第7話 扉の向こう側
巨大な木の根元にある扉が、ゆっくりと開いていく。
ギギギギ……。
古い扉が動く音が、静かな森に響き渡った。
「この先に、何があるんだろう……」
ユウは青い箱を握りながら、扉の向こうを見つめた。
中からは、青い光があふれている。
まぶしいほどの光なのに、不思議と目は痛くなかった。
「気をつけてね、ユウ」
モコが肩の上から声をかける。
「うん」
ルルもユウの隣に立った。
「私も一緒に行くよ」
そして、黒い服を着た男の子も二人の隣に並んだ。
「僕も行く」
「そういえば、まだ名前を聞いてなかったね」
ユウが言った。
男の子は少し驚いた顔をした。
「名前?」
「うん。なんて呼べばいい?」
「……カイ」
「カイ?」
「それが僕の名前」
ユウは笑った。
「じゃあ、カイ。一緒に行こう」
「うん」
四人は扉の向こうへ進んだ。
扉をくぐった瞬間、ユウは驚いた。
「うわ……!」
そこには、広い空間が広がっていた。
洞窟のような場所なのに、天井には無数の小さな光が浮かんでいる。
まるで夜空の星のようだった。
「きれい……」
ルルが目を輝かせる。
「ここ、すごいね」
ユウも周りを見回した。
壁には不思議な絵が描かれている。
たくさんの動物。
大きな木。
そして、その木の前に立つ一人の人間。
「これ……誰だろう?」
ユウが壁の絵に近づく。
その人物は、二つの青い箱を両手に持っていた。
その周りには、たくさんの動物たちが集まっている。
「この人が、箱を作ったのかな?」
ユウが言う。
「分からない」
カイが答えた。
「でも、僕がこの森に来たときも、この絵を見た」
「カイはどうしてこの森に来たの?」
ユウが尋ねる。
カイは少し黙った。
「僕は、別の世界に住んでいた」
「本当に別の世界なんだ……」
「うん」
カイは壁の絵を見つめた。
「ある日、僕の住んでいた場所に大きな光が現れた」
「光?」
「その光に触れたら、気がついたときにはこの森にいた」
「じゃあ、どうして帰れないの?」
「分からない」
カイは首を振った。
「この森に来たとき、僕は二つの箱を見つけたんだ」
「それが、今持っている箱?」
「そう」
カイは箱を見つめた。
「でも、片方をなくしてしまった」
ユウは自分の箱を見る。
「それが僕の見つけた箱なんだね」
「たぶん」
カイはうなずいた。
そのときだった。
奥の方から、また声が聞こえた。
「……たすけて」
ユウはすぐに振り返った。
「この声だ!」
モコも耳をぴんと立てる。
「奥から聞こえる!」
四人は声のする方向へ進んだ。
少し歩くと、広い部屋に出た。
部屋の中央には、大きな青い水晶が浮かんでいる。
水晶の中には、小さな光が閉じ込められていた。
「これ……何?」
ユウが近づく。
すると、水晶の中から声が聞こえた。
「たすけて……」
「この中に誰かいる!」
ユウが驚く。
カイも水晶を見つめた。
「まさか……」
「知ってるの?」
「この光……僕が見た光と同じだ」
カイが水晶に近づく。
すると、水晶が突然強く光った。
部屋全体が青く輝く。
「うわっ!」
ユウたちは思わず目を閉じた。
そして光が消えたとき――。
水晶の中に、一人の女の子の姿が映っていた。
長い髪。
白い服。
そして、悲しそうな顔。
「お願い……」
女の子がこちらを見る。
「森を……助けて……」
ユウは息をのんだ。
「君は誰?」
女の子は答えようとした。
しかし、その瞬間。
部屋の奥から、大きな音が響いた。
ドン!
ドン!
ドン!
「何の音?」
ルルが震える。
カイの顔が青ざめる。
「……来た」
「誰が?」
「僕を追ってきたものだ」
部屋の入り口を見る。
暗闇の向こうから、黒い影がゆっくりと姿を現した。
「逃げて!」
水晶の中の女の子が叫ぶ。
「そいつは、この森を壊そうとしている!」
ユウは一歩下がった。
黒い影が、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。
その手には、見たことのない黒い石が握られていた。
「カイ……あれは何?」
ユウが尋ねる。
カイは震えながら答えた。
「僕の世界にあったものだ」
「じゃあ、あいつも別の世界から来たの?」
「……うん」
黒い影が立ち止まった。
そして、低い声で言った。
「ようやく見つけたぞ」
ユウは青い箱を握りしめた。
モコとルルもユウのそばに集まる。
カイは二つ目の箱を握った。
四人は、目の前の黒い影を見つめる。
森の秘密をめぐる冒険は、ここから大きく動き始めようとしていた。




