第24話 黒を焼く聖なる炎
なぜか満足そうな、ドヤ顔のクゥエルが口を開く。
「サラマンダーと契約ができて、ルカの召喚士としての力が一段階上がったんだな。だから、ルカ自身の召喚獣も成長したんだ」
「きゅっきゅー♪」
「わんっ、わんっ♪」
ぷにぷにとハクは嬉しそうに飛び跳ねた。
今までみたいに、普通に鳴くこともできるらしい。
ルカは、「えへへ、やったぁ♪」と、とびきりの笑顔を浮かべた。
◇
しばらく休憩した後、クゥエルが光る扉を出現させた。
「また、いつでもいらしてくださいね。冷たいお水を用意して待っています」
ファフニールがニッコリと微笑む。
ルカは「ありがとう」とお礼を言った。
「サラマンダー、人間界での初仕事、立派に成し遂げてくるんだぞ」
そう言うイフリートに、サラマンダーは「うん!」と元気よく返事をした。
「ぷにぷにたち、アリアのところに、帰るっきゅ♪」
「ぷにぷに、ボクの背中、乗せてあげるー♪」
ハクはぷにぷにを背中に乗せると、嬉しそうに去っていった。
「じゃあ、僕たちはこれで――」
ルカたちは、新たにサラマンダーを連れて、光の扉をくぐるのであった。
◇
ルース村の外れに戻ってきたルカたち。
空は、うっすらと明るくなっていた。
「夜明けだ。いつの夜明けだろう?」
そのルカの問いに、クゥエルが答える。
「幻獣界に行ったときから、数時間しか経ってねぇはずだ。言っただろ、あっちは時間の流れがゆっくりなんだ」
「それなら、村長さんにも心配をかけずに済みましたね」
そう言うケヴィンに、ルカもうんとうなずいた。
「よし、サラマンダー。この辺で、一旦試してみよう。この辺の草は燃やさずに、この石ころだけを燃やしてみて」
「うん!」
サラマンダーが地面にボッと火を吐くと、キラキラと光る青い炎が石ころだけを燃やして塵にした。
「草は燃やさずに、普通は燃えない石を燃やしましたか……これは、脱帽ですね……」
「ええ。すごいわ、サラマンダー」
ケヴィンとリーゼロッテが感心したように言うので、サラマンダーは照れてはにかんだ。
「なんか、炎、光ってなかった……?」
ルカが目をぱちくりとさせる。
無自覚の彼に、クゥエルが説明をする。
「それは、てめぇの召喚士としての力だろ? ぷにぷには回復のスキル。んで、ハクとサラマンダーは、魔物や黒い気特化の、『聖属性』になったんだ。これならいけるぞ」
「あっ、ハクも、なんか攻撃するとき爪が光るなって思ったら、そういうことか……。よし、じゃあ、サラマンダー、お願いできる? 僕の魔力消費の問題があるから、今日はあの辺だけにしよう」
「うん、分かった!」
サラマンダーは元気に返事をすると、小さな翼でバサバサと飛び上がる。
そして、ニンジン畑の上空へいくと、キラキラと光る青い炎をボーッと噴いた。
すると、今までは目視できなかったのに、地面から黒い気がチリチリと蒸発していくのが見えた。
聖なる炎に焼かれている証拠だ。
もちろん、ニンジンは無傷。
畑の一番東のブロックだけ焼き終えると、今日の作業を終えて、サラマンダーは意気揚々と幻獣界へと帰っていった。
ルカたちもまた、村の人らが起きる前に、村長の家に戻って眠りについた。
少し遅く目覚めると、村人たちのなにやら盛り上がっている声が聞こえてきた。
村長もそれに混じっているようだったので、ルカたちも顔を洗って外に出る。
村人たちが集まっているのは、一番東のニンジン畑だった。
彼らに合流をすると、嬉しそうな村長が迎えてくれた。
「おぉ、ルカおぼっちゃん、皆さん。おはようございます。見てください。ここの畑だけ、ニンジンの葉が元気になっているのです!」
「ホントだ……!」
「おぉ……」
「すごいわ……!」
驚く一同。
しかし、驚いている内容は、村人たちとは違う。
上手くいってよかった。そういう驚きだ。
「雨が降ったからまた元気なくなるかと思ったけど、ここだけむしろ元気になったのよね」
「もしかしたら、領主様の肥料がだんだん効いてきたんじゃないか?」
そんな、村人たちの嬉しそうな会話が聞こえてくる。
領主の肥料のおかげだと思ってくれているのは、ルカにとっては嬉しい誤算だった。
分からない原因に不気味がられるのが、一番酷だったからだ。
ルカたちは、顔を見合わせてうなずきあった。
◇
それから数日かけて、村の皆が寝静まった夜に、少しずつ畑の黒い気を焼いていった。
朝が来るたびに、畑はどんどん元気になっていく。
村の皆が喜んでいることをサラマンダーに伝えると、彼も自分のことのように喜んでいた。
やがて畑の全域を焼き終えた頃、この辺りで雨が降った。
雨は夜になっても止まなかったので、村長も寝静まった頃、ルカたちは家を抜け出して畑の様子を見に行った。
念のためリーゼロッテとケヴィンは武装をしたが、そんなものは杞憂であった。
「ダストスライム、湧いてないわ!」
「やりましたね。これで、元気な野菜が育ちますね」
「ま、一件落着だな」
「うん、良かった……!」
ルカたちは、万歳をして喜んだ。




