踏み込む影と
入口を広げてから数日、地中の振動に新しい質が混じった。軽い。間がある。止まり、囁き、また進む。灰角狼とは違う。鹿でもない。火の匂いが薄く落ちてくる。ゴブリンだ。
三つの足音が入口の縁で止まり、石が転がる。乾いた笑い声が小さく響く。やがて一体が踏み込んだ。広げた入口が仇になる。私は奥へ退き、合図のように通路の湿りを残した場所へ体を寄せる。スライムが薄く広がり、甲殻虫が壁に群れる。彼らは私の声を知らないが、振動は伝わる。私は喉を低く鳴らす。短い、低い音。合図になる。
ゴブリンは火を持っていた。松明の先が揺れ、煤の匂いが落ちる。広い通路を警戒しながら進むが、奥へ入るほど足場は不安定だ。私は広間の手前で土の支えを少しだけ削る。天井はまだ落ちない。焦らせる。
二体目が入る。三体目は入口で見張る。最初の一体が足を滑らせ、スライムの膜で踏み込みを失う。甲殻虫が一斉に壁から落ち、顔に張りつく。ゴブリンが叫ぶ。
「ギャッ!」
火が振られ、壁を焼く。だが湿りは消えない。私は横から突く。肩へ噛みつき、引きずる。狭い角で体を押し込み、喉を裂く。血の匂いが広がる。
二体目が槍を突き出す。穂先が鱗に当たり、浅く刺さる。私は退かない。後退する代わりに、支えを折る。広間の端が崩れ、足場が落ちる。ゴブリンの足が沈み、膝まで埋まる。甲殻虫が群れ、視界を奪う。私は牙を深く入れ、叫びを止める。
入口の見張りが逃げる。足音が遠ざかる。私は追わない。外へ出れば不利だ。広間に残るのは二つの死体と、焦げた壁の匂い。スライムがゆっくりと血を覆い、甲殻虫が散る。私は彼らを追い払わない。通路を掃除させ、壁を締めさせる。仲間を使う。使えば、巣は保たれる。
死の瞬間、薄い奔流が流れ込む。人間ほどではないが、鹿よりは軽い。熱は小さい。それでも溜まる。背骨の付け根が一度だけ強く脈打つ。私は広間を見渡す。罠は機能した。次はもっと落差をつける。入口の外にも細い溝を刻む。誘い、滑らせ、落とす。
夜、森の奥で黒角熊が一度だけ吠えた。前より浅い場所だ。水場の手前で争った夜から、あの巨体は時折こちらへ寄る。私は入口でその声を聞き、低く応える。まだ来ない。だが近い。
同じ頃、灰森の南縁では、狩人の報せが小領主の屋敷へ届いていた。森の王が浅域で吠え、鹿が減り、ゴブリンの死体が見つかったという。屋敷の間で、地図が広げられる。森の奥に印がつき、赤い線が引かれる。
「王が出てきたなら、何かがある。」
年老いた役人が呟く。まずは調査だ。二人の斥候と、祈祷師を一人。浅域まで入る。
森は静かだが、静けさは続かない。私は通路をもう一度撫で、崩れを確かめる。広い入口は危険だ。だが、誘うには必要だ。王のために作った広間は、他の獲物も呑む。仲間は働き、巣は応える。
次に踏み込むのは、誰だ。
ごぶりん スライム 甲殻虫
種族名・・・エメラルドゴブリン
説明 すむ地域や食性により体色が変化する。主人公のすむ地域では主に木の実や木の樹液を食べて生きているため本来は非常におとなしい。巣に入ってきたのは単なる好奇心と家探し。AIにこいつら仲間にならないの?って聞いたらありきたりすぎて趣味じゃないって言われたので多分ずっと可哀想な雑魚に甘んじると思う。
種族名・・・スライム
説明 特に説明入らないと思う。結構便利。あと頭いい。AIいわく設定としては犬よりちょっと頭いいぐらいらしい。だからお手も待ても出来る。やったね!
種族名・・・甲殻虫
説明 翼の生えたダンゴムシ。割と固い。ただリンゴを片手で握りつぶせる人なら簡単にぺちゃんこにできる。でも変な汁がでるからおすすめしない。




