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灰森の巣竜  作者: AI太郎
動乱の世界
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二体の王

灰森の空が鳴った。


翼王が翼を広げた瞬間、森の空気が一斉に押し潰される。巨大な翼が一度羽ばたくだけで、数十メートルの樹木が揺れ、落ち葉と土が嵐のように舞い上がった。


蒼天探索団はすでに隊列を組み直している。


アルヴァレクは前に立ち、巨大狼と翼王を同時に視界へ収めた。背後ではドゥーガが盾を構え、エリネアが魔力循環の維持を続けている。リディアの周囲には氷の結晶が浮かび始めていた。


だがそれでも。


状況は明確に不利だった。


「……二体」


アルヴァレクが小さく呟く。


巨大狼は低く唸りながら地面を踏みしめている。その筋肉は岩のように盛り上がり、踏み込みのたびに地面が割れる。


そして空。


上空では翼王が旋回している。巨大な翼が空気を掻くたび、森の風が乱れる。


一体でも国家級戦力。


それが二体。


しかもこの二体は、互いに干渉していない。だが不思議なことに、戦場の動きは完全に噛み合っていた。


翼王が動く。


空から急降下する。


同時に狼が動いた。


踏み込み。


地面が爆ぜる。


「来るぞ!」


アルヴァレクが叫ぶ。


翼王は空から落ちる。狼は地面を走る。上下からの同時突撃だった。


ドゥーガが盾を突き出す。


「守る!」


次の瞬間、衝撃が来た。


狼の突進が盾に激突する。盾の表面に走る魔力紋様が一瞬で砕け、ドゥーガの身体が後方へ弾き飛ばされた。


同時に翼王が地面へ落ちる。


巨大な衝撃波が森を吹き飛ばした。


木が倒れる。


地面が割れる。


兵士達が吹き飛ぶ。


アルヴァレクが踏み込む。


「蒼天断界!」


重力断層の斬撃が放たれる。空間を裂く剣撃が狼へ向かう。


しかし狼は止まらない。


斬撃を正面から受けながら突っ込んできた。


骨が砕ける音。


だが速度は落ちない。


そのまま牙が振り下ろされる。


アルヴァレクは剣で受け止めた。


衝撃。


骨の軋み。


筋肉が悲鳴を上げる。


「……硬いな」


笑う。


だが次の瞬間。


空から刃が降った。


翼王の翼が振り下ろされる。


風圧刃が森を裂きながら降り注ぐ。


ガレスが叫ぶ。


「団長!」


アルヴァレクが飛ぶ。


その瞬間、先ほどまで立っていた場所を風の刃が切り裂いた。地面が何十本もの裂け目を作る。


翼王は再び上空へ上がる。


そして狼が動く。


突撃。


牙。


爪。


連続攻撃。


二体は一切の会話もなく、しかし完全に噛み合っていた。


空が動くと地面が襲う。


地面が止まると空が襲う。


逃げ場がない。


蒼天探索団に追随する兵士が一人、狼の爪で吹き飛ばされる。もう一人が風圧刃に切断される。


戦場は数分で崩壊し始めた。


リディアが魔法陣を展開する。


「氷界封域」


空気が凍る。


森の空間が瞬時に極低温へ変わり、氷槍が地面と空から生まれる。


翼王の翼に氷が張り付く。


狼の足元の地面が凍る。


二体の動きが止まった。


アルヴァレクが息を吐く。


だが。


翼王が翼を震わせる。


氷が砕けた。


巨大な魔力が空へ広がる。


狼もまた踏み込む。


氷の地面が粉砕された。


アルヴァレクの表情が変わる。


これは。


「……まずい」


リディアが低く言う。


「団長」


その声は静かだった。


「先ほどの攻撃で兵が半分やられています」


アルヴァレクは視線を巡らせる。


確かに。


兵士の死体が転がっている。


負傷者も多い。


さらに問題があった。


魔力。


探索団メンバーのの魔力残量は、もう半分しか残っていない。


ここはすでにダンジョンの外縁。


魔力密度が高すぎる故に魔法の行使に想定以上の魔力が必要になる。


戦闘が長引くほど、こちらが消耗する。


アルヴァレクは剣を構え直した。


狼が唸る。


翼王が旋回する。


このまま戦い続ければ勝てる可能性はある。


だが。


代償は大きい。


アルヴァレクは一瞬だけ迷う。


そして決めた。


「撤退する」


静かな声だった。


ガレスが驚く。


「団長!?」


「帝国騎士団が陣地を作っている」


アルヴァレクは剣を肩へ担ぐ。


「そこまで引く」


リディアが頷く。


「了解」


エリネアが魔力を解放する。


治癒光が広がる。


ドゥーガが盾を構える。


「撤退隊列!」


兵士達が動く。


その瞬間。


狼が動いた。


追撃。


しかし翼王は動かなかった。


空を旋回するだけだった。


まるで。


逃げる獲物を追う必要はないと理解しているようだった。


蒼天探索団は森の外へ走る。


背後で狼の遠吠えが響いた。

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