突破
アルグレートが息を吐く。
そして、踏み込む。
先手。
斬撃。
一直線。
地蟲界主の創り出す地層の表層を切り裂く。
衝撃で空間が歪み、裂けた部分から内部構造が露出するが――
次の瞬間、再構築される。
「再生……いや、構造修復か」
理解する。
その時。
足が止まる。
絡む。
根。
足元から、壁から、天井から。
同時に絡みつく。
拘束。
だが。
「甘い」
剣を振るう。
一閃。
根をまとめて切断し、そのまま前進する。
だが、その動きに合わせて。
通路が変わる。
直進していたはずの道が曲がり、距離が伸び、出口が遠ざかる。
「……そういう戦い方か」
アルグレートは止まらない。
むしろ、加速する。
その瞬間。
落ちる。
地面が消える。
足場が崩れ、そのまま下層へと落下する。
だが、落下の最中に体勢を整え、壁を蹴り、再び上へと跳ぶ。
しかし。
その上に。
地蟲界主。
通路ごと、押し潰す。
衝突。
アルグレートの剣が振り抜かれ、その巨体に切っ先が食い込み、胴体に突き刺さる。
だが。
止まらない。
質量で押し潰す。
「っ……!」
初めて、足が止まる。
押される。
だが、その瞬間。
魔力を解放する。
剣が軋む。
空気が震える。
「どけ」
振り抜く。
その一撃で、地蟲界主の一部を強引に切り裂き、空間ごと押し返す。
だが。
すぐに再構築される。
その間にも。
根が絡む。
今度は違う。
魔力が、吸われる。
「……これは」
アルグレートが低く呟く。
「時間がたりない...」
理解する。
この二体は、自分を倒すためにいるのではない。
止めるためにいる。
時間を奪うためにいる。
「しかし――」
判断は一瞬。
「力で押し通る他ないな」
次の瞬間。
踏み込む。
速度が変わる。
今までの比ではない。
地面が砕ける。
空気が裂ける。
そのまま一直線に進む。
だが。
地形が変わる。
通路が閉じる。
根が塞ぐ。
地面が隆起する。
すべてが、進路を阻む。
その全てを。
切る。
砕く。
踏み潰す。
進む。
だが。
止められる。
地蟲界主が前に出る。
巨大な身体で通路を完全に塞ぎ、そのまま押し潰す。
その背後で、樹牢界主が全域を拘束する。
完全封鎖。
逃げ場はない。
その瞬間。
アルグレートが止まる。
静止。
呼吸が整う。
そして。
剣を構える。
「――少し、時間を使う」
その言葉と同時に、魔力が収束する。
周囲の空気が沈む。
地面が軋む。
根が震える。
地蟲界主が動きを止める。
樹牢界主の拘束が強まる。
だが。
間に合わない。
「行くぞ」
踏み込む。
瞬間。
消える。
いや、違う。
さらに速度を上げて認識できないスピードで移動する。
斬撃。
連続。
空間ごと切り裂く。
地蟲界主の構造が崩れ、樹牢界主の根が一斉に断ち切られる。
そのまま。
一直線。
空間の壁へ。
振り抜く。
衝突。
空間が軋む。
歪む。
だが。
割れない。
「……まだか」
次の瞬間、背後から地蟲界主が再構築され、再び押し潰しにくる。
同時に、根が再び絡む。
時間がない。
「なら――」
もう一段、踏み込む。
魔力を解放する。
限界出力。
それでも。
構わない。
振り抜く。
その一撃は、空間を切る。
壁が裂ける。
隙間。
その瞬間を逃さない。
踏み込む。
突き抜ける。
そのまま。
外へ。
次の瞬間、背後で空間が閉じる。
完全封鎖。
だが。
アルグレートは、外に出た。
息を吐く。
そして、顔を上げる。
遠くで、戦場の気配が広がっている。
「……まだ間に合う」
そのまま、再び走り出す。
止まらない。
もう、止められない。




