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灰森の巣竜  作者: AI太郎
世界侵食
141/149

乱入

最深層は、すでに崩れかけていた。


 竜と皇帝の衝突によって抉られた地面は層構造を露出させ、噴き上がる魔力が視界を歪ませる中で、両者はなおも間合いを詰め続けている。

 互いの一撃が地形を破壊し、戦場そのものが崩壊していく中、それでもどちらも退かない。


 その均衡を――


 破ったのは、外部からの侵入だった。


 空間が裂ける。


 裂け目が走るのではない。


 “押し開かれる”。


 その歪みの中心から、一人の影が踏み込んだ。


 勇者アルグレート。


「――間に合ったか」


 着地と同時に状況を把握する。


 竜。


 皇帝。


 そして、崩壊しかけているこの空間。


 迷う時間はない。


 竜の元へ一直線に踏み込む。


 だが。


 その瞬間。


 空間が、ねじれる。


 落差が変わる。


 上下が反転する。


 天翼界主。


 その介入によって、戦場の構造そのものが変質する。


「増えちまったじゃねえか……!」


 皇帝が察する。


 その直後。


 地面が鳴動する。


 “繋がった”。


 通路が開き、層が接続され、そのまま最深層へと流れ込む。


 地蟲界主。


 さらに。


 空間の壁、床、天井すべてに根が走る。


 樹牢界主。


 一瞬で、戦場は完成する。


 完全な囲い込み。


「いやな配置だな」


 皇帝が呟く。


 その声にはまだ焦りはない。


 次の瞬間。


 同時に全員が動いた。


 勇者が踏み込み、竜が迎え撃ち、皇帝が割り込み、根が伸び、地面が崩れ、その全てが一点で衝突し、爆発的な衝撃が最深層全域を吹き飛ばす。

 その余波で岩盤が砕け、菌糸が千切れ、魔力が暴発し、空間そのものがひび割れる。


「邪魔だ!」


 アルグレートが叫ぶ。


 そのまま竜へ斬り込む。


 だが。


 その斬撃は、途中で“落ちる”。


 空間が傾く。


 地が裂ける。


 地蟲界主の介入。


「……面倒だな」


 勇者が舌打ちする。


 だが止まらない。


 斬る。


 進む。


 突破する。


 その動きに合わせて。


 根が絡む。


 足。


 腕。


 視界。


 すべてを覆う。


 だが。


 切断。


 一瞬で振り払い、さらに踏み込む。


 その瞬間。


 皇帝が横から割り込む。


 斬撃。


 衝突。


 勇者の剣と皇帝の剣が噛み合い、互いの力を押し返しながら周囲の空間を歪ませる。


「遅いぞ、勇者」


「……勝手に始めてるんじゃねえ」


 短いやり取り。


 だが。


 その直後。


 竜が踏み込む。


 巨体な質量を伴った拳で二人まとめて叩き潰す。


 衝突。


 吹き飛ぶ。


 だが。


 止まらない。


 勇者が着地と同時に再加速し、皇帝が体勢を立て直しながら踏み込み、竜がそれを迎え撃ち、その三者の衝突が連続しながら戦場全体を削り取っていく。

 その度に地形が変わり、層が崩れ、魔力が暴走する。


 だが。


 その戦場の外で。


 一体だけ、動きが違った。


 樹牢界主。


 その根は、攻撃のためではない。


 配置。


 密度。


 重なり。


 収束。


 戦場の一角で、静かに“構築”が進む。


 低く、誰にも聞こえない音が成る。


 そして。


 発動。


 ー万樹封界ー


 瞬間、空間が閉じる。


 根が爆発的に増殖し、層構造そのものを塗り潰すように広がりながら、内部へと押し込む。

 その中心へ。


 勇者を。


 巻き込む。


「っ――!」


 アルグレートが反応する。


 だが。


 遅かった。


 その瞬間。


 地面が脈動する。


 地蟲界主。


 通路が接続される。


 流れが変わる。


 逃げ道が消える。


 竜が踏み込む。


 重撃。


 勇者を弾く。


 その軌道が。


 封界の中心へと収束する。



 完全封鎖。


 根が絡み、層が固定され、内部が隔絶される。


 勇者は――


 封印の中へ消える。


 戦場からの排除。


 その瞬間、静寂が落ちる。


 ほんの一瞬。


 そして。


 皇帝が笑う。


「……なるほどな」


 視線を上げる。


 残ったのは。


 竜。


 地蟲界主。


 そして、自分。


 樹牢界主は封印維持に移行。


 勇者は隔離。


 構図が変わる。


「二対一か」


 剣を構える。


 血を流しながら。


 それでも。


「諦めるわけにはいけねえな」


 その顔には口調とは裏腹に明確な焦りの色があった。

  

 しかし踏み込む。


 次の戦いが、始まる。

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