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4-1. 水汲みも電動で

「ルシア、起きて。もう朝よ?」


リビングからお母さんの声が聞こえる。


「ううう。眠いよぉ。」


私は布団のなかでモゾモゾ動きながら、少しでも長く眼を閉じていようとする。


「朝御飯、もうすぐできるから、早く着替えて出てきなさい。」


ぐー…。


眠いのに、ご飯と言われてお腹が鳴った。朝イチなのに欲望に忠実なお腹である。私はのそりと起き上がり、着替えてリビングに行く。私はダイニングチェアに座り、3人で朝ご飯を食べ始めた。


「そういえば、サーヤちゃんのお母さん、水汲みで腰を痛めてしまったそうなの。カイルくんのお母さんも、随分前に肩を痛めたって言っていたし、本当に大変よね。」


水汲みは井戸の深いところのお水を汲むからどうしても重労働で、身体に負担がかかってしまう。


「このあいだ、サーヤも水汲みは苦手って言ってたよ。もっと楽になるといいのにねー。…あ、ホタル、おはよう。」


寝ぼけた様子で飛んできたホタルをなでなでする。


ピリッ


「…電動ポンプ?」


脳裏に電動ポンプが浮かんだ。


まただ。ここじゃない場所で、私は電動ポンプを使って、水を吸い上げていたことがあるらしい。


「なんなの、これ?」


よく分からなくて私は頭を振った。


でも…。水汲みを電動にしてしまおう。そうしたら、私も皆も楽ができるはずだ。なんだったら、サーヤも私のことを見直して、また前みたいに話せるようになるんじゃないか。


「お父さん!井戸まで水汲みにいってくるね。」


私は石臼から外したモーターや、たくさんのバケツやロープ等を台車に乗せて、井戸に急ぐ。


「井戸の水汲みは滑車式なんだよねー。」


滑車式は、井戸の上に取り付けた滑車の両サイドにバケツがついており、それを降ろして水を汲み上げる形だ。


「モーターがあるから遠心ポンプとかが良いけど、土属性でも難しそうなんだよね。」


私は、むぅっと考え込んだ。モーターで石臼がぐるぐると回して小麦粉ができるように、井戸の中で羽根を回して水を押し上げるのが遠心ポンプだ。


「でもかなり精巧に作らないと気泡ですぐに壊れちゃうよね。」


土属性で扱える度合いがよく分かっていないけれど、なかなか難しそうだ。


「よし、今回は簡単に作っちゃおっか。」


ピカピカッ


ホタルが私の目の前をクルクルまわりながら光った。『ぼくも一緒に作れるかな?』ってことかな。


「ふふっ。いっくよー、ホタル!」


フワッ


私がロープの端をホタルに渡せば、ホタルがくるんと飛んで輪をつくった。次に、私が等間隔に目印をつけていくと、ホタルがそこにフックを取りつける。あとはロープを滑車にかけて、バケツを取り付ければ、あっという間に完成だ。


「準備よし。じゃあ早速、モーターを回してみよっか。」


ホタルが『任せて!』と言うようにピカッと光ると銅線まで飛んでいき、ペタッと触る。私は手をかざして電気の流れを確認する。


ギシギシ。


ロープがゆっくりと動きはじめる。するとしばらくして井戸の中から水音が聞こえてきた。


パチャ。チャプ。


ロープのフックに取り付けたバケツに水が入り、ロープの動きに合わせて地上に引き上げられてくる。


「いいよ、あとちょっと…。よし、水の入ったバケツを外して…。って、外れない!ちょっと待ってぇ…。ーーーーきゃあああ!」


バシャアッ。


ロープのフックからバケツが上手く外せなくて、勢いよく頭から水を被ってしまった。


「ううう、モーターを止めるか、バケツが外れやすいフックにすべきだったね。」


私はびしょ濡れになった身体をみる。ホタルがビックリして慌ててモーターを止めて私の方に飛んできた。私は恥ずかしくて、ホタルにえへへとはにかんだ。


タタタタッ


「ルシア!だいじょうぶ!?」


「えっ。サーヤ!」


気付くとサーヤが走ってきて、私を心配そうに覗き込んだ。


「びしょ濡れじゃない!怪我はしてない?」


「うん、ちょっと失敗しちゃっただけ。」


濡れた髪を触りながら私があははと笑っているとサーヤが井戸をみて驚いていた。


「え、井戸に変な物がついてる?なにこれ。」


私は電動水汲みについて説明する。


「ええ…水の入ったバケツが勝手に上がってくる?それはさすがに、難しいんじゃないかなぁ??」


サーヤが私と井戸を交互に見る。言葉だけじゃ信じられないのかもしれない。


よし、ホタル。モーターを回してちゃんと水汲み出来るってところ見せようじゃないか!あ、次はバケツが上にきたら止めようね。


私はホタルに合図をして、動かしてもらう。


ギシギシ。パチャ。チャプ。


「えええ!?」


水の入ったバケツが上に上がってくるとサーヤが驚きの声を上げた。


「うそぉ!?ロープを引っ張ってないのに、バケツが勝手に上がってきてる!…あ、それにちゃんとバケツにお水が入ってる!」


手動の滑車式は、バケツが水に達したときにイイ感じにクイッと傾けないと上手く汲めなくて、サーヤはそれが苦手だったらしい。


「バケツの片側に重りをつけて傾きができるようにしたから、バケツを降ろすだけでお水がしっかりと入るんだよ。」


ふふん。


私は胸を張って褒められ待ちをする。ホタルもピカピカと同じ感じだ。けれど、サーヤはとても驚いた様子ではあるけれど、何も言ってくれない。


あれれ?


「あ、サーヤもやっぱり遠心ポンプの方がいいよね!?わかるよわかるよ。私もこんなまどろっこしい感じじゃなくて、蛇口をひねったらお水が出る、みたいなのが良いと思ってたから。でもでも加工技術的に今回は見送っちゃったんだよねぇ。」


私は腕を組んでうんうん頷く。やっぱり遠心ポンプの方がいいよね!


「えんしん…ええ?よく分からないけど、不満なんてないから。今のままで十分すごいと思ってるよ!」


そうなんだ。遠心ポンプじゃなくても良いなんて、サーヤは優しいね。


って、あれ?私いま、サーヤと普通に話せちゃってるよ!

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