Round1 魔力の消失した日
銀髪の魔女でも、普通の女の子になる日がある。
女の子……という呼び方が適切かはさておき(これ以上言及すると命に関わるのでやめておく)。
「今週は魔力オフの日です」
他人ン家で紙パックの牛乳を飲み干し、銀髪の魔女は宣言する。あぁ、またこの時期が来たのか。めんどくさいような、平和なような。それは異世界者と関わり始めたからこその謎。
魔女達の戦いの記録を見ている諸君は疑問に思わないだろうか?
────毎回魔法で勝ってたらウハウハじゃね? と。
魔法に奇跡に剣技にエトセトラ。現代日本のパチ屋は異世界者によって蹂躙しつくされているのではないか?
答えはノーだ。魔女も魔王もトータルで勝っているだけで負ける日もある(魔法を使っても負けてるというツッコミはNG)。
たまに魔法の使い過ぎで魔力が無くなるらしい。以前勇者にやられたような妨害ではなく、普通に0になるそうな。魔王や聖女も例外ではなく、こちらの世界にいると稀に魔力0の状態になるのだ。数日すると戻るらしい。
「まーた魔力が無くなったのか」
「全快するまでは大人しく基礎研究に勤しみましょう」
聞こえはいいが、単なる通常実践であると思っていただきたい。どうにも仰々しい呼び方が好きなご様子。この基礎研究中に勝った分のほとんどは消えているので、実質ちょい勝ちに近い。まるでこの世界が異世界者の勝ち逃げを許さないような抑止力を感じるのは俺だけだろうか。
「たまには気分転換にどっか行ってこいよ」
「それはいつもやっているので」
「お前……結構自由だよな」
「魔女は自由業ですから」
それはお前だけではなかろうか。
居候の冥王も魔王もやっと帰って一息ついたんだから、いい加減普通に打ちたいもんだ。というかなんでこいつは俺の家にいるんだ。記憶がないんだが。
「では、基礎研究の前準備に行きましょう」
「前準備?」
「水族館です」
分からない。俺はこいつが何を考えているのか分からない。
と言いつつも、魔女に連れられ出かけるのである。




