3-4. モーター作り
私が思っていた通りの銅線ができた。やっぱり属性の力ってすごいなぁ。完成した銅線をグルグルとまとめながら、おじさんは私に言った。
「ルシアちゃん、サーヤに何かあったか知ってるか?」
サーヤのことを不意打ち気味に聞かれた私は、一瞬息が止まる。どう答えたら良いのか頭が真っ白になって返事ができずにいた。
「サーヤがどこか落ち込んでるように思ってな。何があったのか聞こうにも無視されるし、母さんからはほっとけと言われるし。弟妹たちからは、街の友達とルシアちゃんと3人で森に行ったとは聞いているんだが。」
私の頭のなかに、話しかけようとしても私のことを避けるサーヤのことが浮かぶ。
「あ、えっと。おじさん、私もよくわからなくて。でも、もしかしたら私のせいかもしれないです。…ごめんなさい!」
おじさんが様子を窺いながら聞いてくれたけれど、私は居たたまれなくなった。おじさんに謝って、逃げるように家に走って帰ってしまった。
翌日になると、あんなにサーヤに会いたいと思っていたはずの私は、サーヤに会うのが怖くなっていた。夜はなかなか眠れなかったからか、身体がだるい。サーヤと笑い合う想像はできなくなっていた。
朝ご飯を食べた後、ホタルと一緒にパン屋の店番をする。今日の私は本当に失敗ばかりで、お客さんの会計は間違えるし、掃除をしていたら棚のパンを落としたりした。ふとパン釜の方を見ると、お母さんが火リスと一緒にパンを焼いているのが見えた。
「サーヤにも私、たくさん迷惑かけてるもんね…。もう、嫌われちゃったかな…。」
考えなしだからか普段は思い悩むことが少ない私でも、時折ものすごく気持ちが落ち込むことがある。たぶんその初めては自分に属性がないと知ったときだった。生まれたときから髪の色が不変なように、属性も変わることがない。だから、私が属性なしで生まれたと言うことは、後天的に属性がもてるわけもなく、死ぬまで属性なしだということだ。
私は傍らのホタルに話す。誰かに聞いてほしい気分だった。ホタルは聞いてくれるのか、飛び回るのをやめて、私の前で静かにしている。
「小さい頃はいつか属性が得られると思ってたの。でも大きくなると、そんなことはあり得ないってわかるでしょう?」
それに気付いたら、私はこれから先なにもできない人間になるのかな、誰も私を必要としてくれなくなるのかなって悲しくなったの。私は少し泣きそうになる。
「でもね。落ち込む私に、サーヤが言ったの。『私は水汲みが苦手で遅いけど、ルシアは上手で早いねって。』属性なしの私でも、誰かより上手くできることがあったことが、そしてそれを人から褒められたことが、本当に嬉しかったの。」
私の頬を一筋の涙が伝う。ホタルはスリッと頬に身体を寄せた。『だいじょうぶ、僕がいるからね』って言ってくれてるみたい。
「そこからは属性に拘らずに、私ができることを探して頑張ったんだ。昨日の採掘といい失敗ばかりで、サーヤの弟妹や近所のカイルにも馬鹿にされてばかりで…さすがにサーヤに見放されちゃったのかもしれないね。」
私はホタルを手におさめ、八つ当たりの気持ちで、ホタルの頭を指でグリグリした。
バシッ
ホタルが急に飛んで私のおでこに頭突きをした。
「痛い!」
さすがにグリグリされるのは嫌だったらしい。ごめんね。私が謝ると、ホタルは私の前に降り立った。ホタルは私をジーッと見ている。『もうっ。しっかりして!』って言われてるみたい。
ーーーそうだ、私が失敗したとしても、いつも『大丈夫だよ』って言って、私のことを嫌がらずに受け入れてくれるのがサーヤじゃないか。
「ありがとう、ホタル。私、がんばるね。」
決意した私の前で、ホタルはパタパタと羽ばたいて、がんばれって言ってくれているみたい。私は意気揚々とサーヤの家に向かって歩きだした。
…そのとき、パン釜の方からお母さんから声がかかった。
「ルシアー?昨日挽いてくれた小麦粉だと量が足りなくて。ちょっと追加で挽いてきてくれないかしら?」
いま!?せっかく決心して、サーヤの家に行こうとしてたのに…。ううう。なんてタイミングなんだろう。
でも、だからといって、お母さんのお願いを断るわけにもいかない。私はチラッとホタルに助けを求める。
スイーッ
ホタルは知らんぷりで空を飛んでいる。さっきまであんなにフォローしてくれてたのはなんだったの?
「すぅ。はぁ。」
私は深く呼吸をして、気持ちを切り替えた。
ホタルと一緒に石臼まで戻ると、モーターを作りかけていたことを思い出した。
「私がモーターを完成させられたら、サーヤも見直してくれるかな?」
ピカピカッ
ホタルは光って肯定してくれた。
まだやっていなかったのは磁石の磁力が強いところ(S極やN極のような)を探すことだ。磁力が強いところをクルクル回る軸に向けた方が、力強く回ってくれるからね!私は鉄製のココットを磁石のあちこちに触れさせる。
ビタンッ
ちょうど私が座っていた平らになっている部分に近づけた途端、ココットは勢いよく磁石にくっついた。
「磁力の強いところ、みーつけたっ。ちょうど良いところにあったね。じゃあ次はコイル作り!」
私はおもちゃのゴムボールを溶かして銅線の必要なところにつける。絶縁できる物質がわからないからとりあえずゴムで被膜してみたんだ。被覆しないと電気が漏れてショートや感電の危険があるから、効果は分からないけどやったほうがいいよね!そして、木材置き場から木の表面のデコボコが少ない丸太を取ってきて、銅線をバネのようにグルグルっと巻く。これを木からスルッと外せば、あっという間にコイルの完成!
「コイルは簡単だったね!じゃあ次は…。」




