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ちびっこ召喚士のもふぷに領地改革~白猫師匠と猫カフェ仕込みの撫でスキルで貧乏領地を救います~  作者: るあか


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第2話 魅惑のわしゃわしゃ

 アルメルの町から続く街道を進み、少しだけそれると、ウィズの森が見えてくる。

 人里に近いこともあり、普段は魔物の湧きもそんなに多くはない。


 アルメル騎士団が森の魔物を一掃し終えた後ではあるが、念のためにリーゼロッテは完全武装をしていた。


「ルカ、大丈夫よ。私が守るわ」

 子どもの練習用の防具に身を包み、練習用の剣を腰に携えている。

 まだ見習いの騎士ではあるが、主を守ろうとするその姿勢は、一人前の騎士だった。


「ありがとう、リゼ。でもさっき、フォルカーさんたちが倒してくれたから、大丈夫だとは思うけどね……」


「いや――まだ、するぜ。大きな魔物の気配だ」

 クゥエルがクンクンと匂いを嗅ぐ。


 2人は「「えっ、大きいの……!?」」と尻込みした。

 てっきり騎士団が森の魔物を一掃したから、しばらくは何も湧かないと思っていたのに……。


「どうすんだ、引き返すのか?」

 クゥエルが問う。


 しかし、2人は首を横に振った。

「僕は、この異常を突き止めたい。町の薬師の人たちが、安全に薬草の採取をできるようにしたいんだ」

「そうよね。そうしないと、パパの騎士団も、毎日この森の魔物討伐をしなくちゃならないわ」


「チッ、しゃーねぇな。いいか? この気配と遭遇しても、リゼ――絶対に戦おうなんて思うな。てめぇに敵う相手じゃねぇ」

「うっ……分かったわ。逃げることに専念するわ……」

 リーゼロッテの頬を、冷や汗が伝う。


 しばらく森を探索すると、ルカたちの前に黒いモヤが噴き出した。

「グルルル……」

 黒いモヤは、狼の姿へと変わった。

 新たなウルフが湧いた瞬間である。


 目は赤黒く光り、黒いモヤをまとったまま、ルカたちへ威嚇をしている。


「うそ!? もう、湧いたの? パパたちがさっき倒したばっかりなのに! こいつならたくさん倒してきたから大丈夫よ、ルカ、下がっててね」

「うん、リゼ、お願い!」


 リーゼロッテが華麗にウルフを討伐すると、ウルフは再び黒いモヤとなって消えていった。


 ◇


 気を取り直して奥へと進んでいくと、深い茂みの前でクゥエルが足を止めた。

 耳をピクピクと動かし、クンクンと匂いを嗅ぐ。

「あの気配、この先にいるようだ――だが、妙だな。こんなに人間が近づいているのに、襲ってくる気配がねぇ」


「大きい……魔物……」

 ルカはゴクリと息を呑んだ。


「襲って来ないのなら、何がいるのか、ちょっとだけ見てみる……?」

 リーゼロッテはそう言って、恐る恐る茂みをかき分ける。

 

 そっと奥を覗き込んでみる。

 茂みの奥にそびえ立つ大樹の幹に、洞穴ができていた。


 その中に――


 ――ルカたちの何倍もの大きさの狼が、丸くなって震えていた。

 怯える身体からは、黒いモヤが溢れ出している。


「ひぃっ、いたわ……! ホントに大きい……あれ、私、図鑑で見たことあるわ――群れのリーダーになると言われている、ウルフリーダーよりもずっと高ランク――Sランクの『ジャイアントウルフ』よ……!」

 リーゼロッテが声を潜めて言う。


 クゥエルが口を開く。

「間違いねぇ。こいつの放つ〝黒い気〟から、ウルフは生み出されてる。こいつが、この森の異常の原因だ――」


「……っ!?」

 サーッと、血の気が引いていく。


 なんでそんなやつが、こんな人里に近い森に……?

 しかも、なんで怯えてるんだ? 怯えたいのはこっちなんだけど。


 すると、突如茂みから何か小さなものが飛び出してきて、ルカとぶつかった。

「うわっ! 何今の!?」

「猫、かしら……? なんでこんなところに……」


「おい、やべぇぞ。今は、んなこと気にしてる場合じゃねぇ」

 クゥエルが表情を引きつらせながら、巨大狼の方を見る。

 

「ガル……!?」

 騒ぐ声に反応して、狼がこちらを向いた。

 怯えながらも、「グワァァァッ!」と咆哮を上げて飛び掛かってきた。


「「うわぁぁぁぁっ!」」

 2人は間一髪のところで、狼をかわす。

 狼の振り下ろした大きな爪が、木の根をバキバキに引き裂いた。


「ったく、さっさと逃げろ! どうする、オレ様……ここで力を使う訳には……」

 クゥエルはサッとその場から離れ、状況分析をする。


「ガウ、ガウ!」

「きゃぁーっ!」

「ぎゃああっ!」

 

 狼の攻撃をかわすのに必死で、2人の脳内には遠くに逃げるという選択肢がなかった。

 

「……チッ。ダメだ――今ここで解放すると、オレ様は間違いなく、邪気に呑まれて――しかし、ガキどもが……一か八か、やるしかねぇか……」

 

 クゥエルが額に前足を当てると、彼の身体が光り出した。

 小さな牙が、ぐんぐんと大きくなって口から突き出てくる。


 片目が赤く染まり出し、クゥエルは「ぐっ……」と悶えた。

 やはり、厳しいか……!


 しかし、次にルカが放った一言で、クゥエルは力を解放するのを止めた。

 元通りの白猫の姿へと戻っていく。


「この子、目が赤くない! 邪気が――ない! うわぁっ!」

「邪気がないから、今まで人間を襲わなかったってこと!? 私たちが無理やり見つけたから、怖がって威嚇をしているだけなのね……!?」


「リゼ、お願い……! 僕に、あの子の頬を触らせる隙を作って……! できそう!?」

 ルカは逃げ回りながらそう叫ぶ。


 クゥエルは「ルカ、まさかお前、そいつと契約すんのか……!?」と、目をぱちくりとさせた。

 ルカはスライム一匹と契約できたばかりの、見習いの召喚士。


 普通であれば、到底無理な話だ。

 しかし――


 クゥエルは、ルカの持つ可能性に、背筋をゾクゾクとさせた。

 いけるかもしれない――そう思い、ニヤリと笑う。


「分かった、やってみるわ!」

 リーゼロッテが狼へ、ちょこちょこと攻撃を仕掛ける。

 ウルフを一刀両断した刃も、この狼にはキンキンと弾かれてしまっていた。


 それでも、狼の気はリーゼロッテに引かれていて――


 ――隙が、生まれた。


「ルカ、今だ……!」

 クゥエルが思わずそう叫ぶ。


「うん!」

 ルカは目一杯飛び上がり、狼の大きな頬に両手で触れた。


「ガルッ……!?」

 優しい魔力が、狼を包み込んでいく。

 狼は「くぅん……」と甘えた声で鳴くと、その場でペタンと伏せをした。


「よしよし、良い子だな~。ほら、マッサージだぞ~」

 ルカは魔力を込めたまま、狼の両頬をひっかくようにわしゃわしゃと撫でた。


「くぅ~ん♪」

 狼が気持ち良さそうな声を上げると、身体全体が光り出す。

 全身にまとっていた黒いモヤが、スーッと消えていった。


 毛色は真っ白に染まっていき、ゴワゴワだった毛並みがふわふわと膨れ上がる。

 白狼へと姿を変えたそれは――「わんっ♪」とご機嫌にひと鳴きした。


「あはは。よしよーし、契約完了だ。真っ白もふもふな『召喚獣』になったね。お前の名前は……そうだな、真っ白になったから、『ハク』だよ。よろしくね、ハク♪」

「わんっ♪」


 ハクが大きくてもふもふな尻尾をブンブンと振ると、辺りの落ち葉がぶわっと舞った。


「やったわね、ルカ! ハク、私はリゼよ。よろしくね~」

「わんっ、わんっ♪」

 リーゼロッテもハクの首元を撫でて、そのままズボッともふもふに埋もれた。


 ルカが地面に魔法陣を作ると、ハクは満足そうに魔法陣の中へと飛び込み、消えていった。

 この魔法陣の先は、どこに繋がっているのだろうか。

 ぷにぷにもハクも、普段はどんなところで生活をしているのだろうか。


 それは、ルカにも分からなかった。


「……やるじゃねぇか、ルカ。歴代の契約と言えば、まずは相手を弱らせてから口上を延々と聞かせるものだが――こいつは魔力を込めて撫でるだけで、それを可能にしちまう」

 クゥエルは、恐ろしいものでも見るかのように、不気味な笑みを浮かべた。


「しかも、召喚獣の見た目は、なぜかこいつの性癖に合わせて全部もふもふになりやがる。スライムは普通、回復魔法なんて使えねぇし、猫耳も生えねぇ。全部、こいつが〝撫で〟で引き出したんだ。こいつの前世――『猫カフェ店員』の持つ『魅惑のわしゃわしゃ』ってやつは、そんなにすごい芸当だったのか……いや、それよりも前世の――」

 

 あまりにも驚いたのか、クゥエルの心の内が、小さな声で駄々洩れだった。

 

「何? くぅちゃん、今、何か言った?」

 ルカがクゥエルを振り返る。

 

「いや。よく契約できたな、褒めてやる――そう言っただけだ」

「そう……?」

 なんかもっと、ブツブツ言っていた気がしたけれど。


「なんでもいいけど、あのジャイアントウルフのまとっていた黒い気が、ウルフ発生の原因だったのよね? だったらこれで、森は戻るかしら?」

 リーゼロッテが言う。


「……かもな。後は、てめぇのパパたちの、明日以降の反応を見ればいいだろ。ほら、帰んぞ。あんまりもたもたしてると、あのケヴィンとかいう若造が動き出す」

 クゥエルはふんと鼻を鳴らした。


「大丈夫だよ。ケヴィンは見習いの立場に甘えて、ずっと昼寝してるから。まぁ、でも、帰ろっか」

「そうね」

 

 ルカたちが森を抜けたその瞬間――


「ぎゃーっ! 助けてくれー!」

 街道から、男の悲鳴が聞こえた。


 

 


 

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