12話
「痛っ!ゆっくり、もっとゆっくり運んでくれ」
荘厳にして神聖な古代聖堂の入り口で叫び声があがった
「ちょっと!静かにしなさいカズマ」
手を組み神に祈りを捧げていた王女マチルダは抗議の声をあげた。この洗礼の儀では先々代の国王が神から特殊スキルを授かった王族にとって特別なものであり国の命運がかかっているのだ
「ハッ!随分と薄情な王女様もいたもんだ、自分の為に命がけの戦闘の末に傷を負い苦しみの声を上げるものに対して労わるどころか静かにしろとは恐れ入ったよ。この冷血!陰険!恩知らず!」
マチルダはお決まりのゲンコツをくらわそうと構えるが
「まあまあ二人とも神様のおわす場所で喧嘩なんぞやめたらどうだ?ほれカズマこのマジックバックを持っていけ。お前が退屈しない様に美味いもんをたっぷり入れといたぞ」
いつもは見て見ぬふりをするフラントが割って入った
「ふー。それもそうねそれでは行きましょうか」
王女マチルダは心を静め古代聖堂へと足を踏み入れた
内部は滝の轟音が響き渡り草やコケ、蔓が生えているが神秘性は少しも損なわれていない
「それでは我々はこれで失礼いたします」
兵士はカズマを祭殿に寝かせると王女に一礼し古代神殿から立ち去った洗礼の儀においては当事者以外立ち入ることが禁止されている
「それじゃあ行ってくるわ」
白装束に身を包んだ王女マチルダは真っすぐに滝を見据え歩き出した
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「よしそれじゃあ頂くか」
カズマは半身を起こし片手でマジックバッグを持ち中に手を入れる
冷製トマトパスタ、フィッシュアンドチップス、チョリソー、ホットケーキが作りたての状態で出てきた
「美味っ!冷えたトマトの酸味が良い、それにニンニクが香ばしくていくらでも食える。それにこのフライのサクサク感と身のふわふわが絶品だ・・・・」
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「本当に特殊スキルなんか貰えんのか?」
「今までに授かったのは先々代の王だけらしいからどうかな?」
「なに!?いままで何人もやってんのに一人だけかよ!」
フロイトとナギが気の木陰に座りながらダラダラと会話をしている。昨日の大規模な戦闘の後という事でほとんど全員が休暇を与えられている最も周囲に店などの娯楽施設があるわけもないのだが
「何のスキルだったんだ?」
ケッカがスクワットをしながら会話に割り込んだ
「不明だよ。王族の特殊スキルは極秘扱いだから」
「そうとう強い特殊スキルだったんだろうな。落とし子様と魔王を討伐したって言うんだから」
「ただ・・・補佐タイプの特殊スキルだった可能性もあると思う。先々代の国王様が強かったという話は聞かないからね」
「補佐タイプ?」
「味方の能力を上げるような能力のことだよ」
「それにしても昨日のカズマは凄かったな」
「一回戦ってみてえよな!」
「俺もだ!」
フロイトはナギとケッカの戦闘好きに呆れ苦笑いした
「止めといたほうがいいよ。レベルが上がって余計に力を持て余して昨日よりもひどい暴走状態になるかもしれないからね」
「まずあの目の前に突然現れるあれが相当やっかいだな」
「異常なパワーもヤバいぜ!まともに食らったら即死だからな」
三人はカズマの能力の分析や戦闘になった時の対策についての話をして、休暇を過ごした
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「zzzzzzzzzzzzzz」
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(お願いします特殊スキルをお授けください)
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「白!?」
見渡す限り真っ白な空間にカズマはいた
「夢か?」
キョロキョロと辺りを見渡したり自分の服装を見渡しているといつの間にか目の前に、銀髪の少年が経っていた
「どわ!?神様!」
「ちわっす」
この銀髪の少年こそがカズマを異世界へと転移させた張本人である
「転移した時以来ですねどうしたんですか?」
恐る恐る神へと尋ねた。怒っているのかもしれないと不安だったのだ。
神は何故自分を転移させるのか尋ねた時に言っていた退屈しのぎという答えに沿う行動をしてこなかったと思ったのだ
「君のほうが僕の神殿にきたんじゃない」
少年は笑いながら答えた
「ここは神様の神殿だったんですね、僕は王女の洗礼の儀に無理やり連れてこられたんです」
(良かった怒ってはないみたいだ)
「彼女か・・・」
少年は遠くを見るような目をしたがそこにはただ白い空間があるだけだ
「あげても面白いね」
「本当ですか、喜びますよあいつ」
「それよりもカズマ君がんばってるね。いままで転生した人でそこまでグータラすることを望んだのは君が初めてだよ」
「そうなんですか!?」
「スキルもだいぶ馴染んできたようだし」
「でも体がメチャクチャ痛いんですよ!どうにかなりませんか?」
「レベルアップしたんだからいいじゃない、そのうち治るよ。それより君もスキルを授けてほしいのかい?もっともっと殺せるように?」
(怖っ!)
「そんなことは全然思っていません。むしろ日本の店から商品を買えるネットスーパーみたいな能力に代えてもらえませんか?」
「それは難しいね。特殊スキルはその人にあったやつじゃないとあげれないから」
「そうなんですか・・・」
期待が脆くも崩れ肩を落とした。実際の所、自分が引き起こした惨状に心が折れかけていたのだ。目の前に広がる血と肉が溢れる光景と異様な匂いは平和な日本に生きていたカズマには許容できるものではなかった
「まっ、そんなに気を落とさないでよ。王女様には特殊スキルをあげとくからさ」
「ありがとうございます・・・」
「それじゃあがんばってねー!」
カズマの視界は段々とぼやけていった




