表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちびっこ召喚士のもふぷに領地改革~白猫師匠と猫カフェ仕込みの撫でスキルで貧乏領地を救います~  作者: るあか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/10

第1話 謎の回復の雨を降らせていたのは、領主の息子でした

 今日も魔道院の礼拝堂の入り口に、たくさんの人が列を作っていた。

 コン、コンと、乾いた咳が聞こえてくる。


 その列に、今日も小さな影が紛れ込む。

 全身を子ども用の冒険者ローブに身を包み、顔までフードをすっぽり被っている。

 ローブの中には、何か丸いものを抱きかかえている。


「ぷにぷに。今日もお願い。みんな咳が辛そうだから――」

 小さな声でそう呟いた。

「きゅ♪」


 可愛い鳴き声が聞こえたかと思うと、ローブの中が緑に淡く光った。

 その瞬間――

 

 魔道院の周辺に、キラキラと癒しの雨が降り注ぐ。

 列を作る人々は、不思議そうに空を見上げた。

 

 雨はすぐに止み、人々は呆気に取られる。

 彼らが、自身の咳が止まっていることに気づいたのは、魔道院の魔道士アマンダに呼ばれた時だった。

 

「お待たせ致しました。順番に回復料を納めて、中にお入りください」

 アマンダがそう言っても、誰も動かない。

 皆、自身の変化に気づいたからだ。


「あ、すみません……なんだか、症状が良くなったみたいです。なので私、やっぱり回復魔法は要りませんでした。失礼します」

「俺も」

「私も」


「えっ、あっ――」

 戸惑うアマンダ。

 彼女をよそに、列を作っていた人々は、早々に解散していった。


 礼拝堂の中から、別の魔道士ニールが現れる。

「おい、またなのか……? なんなんだ、町人の嫌がらせか?」

 

 怒り気味にそう言う彼へ、彼女はこう答えた。

「でも、この町で変な咳が流行っているのは事実でしょう? 町の人たちは本当に困って、お金を払ってでも症状を緩和させたくて来ているのよ。まるで、その人たちを待っていたかのように、この辺で誰かが回復魔法でもかけているかのよう」


「冗談はよせ、アマンダ。魔法は――俺ら魔道士の特権だぞ。俺ら以外が魔法を使うところなんて、今までに見たことあるか? 絶対ありえねぇだろ。それこそ、今は絶滅したと言われている異端でもない限り――」


「……そうよね。それに、20人は並んでいたわ。それを一気に回復だなんて、私たち下っ端にはできっこないわ。それこそ、院長でもないと――」


「あの腹黒院長が無料で回復してるとでも言うのか? せっかく、金を稼ぎ放題な今に、わざわざ? ありえない」


「ちょっと、ニール。そんな言い方は不謹慎よ。町の人々に失礼でしょう。誰かが聞いていたらどうするの、戻りましょう」

 ニールの背中を押して、礼拝堂へと詰め込む。


「別に聞かれてたっていいだろ。あいつらは、俺らにすがるしかないんだから」

 ニールは愚痴りながら、渋々礼拝堂へと戻っていった。


 礼拝堂の入り口を閉めようとしたアマンダは、何かの気配を感じて、通りを振り返った。

 しかし、通りには魔道院など見向きもせずに、行き交う人々ばかりだった。


 でも今確かに、誰かがこちらを見ていたような……。

 そういえば、あの冒険者ローブの子、昨日もいたような……?

「気のせいかしら……?」

 アマンダは首を傾げながら、中へと戻っていった。

 

 ◇


 ルカは、頭のフードが外れないように手で押さえながら、足早に大通りを進む。

 さっきまでいた魔道院から、できるだけ離れるように。

 

「あっぶない、あぶない。今、アマンダさん、こっち見たよね?」

「……きゅ?」


「って、ぷにぷには見えてなかったね。ごめん、ごめん」

「きゅ♪」

 バレたら異端扱いで、何をされるか分かったもんじゃない。


 アルメルの町の最奥にある『エルマン邸』の裏口へと回る。

 裏庭で、見習い騎士のケヴィンが屋敷にもたれかかって昼寝をしていた。


 槍を抱えたまま、寝ている。

 全く、毎日毎日、呑気なもんだ。


 ルカは裏口からこっそり帰還した。

 この時、ケヴィンが寝たふりをしていたことなど、ルカは知る由もなかった。


 屋敷に入ると、幼馴染のリーゼロッテが出迎えてくれる。

 7歳のルカよりも、2歳上のお姉さんだ。

「ルカ、お帰りなさい。今ならミア、台所の掃除をしているから、チャンスかも」

 

「ありがとう、リゼ。よし、僕の部屋に行こ」

「ええ」


 いつものように、2人でこそこそとルカの部屋に入る。

 ルカは、ようやく冒険者のローブを脱ぐことができた。

 

 猫耳のついたオレンジ色のスライム『ぷにぷに』が、ぴょんと飛び出す。

「きゅきゅ♪」

 ぷにぷにはご機嫌そうに、短い尻尾をピンと立てた。

 

「ふぅ。やっぱりあの量のスキル発動は、魔力を食うなぁ……。今日もめちゃくちゃ疲れたよ。ぷにぷにもお疲れ様」

「きゅ♪」


 ルカが手のひらを床にかざすと、光る魔法陣が出現。

 ぷにぷには魔法陣へと乗り、それと共に消えていった。


「ルカ、お疲れ様。今日は、何人くらい並んでたの?」

 リーゼロッテが尋ねる。


「んー、20人はいたかなぁ……。昨日よりもちょっと多いかなとは思ったね」

 ルカはぐったりとしながらそう答えた。

 一気に魔力を消耗したせいで、もうヘトヘトだ。


「そう、日に日に増えていっちゃうわね……」

 リーゼロッテはシュンとする。

 確かに、この謎の咳、どんどん蔓延している。


 窓際で昼寝をしていた白猫のクゥエルは、ぴょんと飛び降りると2人の前でお座りをした。

 甲高くコミカルな口調で、こう言う。

 

「その程度の魔力消費で()を上げてんじゃねぇ。ちょっとはマシになったかと思ったが、まだまだひよっこだな」


「もう、くぅちゃん。そんな言い方しなくたっていいじゃない。教会の魔道士以外で回復魔法を使えるなんて、それだけでも超すごいことなんだから」

 リーゼロッテはぷくーっと頬を膨らませた。

 

 こうやってかばってくれるところは、昔から変わらない。

 しかし、クゥエルは「ふん」と不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「まぁ、僕がまだまだ未熟なのは認めるよ。それにしても、なんでこんな咳が流行ってんだろ? 僕たちは今んとこ大丈夫だけど、やっぱり根本の原因を突き止めた方がいいかも」


 ルカがそう言うと、リーゼロッテは地団駄を踏んだ。

「絶対、マギア教の教会の仕業よ! パパが今日出かける前に言ってたんだけどね、ウィズの森のウルフたちが活性化しちゃってるんだって」


 ウィズの森だって?

 回復薬の調合には必須の、薬草がたくさん採れるところだ。


「えっ、そうなの? それじゃ、回復薬も作れないじゃないか――だから、教会に並ぶ人たちの数も増えてきたのか……」


「それで、回復料をせしめるために、教会の連中がウィズの森にウルフの群れを放ったってか? それはリゼ、考えが飛躍しすぎだ。教会の連中は確かに魔法を使えるが、魔物を発生させるなんてこと――悪魔にでも魂を売らない限り、不可能だ」

 クゥエルが言う。


「そう……。だったら、教会の魔道士の中に、悪魔に魂を売ったやつがいるんだわ!」

 やけくそにそう言うリーゼロッテに、ルカはぷっと噴き出した。


「リゼ、教会のこと、ホントに嫌いだよね」

「そりゃ、嫌いよ! だってあいつらは、ケヴィンの両親を――」

 リーゼロッテは悔しそうに唇を噛む。


 ルカは、諭すようにこう言った。

「リゼ。それは、別の魔道院の話。アルメルの魔道院がやったわけじゃない。ニールってやつは確かにウザいけど、アマンダさんみたいに、良い魔道士もいる。教会が全部悪いんだって決めつけちゃうと、本当の原因を見逃しちゃう気がするんだ」


「ルカ……。そうね、ごめんなさい。あなたって、時々、私よりもお兄さんに思えるくらい、大人なことを言うわよね」

 

「え、そうかな? ほら、僕、領主の息子だからさ、しっかりしなくちゃって、勉強たくさんしてるから、あははは……」

 ルカが早口で言い訳をすると、クゥエルはやれやれとため息をついた。


「行くんだろ、ウィズの森。念のためオレ様もついていってやる」

 クゥエルが言う。


「そうなんだけど、魔力を使って、僕今、絶賛ヘロヘロ中……」

「ったく、ひよっこ召喚士め……」


 リーゼロッテが何かをひらめいたようにこう言う。

「そうだわ。今行っても、パパたちの騎士団がウルフの討伐に向かっているところだし、パパたちが帰ってきてから行きましょ。それに、料理長がアップルパイを作ってくれてるはずよ」

 

「やったー! アップルパイ大好きだって言いまくったかいがあった! リゼ、くぅちゃん、まずは腹ごしらえだ。台所へ、ゴー!」

 リンゴは、微量ながら魔力を回復してくれる。

 ルカは万歳をして喜んだ。

 

 ◇


 ラウレンツ・エルマンの治める、田舎の領土、エルマン領。


 干からびていたこの領土の領主にラウレンツが就任したのは、4年前のこと。

 ルカが彼に拾われたのも、その頃である。


 4年前に比べると遥かにマシにはなったが、謎の疫病に森の魔物の活性化。

 問題は、増える一方だ。


 ルカたちはアップルパイで魔力補給をしながら、『アルメル騎士団』の帰りを待つ。

 騎士団がウィズの森でのウルフ討伐を終えて帰ってくると、小さな3つの影が、昼下がりのアルメルの町へと飛び出した。


 騎士団長のフォルカーは、領主の部屋を訪れていた。

「ラウレンツ様。本日も、ウルフはあらかた討伐しましたが……森中を捜しても、ウルフリーダーを見つけることはできませんでした」

 

「そうか、フォルカー。ご苦労だった。ううむ……こうして連日ウルフが大量発生するなんて、その核となるボスがいると思ったのだが、私の思い過ごしだろうか。念のため、明日もウルフリーダーの捜索をしてくれ」

 

「かしこまりました! このフォルカーにお任せください」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ