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5-4. モーターをいつ回すか

私はサーヤにパンを渡すと家に帰った。気付けば遅い時間になってしまったなぁ。


「おかえり、ルシア。ちょうど良かったわ。晩御飯にしましょう。」


お母さんが夕食を運んできた。スープを見るといつもより水分が多い気がする。


「おお?今日は水分が多めか?」


お父さんも同じことを思ったみたい。ホタルは自分に関係ないからか、興味無さそうに頭上でクルクル飛んでいる。


「ええ、水汲みが楽で、前よりもたくさん汲んでもしんどくないから、奮発しちゃったわ。」


お母さんは頬に手をあて、恥ずかしそうに笑う。お母さんが嬉しそうで私も嬉しい。


「ああ、ルシアのお陰だな。俺は一昨日、カイルの父親からお礼を言われたぞ。だから、うちのルシアはすごいんだぞって自慢してやったさ!」


お父さんはニカッと笑って私を見る。


そういえば最近お父さんは頭を撫でてくれなくなった。アレクさんがサーヤを撫でる様子を見ていたからか寂しく感じてしまっているみたい。ちょうどよく、ホタルが私の頭にとまってくれた。


「じゃあ、もっと楽になるように、銅線の絶縁皮膜、よろしくお願いします!」


私はホタルを手のひらにのせて、2人で可愛くお父さんにお願いする。1日でも早く完成するように念押しだ。


「わかった。わかった。」


お父さんは苦笑しながら頷いた。


それからはまたお客さんが希望する度に井戸に行ってモーターを回した。


今作ってる地中送電が完成すれば、私がいなくても井戸で水が汲めるようになる。それは、動力となる電気を、私が家にいながらでも送れるようになるからだ。


でも水を汲むのはいつにしよう?24時間電気を送りっぱなしなんて、全然楽じゃないし。


「ターラおばさん、水を汲みたいっていうときだけモーターを回したいんだけど、どうすればいいかな?」


一緒に井戸に向かうターラおばさんに聞いてみた。ターラおばさんは、娘さんが街に出てから夫と2人暮らししている人だ。誰とでも笑顔で分け隔てなく接してくれるから、"にこにこターラ"なんて呼ばれている。


「どうって?娘がいなくなってから水汲みが大変で、すごく助かっていたんだよ。今のままではダメなのかい?」


ターラおばさんは悲しそうに私を見る。ああ、水汲みはやらないよって伝わってしまったみたい。『そうじゃないよ!』と示すように、私はホタルと一緒にブンブンと頭を振る。地中送電の構想をターラおばさんに披露した。


「つまり、パン屋にいながら水を汲んでほしいタイミングが分かれば、井戸にいなくても水を汲んでくれるってことかい?」


私は頷いた。ターラおばさんは腕を組んで考えてくれている。私とホタルは静かに井戸への歩みを進める。


「ルシアちゃん、それなら時間を決めて水を汲むのはどうだい。水の用途は主に水やりだろう?水やりは早朝と夕方にするから、それにあわせて水を汲むのはどうかね。」


「それはいいですね。1日に何度も回さなくていいし、とっても楽そうです!」


私は鼻唄を歌ってしまいそうなぐらいに嬉しい。ターラおばさん曰く、水汲みを頼むためにパン屋に来ていたけれど、それ自体が面倒だと思っていたそうで、お互いにとっていい方法かもしれない。


「ありがとうございます。地中送電ができるまでまだ時間があるので、いったん時間指定で試してみたいと思います。」


ターラおばさんは満足そうな顔をしたあと、口角をあげて話し始めた。


「そういえば、カイルとは仲良くやってるようだね。カイルがルシアちゃんのこと、街で自慢してたって聞いたよ。」


ええ?なんで?


「街の往来の真ん中で、金物屋の子に『ルシアのことは俺の方がこんなにも知ってるんだ!』ってね。なんでもルシアちゃん、金物屋の子とこの間ふたりきりで歩いてたらしいじゃない?その話を聞いてカイルが街に飛び出して行ったんだってさ。」


ターラおばさんは口元に手を当てて楽しそうに話す。


ねぇ、なんだかニヤニヤしてない?


「アレクさんと会ったあとにサーヤも合流したし、ふたりきりじゃなかったよ。それに、カイルとは同じ村に住んでるんだから、よく知ってるのなんて当たり前だよ。」


私はホタルと一緒にジトッとした目でターラおばさんを見る。


「おやおや、照れてるのかい?んふふ。若いっていうのはいいわねぇ。」


「照れる理由なんてないです!」


ターラおばさんは、あらあらまぁまぁと私をみながら笑っている。


だめだ。話が通じそうにない。


「もういいです!早く井戸に行きましょう!」


私はターラおばさんの手を引いて、道を急いだ。ちなみにこの人、噂好きで有名だから、裏では"おしゃべりターラ"なんて言われてるそうだ。

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