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ちびっこ召喚士のもふぷに領地改革~白猫師匠と猫カフェ仕込みの撫でスキルで貧乏領地を救います~  作者: るあか


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第19話 クゥエルという存在

 ――幻獣城。玉座の間。


 立派なたてがみを持ったライオンの獣人が、玉座にドカッと腰掛けていた。

 以前、魔道士ニールの眼前に現れた幻影を同じ姿である。


 その玉座の前には、えんじ色に輝く美しい翼を持った男の鳥人――イフリートの姿があった。

「クゥエル。貴様、今まで何をしていた。契約もなしに人間界に行くなど――」


 ライオンの獣人――クゥエルは、めんどくさそうにあしらう。

「この姿では行ってないから安心しろ。あっちでは、可愛い白猫の姿になって、力を抑えているから大丈夫だ。契約しないでも力を解放しなきゃ、邪気には支配されねぇだろ」


 イフリートは、深くため息をつく。

「はぁ……。貴様のそのふざけた遊び心には心底うんざりする。というか、待て……人間の気配がする……それも、3つもだ。貴様、まさか、私を呼び出した理由と何か関係があるのではなかろうな――」


 あからさまに嫌そうな顔をするイフリートに、クゥエルは大笑いした。

「あっはっは。そのまさかだ。イフリート――てめぇの配下の幻獣と、ルカを契約させてやってくれ」


「はぁ!? 私の大切な炎の幻獣を、人間と契約させる? 本気でそんなこと言っているのか、貴様――」

 イフリートはドン引きした。


「てめぇの人嫌いは分かってる。でも、3つの人の気配の中に、感じるだろ――アイツの魂を」

 クゥエルがそう言うと、イフリートはグッと唇を噛んだ。

「魂は同じでも、中身は別物だ。人間の一生は短い。貴様、まだあんな無駄なものに執着しているのか」


「おいおい。無駄なんて言うなよ。てめぇだって仲良かったじゃねぇか。人間の一生は、短いからこそ儚くていいものなんだ。何度も輪廻転生を繰り返す中で、その人生を一度きりのものとして、一生懸命に生きようとする。尊いだろ」


「……どうせ、そいつは貴様のことだって、覚えていなかったんだろう」

 イフリートがそう言ってクゥエルを睨みつけると、クゥエルは寂しそうに微笑んだ。


「そうだな――覚えてなかった。どうやら、別の人生が間に挟まっていたらしい。でも、その人生だって、アイツの魂だからこその人生だったと思える。猫カフェ店員になったのだって、オレ様との絆があったからだ――」


「猫カフェ店員? なんだそりゃ」

 イフリートは顔をしかめた。


「……大丈夫。アイツはちゃんと思い出す。ちゃんと自分で思い出させて、もう一度『召喚獣』として契約をしたい。アイツの魂を見つけたときに、オレ様はそう決めたんだ。アイツがオレ様のことを思い出したら、てめぇのことだって思い出すぞ、きっと――」


「……なぜ、そこまで信じられる……?」

「……同じだからだよ。アイツと同じで、ルカは――慈しみの心を持ってる。今はそれを撫でるというスキンシップで発揮しているらしい。なぁ、頼む。何もてめぇ自身と契約させろって言ってんじゃねぇんだ。いいだろ?」


 頭を下げるクゥエルに、イフリートはたじろいだ。

「貴様ほどの存在のものが、そのルカという人間のために頭をさげるとは――しかし、私はやはり、その人間は信用できない」


「だったら、てめぇが手を焼いているやつでもいい。ルカがそいつを手懐けたら、ルカのことを認めてやってほしい」


 イフリートは何かを考えるようにうつむいた。

 そして、顔をあげるとこう返事をする。


「……良いだろう。ちょうど、手を焼いているやつならいる。炎の洞窟の奥に引きこもっている。『サラマンダー』という幻獣だ」


「おぉ、さっすがイフリート。オレ様の右腕だな」

「それにしても、なぜ、炎の幻獣と契約させたいんだ?」

 イフリートがそう尋ねると、クゥエルは何かを思い出したようにポンと手を叩いた。


「そうだ、それだよ。人間界がなぁ、ちょっと厄介なことになっていてな。どうやら黒い気を操るやつ猫みてぇなやつがいるらしいんだ」


「黒い気を……? それってまさか――おっと、来たようだぞ」

 イフリートは何かにハッとしたが、3つの人の気配に、城の入り口の方を振り返った。


「おぉ、意外に早かったな。さてと、出迎えるとするか――そういうことだから、イフリートの方でも何か探っておいてくれよ」

 クゥエルは玉座から立ち上がると、白猫の姿へと縮んだ。

 

 イフリートは、深くため息をつく。

「……全く。幻獣使いが荒いのは昔から変わらんな――『幻獣王クゥエル様』は」

 イフリートは不死鳥の姿へと変わると、奥の窓からバサバサと飛びたっていった。


「んなこと言って、てめぇもちょっと期待してるくせに」

 クゥエルはひとりそう呟き、くくっと笑うと、城のロビーへ向かうのであった。

 

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