表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰森の巣竜  作者: AI太郎
世界侵食
147/149

継承・次

前提が、変わった。


 竜は踏み込みかけた前脚を止めることなく、そのまま地面を砕きながら距離を詰めるが、視線は既に皇帝ではなく、その前に立つ存在へと固定されていた。


 勇者。


 いや。


 “皇帝”。


 あれはもう。


 ただの個体ではない。


(継承が、完了した)


 感じる。


 魔力ではない。


 だが、確実に存在する“固定された力”。


 それはつまり。


 継承。


 国家という巨大な構造が持っていた“蓄積”が、そのまま一つの個体へと圧縮され、移動した状態。


 あり得ない。


 本来なら土地自体に魔力が染み渡りその個体に入る”力”はごく一部になるはず。


 帝国の民を。


 領土を。


 滅ぼしていることが裏目に出た。


 本来ならパンクするはずの単一個体への力の集中も勇者という規格外が可能にする。



 理解する。


 そして。


 結論に至る。


(……あれは、捕食対象だ)


 瞬間。


 思考が、切り替わる。


 継承が最悪の形で実現してしまったが、それならそれでいい。


 竜は、そのまま踏み込む。


 加速。


 地面が割れる。


 空間が歪む。


 一直線に、勇者へ。


 だが。


 勇者も、動く。


 踏み込む。


 迎え撃つ。


 剣が振り抜かれ、爪と衝突した瞬間に発生した衝撃が周囲の瓦礫を吹き飛ばし、遅れて発生した圧力波が地面を抉り取る。


 互いに。


 止まらない。


 押し合う。


 拮抗。


 竜は、即座に次を打つ。


 翼が開く。


 棘が生成される。


 紫晶裂翼


 射出。


 反射。


 収束。


 だが。


 勇者は、動けない。


 剣が閃き、迫る棘を正確に弾き飛ばしながら軌道そのものを崩し、連鎖的に衝突した棘同士が空中で砕け散る。


 防ぎきる。


 完全に。


「……やっぱりか」


 勇者が呟く。


 息は乱れていない。



「狙いは変わらずか...」


 竜は答えない。


 必要がない。


 既に。


 皇帝を狙い攻撃するという行動で示している。


 地蟲界主が動く。


 地面が沈む。


 層がずれる。


 足場が崩壊する。


 だが。


 勇者は踏み込む。


 崩れる地面を蹴り、空中で体勢を整えたままそのまま距離を詰めると、落下の勢いを乗せて斬撃を振り下ろす。


 衝突。


 重い。


 先ほどまでとは、明らかに違うが。


 竜は受け止めながら理解する。


ー……まだ適応に時間がかかっている?ー


 通常なら。


 暴走する。


 崩壊する。


 だが。


 継承が成立してしまっている。


ー……ただ、勇者という最高の器にも限界はあるということかー


 竜は力を込める。


 空間が歪む。


 地面が裂ける。


 勇者がバハムートを抱えて距離を取る。


 その一瞬。


 竜は踏み込む。


 間合いを詰める。


 殺すために。


 ではない。


 奪うために。


「やるしかないか」


 勇者が構える。


 理解している。


 それでも。


 退かない。


 退けない。


 瞬間。


 竜の全身から魔力が噴き出す。


 菌糸。


 地脈。


 残存界主接続。


 すべてを引き上げる。


 樹海継承


 発動。


 空間が、変わる。


 地面が脈打つ。


 根が蠢く。


 棘が生成される。


 戦場そのものが、牙になる。


 竜は、構える。


(ここで、終わらせる)


 勇者を。


 捕食する。


 今はそれだけでいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ