第10話 農村ルース
「行きたい……? ルース村にかい?」
ラウレンツは不思議そうに首を傾げた。
「うん、あのね……僕、お勉強のために、行きたい……!」
ルカがそう言うと、ラウレンツもフォルカーも目を見開いた。
「ルカ……! そうか、まだ小さいとは思っていたが、そういうことを考えるようになったか……!」
「立派ですぞ、ぼっちゃん」
上々な反応の大人たち。
「分かった。それなら、今日1日私についてきなさい」
上機嫌でそう言うラウレンツに、ルカは「やったー!」と飛び跳ねた。
「旦那様。私もお勉強のため、ルカにお供させてください! あと、ケヴィンも」
「ケヴィンもかい?」
ラウレンツが問う。
すると、ルカが慌ててこうフォローした。
「あのね。ケヴィンは地下水道の魔物をやっつけてかっこよかったから、僕のお供にしたんだ」
うんうんとうなずくリーゼロッテに、苦笑いのケヴィン。
ラウレンツは、この状況に「はっはっは」と笑った。
「そうか。ケヴィンもリーゼロッテもいるなら、より安心だな。ぜひ、よろしく頼むよ」
「はい、ありがとうございます!」
「このケヴィンめに、お任せを」
その後、クゥエルも一緒に行く許可をもらうと、ルカたちはラウレンツが乗る予定だった馬車に便乗する。
屋敷の皆に見送られ、コトコトと心地よく揺られながら、ルース村を目指した。
◇
馬車から降りると、広大な畑が広がっていた。
「うわぁ、広い……」
思わず、声が漏れた。
「そうだろう。こうやって農村が畑を耕してくれることで、私たちのもとへ食材が届くのだ」
隣に並んでそう教えてくれるラウレンツに、ルカは「うん!」と大きく返事をした。
畑の脇を通って村に入ると、すぐに村人たちに取り囲まれた。
「領主様! 今日も来てくださったのですね!」
「領主様!」
「こんにちは、領主様!」
「はは、こんにちは。今日も来てしまったよ」
取り囲まれても動じることなく、笑顔で挨拶を返すラウレンツ。
うわぁ、すごい慕われてる。
そう思ったルカは、なんだか誇らしい気持ちになった。
「領主様、ようこそいらっしゃいました。おや、そちらは……」
そう言って、杖を突いたおじいさんが寄ってくる。
「やぁ、村長。今日は息子らも勉強を兼ねて連れてきたんだ。良かったらこの村のこと、色々教えてやってはくれないか」
このおじいさんが、村長か。
「はじめまして、村長さん。ルカ・エルマンだよ!」
ルカに続いてリーゼロッテとケヴィンも自己紹介を済ませた。
「お会いできて光栄でございます。このルース村村長のルドルフ・ルースが、責任を持ってご案内いたします」
村長はゆっくりとお辞儀をした。
ルカたちは村の温かい歓迎を受けながら、奥へと進んでいく。
畑を除いた村は見渡せるくらいの広さしかなかった。
それでも、のどかでめちゃくちゃ良いところだ。
こんなまったりとした村で、のほほんと生活をするのも楽しそうだ。
そんなことを考えながら、ひとまず村長の家で紅茶をいただくのであった。
――村の畑に、猫の影が1匹。
猫の影は畑の土をトントンと踏むと、どこかへ走り去っていった。




