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ふしぎな森の小さな冒険者  作者: S.S


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第8話 黒い影の正体

 青い水晶の前に、黒い影が立っていた。


 ユウは動けなかった。


 目の前にいる相手から、とても嫌な感じが伝わってくる。


「ようやく見つけたぞ」


 黒い影が低い声で言った。


 カイが一歩後ろへ下がる。


「どうしてここまで……」


「お前が勝手に逃げたからだ」


 黒い影はゆっくりとカイへ近づいていく。


「戻ってこい」


「嫌だ!」


 カイが叫んだ。


「僕は帰りたくない!」


 ユウはカイを見る。


「どういうこと?」


「僕のいた世界では、森や動物なんてなかった」


 カイは震える声で話した。


「僕はずっと一人だったんだ」


 黒い影が笑った。


「だからこそ、お前には戻ってきてもらわなければ困る」


「嫌だ!」


 カイはもう一度叫んだ。


 そのとき、ユウの持っていた青い箱が強く光った。


 ピカッ!


「うわっ!」


 青い光が部屋いっぱいに広がる。


 黒い影が腕で顔を隠した。


「その箱……!」


 黒い影の声が変わった。


「まさか、もう一つの箱を見つけたのか!」


「そうだよ」


 ユウは箱を胸の前に持った。


「これは僕が見つけたんだ」


「それを渡せ」


「嫌だ」


「なぜだ?」


「君が悪いことをしそうだから」


 ユウはまっすぐ黒い影を見る。


 黒い影はしばらく黙っていた。


 そして、小さく笑った。


「子どもが私に逆らうか」


 黒い石を持った手を上げる。


 すると、床から黒い煙が出てきた。


「ユウ!」


 モコが叫んだ。


「逃げて!」


 ユウたちは急いで横へ走った。


 黒い煙が床を覆っていく。


 ルルが足を滑らせた。


「きゃっ!」


「ルル!」


 ユウはすぐにルルの手をつかんだ。


「大丈夫?」


「う、うん!」


 モコもユウの肩へ飛び乗る。


「こっち!」


「どこへ?」


「あそこ!」


 モコが指さした先には、小さな通路があった。


「早く!」


 四人は通路へ走り込んだ。


 黒い煙が後ろから追いかけてくる。


「急いで!」


 カイが叫ぶ。


 ユウは必死に走った。


 すると、通路の先に明るい光が見えてきた。


「出口だ!」


 ユウが叫ぶ。


 四人が外へ飛び出した。


 そこは、森の中にある小さな広場だった。


「助かった……」


 ユウはその場に座り込んだ。


 しかし、カイは安心していなかった。


「まだだ」


「え?」


「あいつは、必ず追ってくる」


 カイが振り返る。


 すると、洞窟の入り口から黒い煙が出てきた。


「もう来た!」


 ルルが叫ぶ。


 黒い煙は広場の中央まで広がり、やがて一つの姿へ変わっていく。


 黒い影が現れた。


「逃げても無駄だ」


 ユウは立ち上がった。


「どうしてカイを追いかけるの?」


 黒い影はユウを見る。


「カイには、私たちの世界を変える力がある」


「力?」


「そうだ」


 黒い影は黒い石を掲げた。


「そして、その力を使うためには、二つの青い箱が必要なのだ」


 ユウは自分の箱を見る。


 そして、カイの箱を見る。


「じゃあ、二つの箱を使うと何ができるの?」


「それは――」


 黒い影が答えようとした瞬間だった。


「待って!」


 青い水晶の中にいた女の子の声が、森中に響き渡った。


 ユウたちは一斉に水晶を見る。


 いつの間にか、水晶は洞窟の外まで移動していた。


 女の子がユウたちを見つめている。


「二つの箱を合わせてはいけない!」


「どうして?」


 ユウが尋ねる。


 女の子は悲しそうな顔をした。


「二つの箱を合わせると……」


 そこで言葉を止める。


「この森が、消えてしまうから」


「え……?」


 ユウは驚いた。


 モコもルルも何も言えない。


 カイだけが、何かを知っているような顔をしていた。


「カイ?」


 ユウが振り返る。


 カイは静かにうなずいた。


「僕も……それを知ってる」


 ユウはカイを見つめた。


「じゃあ、どうして箱を集めてたの?」


 カイは答えられなかった。


 そのとき――。


 黒い影が動いた。


「話は終わりだ」


 黒い石から黒い光が放たれる。


「箱を渡せ!」


 ユウは青い箱を強く握った。


「渡さない!」


 すると、箱から青い光があふれ出した。


 その光はユウたちを包み込み、黒い光を押し返していく。


「なに……?」


 黒い影が驚く。


 ユウ自身も驚いていた。


「僕の箱が……」


 青い光はどんどん強くなっていく。


 そして、その光の中から――。


 一匹の小さな青い鳥が現れた。


「え?」


 青い鳥はユウの目の前を一周すると、森の奥へ飛んでいった。


 モコが目を見開く。


「あの鳥……」


「知ってるの?」


「うん」


 モコは驚いた顔で答えた。


「あれは、森の守り鳥だよ」


 青い鳥は森の奥で一度だけ振り返った。


 まるで、ユウたちをどこかへ案内しているようだった。


「追いかけよう!」


 ユウが走り出す。


 モコ、ルル、カイも後を追う。


 その後ろでは、黒い影が静かに笑っていた。


「行け……」


 黒い影はつぶやいた。


「その先にあるものを見れば、すべてが分かる」


 青い鳥を追いかけて、ユウたちは森のさらに奥へ進んでいく。


 そこには、今まで誰も見たことのない場所が待っていた。



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