィニョは床へ投げ出された。

 照明が完全に消えた。

 一秒の間、聞こえたのはエンジンの音と、乗組員たちの荒い息だけだった。


 やがて、非常灯がついた。

 ナイラが操縦装置を押した。

 オーロラ・ホライズンが応じた。


「航行制御が戻った」と彼女は言った。


「接続を除去しました」とアクセルが確認した。「追跡の進行率は三十八パーセント。アンテナ・エックス1には、こちらの正確な位置を特定できるだけの座標情報はないはずです」


 ケイルが開いたパネルから頭を引き出した。

 髪が逆立っていた。


「船は無事か?」


「はい」


「俺の手は、まだ動くか?」


「そのようです」


 ケイルは指を動かした。


「今のところ、最高の任務だ」


 ファフィニョはゆっくり立ち上がった。

 投影が戻ったが、今度は四つの点と、不完全な航路が少しだけ映っていた。


「地図を失った」と彼は言った。


「大事なものは残ったわ」とナイラは答えた。「あれが何で、どこにあるかはわかる」


 彼女は、オーロラ・ホライズンと四つの惑星の間の領域を拡大した。

 不規則な信号に満ちた、暗い帯が現れた。


「カール・ドゥーム帯」と彼女は続けた。「難破船、破壊されたステーション、干渉領域。ここの異常現象なら、アンテナ・エックス1から私たちを隠せるかもしれない」


「俺たちを破壊するかもしれないな」とケイルが指摘した。


「それも『異常現象』に含めておいたつもり」


 ファフィニョは暗い帯を見つめた。

 それから、レプ・オルジオンとの通信を開いた。

 台の上にヴェイルの立体映像が現れた。

 隣にはセイルがいた。


「オーロラ・ホライズン、信号の途絶を検知した」とヴェイルは言った。「報告を」


 ファフィニョは起きたことを説明した。

 話し終えたとき、ヴェイルの顔はいつも以上に険しくなっていた。


「帰還しろ」と彼女は命じた。「標的の存在は確認した。そこに到達できる唯一の船を、危険にさらすわけにはいかない」


「今帰ったら、僕たちが来たことを知られる」とファフィニョは言った。「航路を変えて、防衛を強化する時間を与えてしまう」


「カール・ドゥームへ入れば、こちらは援軍を送れなくなる」


「わかってる」


 セイルは、彼らが残したデータを調べた。


「その帯の干渉なら、あなたたちを隠せるかもしれない」と彼女は認めた。「でも、通信も切れてしまう」


 ヴェイルはファフィニョを向いた。


「これは、お前がブラックの代わりになれると証明する任務ではない」


 その言葉は痛かった。

 それでもファフィニョは目をそらさなかった。


「僕は彼の代わりにはなれない」


 ナイラを見た。

 次にケイルを。

 そして最後にアクセルを。


「でも、一人で全部やる必要もない」


 ヴェイルは黙った。


「カール・ドゥームへ入る」とファフィニョは続けた。「航路を見つけて、情報を持ち帰る。それが僕の決断だ」


「私たちの決断よ」とナイラが訂正した。


 ケイルが片手を上げた。


「賛成だ。ただし、極めて危険な決断だと思っていることは、記録に残してほしい」


「異議を記録しました」とアクセルは言った。「そのうえで却下しました」


「尊重されてるようで、うれしいね」


 ヴェイルの立体映像がちらついた。


「中へ入ったら、帰還を命じることもできなくなる」


「わかってる」


 ヴェイルはさらに数秒、ファフィニョを見つめた。


「なら、その船を失うな」


 通信が切れた。

 ファフィニョは操縦席に座った。


「ナイラ、針路を設定して」


 彼女が座標を入力した。

 オーロラ・ホライズンは暗い帯へ向きを変えた。


 遠く離れたアンテナ・エックス1の軌道環は、動き続けていた。

 接続は終わったが、三つの情報の断片が保存されていた。


 艦船を識別。

 オーロラ・ホライズン。


 予想航路。

 カール・ドゥーム。


 ユニット識別名。

 アクセル。


 一つの命令が帝国ネットワークを横切り、ファブリカ07へ届いた。

 金属の大陸の下で、何千もの明かりがついた。


 回収プロトコルを開始。

 対象ユニットが帰還した。


 数時間後、カール・ドゥーム帯が現れた。

 初めは、星々を覆い隠す染みでしかなかった。

 やがて残骸が姿を現した。

 ステーションの破片、壊れた船の船体、暗闇の中でゆっくり回転する巨大な構造物。

 何世紀も放置されたようなものもあれば、内部にかすかな明かりを残すものもあった。


「干渉が増大しています」とアクセルが報告した。「センサーの稼働率は四十三パーセント」


「まだ半分近くはあるな」とケイルが言った。


「数学的には正しく、戦術的には役に立たない観察です」


 ナイラが速度を落とした。

 オーロラ・ホライズンは、最初の残骸群の間を進んだ。


 そのとき、端末が音を発した。

 信号だった。


 ファフィニョはアクセルを見た。


「アンテナ・エックス1?」


「違います。発信源は、この帯の内部です」


 画面に識別信号の列が現れた。

 ケイルが端末に身を乗り出した。


「俺たちのコードだ」


「私たちの?」とナイラが尋ねた。


「オーロラ・ホライズンの識別コードです」とアクセルは答えた。「この信号は、旧式の接岸プロトコルを使い、本船と通信しようとしています」


 メッセージの読み込みが終わった。


 オーロラ・ホライズン。

 接岸を要請。


 その下に、二行目が現れた。


 登録乗組員。

 死亡。


 ファフィニョの体を悪寒が走った。

 三行目が、ゆっくり形になった。


 アクセル・ユニット。

 帰還を確認。


 全員が、白いロボットを見た。


「アクセル」とファフィニョは言った。「前に、ここへ来たことがあるの?」


 青い目は、メッセージを見つめたままだった。


「ありません」


 信号が繰り返された。

 残骸のどこかで、何かが目覚めた。

 暗闇に、二つの白い光が現れた。

 そして、近づき始めた。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


ファフィニョたちの新たな決断と、不穏に動き出す運命の歯車を一緒に見守ってくださる読者の皆様に、作者一同、心より深く感謝申し上げます。皆様からいただける温かい応援こそが、何よりの執筆の原動力です。


謎の信号が告げる衝撃のメッセージと、暗闇から近づく二つの白い光――。アクセルの過去に隠された秘密とは一体何なのか、物語はここからさらに緊迫した展開へと突入していきます。


オーロラ・ホライズンを待ち受ける次なる衝撃の航海を、ぜひ次の章でも見届けていただければ幸いです。


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次章も全力でお届けします。どうぞよろしくお願いいたします!

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