Round47 神に愛されし男
エンディングを迎えた後は、最大32Gを経てスーパーBIGボーナスへ突入、以降は引き戻し確率80%の状態へ移行する。もはや無敵と言っても過言ではない。
「っ、はぁ…………はぁ……チャ……チャンス目が、出、ない…………⁉︎ 告白を、利用したのに?」
「出涸らしだな」
冥王の意地か……ママもようやくエンディングへ入るものの、すでに魔法の効力はゼロとなっていた。
「気持ちいいはずなのに、ぜんっぜん気持ちよくな〜い!」
32G上限まで連れていかれたが、革命的な音とともに、画面はブラックアウト。これはボーナス確定であり、再び始まる戦いの道である。
「言ったろ、自分のヒキこそ全てだ。自分の力で引いたものこそ、脳内物質を放出させるンだ!」
そう言いつつも右手が重い。だからと言ってこんな美味しい場面で実践終了などありえない。右肩のコリがなんだ、万枚へのロードは今見えたばかりだぞ!
◯80%引き戻しっていうけども
◯初回で終わったわ
◯有利区間切ると魔力切れるよな
◯がんばえ〜
「珍しく応援されてますね」
「現金な奴らだ」
しかし存外、悪くない。というか魔女からチャンネル託された時は応援してくれてたよな⁉︎
「み、みんなが、わたしから離れていく…………ママって慕ってくれてたのにぃ〜!!」
どれだけ追いつかれようが、俺はボーナスを上乗せる。冥王が引き戻しにもたつけばもたつくほど、その差は開く。
有利区間切断は、いわばゾーンなのだ。そこまでに魔力を使えば、カラッカラの身体で戦わなきゃいけないわけで。
「もう抑えられ……なぃ〜」
冥王のヘロヘロに蕩けた顔は需要がありそうだが、魔女が画角を変えた。それと同時に、鎮座していたランタンから人魂が2つ抜け出た。
魂は巨大化し、元のシルエットに戻る。
黒髪の魔王と白髪の死霊使いの帰還だ。
「ぬぉーっ、解放じゃぁ!」
「戦友……冥王様に勝ったのか…………⁉︎」
「どうやら囚われの魂も冥王から離れていくようですね」
ボーナスを消化するのを尻目に冥王の台を見やると、チャンス目の生贄として消えていったはずの魂たちが天井へ昇っていく。
「あれ大丈夫なのか?」
「元より短時間のレンタルみたいなものですよ。冥王でも現代を侵食することは不可能です」
「うぅ〜わたし神様なのにぃ〜!」
「だぁっーはっはっは! 母者も兄弟子にやられたようじゃのぅ! 見たか、これが現代パチンカスの実力じゃ!」
「さぁ魅せてくれ戦ゆ────」
「だぁーっ、もううるさいな! こっちは万枚へのロードに邁進中なんだ、集中させろ!」
◯草
◯まだ有利区間切っただけじゃんw
◯これは即落ちと予想
◯落ちろよぉっ
「なんともまぁ……ブレないことで」
「戦友……」
「我こんなのを恋人役にしようとしとったんか…………」
なんとでも言うがいい。
俺の万枚へのロードは誰にも邪魔させんッ!
◇ ◇ ◇
午後18時、店舗外にて。
俺と同じ条件で打っていた魔女は、配信者スマイルでカメラの前に立っていた。
「時刻は夕方、それでは結果発表〜ぱちぱちぱち〜☆」
「……………………」
「……………………」
「母者と兄弟子がくたばっとるぞぃ」
「気にせず行きましょう〜☆」
「お労しや冥王様……」
身体が動かねぇ…………!
特に右半身に感覚がない。これが、魔法の代償……ッ!!
「まずは冥ママさん! えっと……瀕死なので代わりに言いますね☆ 3230枚、3位でした〜」
「レギュラーは、もう……いや……」
結局有利区間切断後はすぐに抜けてしまい、早いREG当たりを繰り返して終了。所詮本人のヒキはそんなもんよ。
「続いて刹那────じゃなくてスミレちゃ〜ん!」
「4900枚、ご、ごっつぁん…………」
個人的な結果としてはすこぶるいいはずなのに素直に喜べない。俺の万枚ロードは0.5万枚ロードで途絶えてしまった…………
◯なんか半端だなぁ
◯すごいんだけどすごくないというか
◯普通に打っても行けてそう
◯おつ
「最後は私、白銀シルバ。なんと8800枚でした〜! ん〜万枚ならずで残念〜☆」
とか言いつつ俺と冥王に超得意気な表情を見せつけやがる。そのドヤ顔をやめぃ。
◯2人が通常時に戻ってもずっと引いてたよな
◯右手より左手よな
◯結局打つ手を固定する意味とは?
◯オカルトやオカルト!
◯いやあれはオカルトじゃなくてぇ
すべては魔女の掌の上だった、ということだろう。まぁ3戦勝負は勝ったのだから文句を言われる筋合いはない。
「それでは魂の戻った視聴者のみなさんもまたね〜☆」
配信停止と同時に、魔女のスマイルがゆっくり真顔に変わっていく。アッパー系がダウナー系に移り行く様は、正直何度見ても面白い。
敗北を受け入れた冥王が、大きくため息をついた。
「はぁ〜あ、負けちゃったわぁ」
「そりゃあんなトンデモ魔法やりゃな」
「むぅ〜、せっちゃんだけじゃ勝てなかったくせにぃ〜」
「ハッ、魔法なんざなくても勝ってたっつうの。冥王がなんぼのもんじゃい!」
「右手上がってないわよぉ」
右下がりに傾いた身体は、しばらく戻らなさそうである。が、実践結果の充足感で満たされた今は大丈夫だ。
勝敗の決した母親に、魔王が恐る恐る近づく。
「母者」
「そんな顔しないのマオちゃん。あなたが夢中なもののことはよーくわかったから!」
「冥王様、それでは……?」
「うん! お見合いも結婚もなーし! まだしばらくは自由にしたらいいわぁ」
うむうむ、これにて一件落着。
やーっと平和なパチライフが戻ってきたな。有給の3連戦でかなーりプラスになったし、荒い台にも挑め────
「それとせっちゃんはぁ、わたしがもらうから!」
「ん?」
「む?」
「は?」
「え?」
「冥王を下したのよぉ? 責任は取らないとぉ」
「いやいやいや…………いやいやいやいやいやいや!」
おかしい、話の流れがおかしい。
冥界組が帰ってあとはエピローグだろ? Final Roundでいい感じに締めて終わりだろ? よせ、腕を組むんじゃない!!
「娘の知り合いに手ェ出すなんざケダモノか⁉︎」
「冥王で〜す♡」
「では、私たちは打ち上げに行きますか」
「そうじゃな」
「戦友、先に行ってるよ」
「おい! こう言う時こそ助けるのが戦友だろ⁉︎」
「すまない、お腹空いちゃって……」
そう…………いや、そうじゃなくて! 全然戦友感ねぇぞ⁉︎
「魔王さん⁉︎ 婚活から救ったMVPですよ!」
「魔女ありきの話じゃろ」
「俺のヒキだってばさ!」
冥王にガッチリホールドされたまま助けを求めるものの、黒髪の魔王はわざとらしく考えるフリを見せた。
「マオわかんな〜い。次会う時はパパかなぁ?」
「あ、おいテメェ!」
「神に愛されし男…………私の目に狂いはなかったですね」
「さすがだよ戦友」
「じゃあの」
「薄情者ォッ!!」
魔王の婚活から始まった奇妙な冥界との巡り合わせ。5号機復活、冥界侵略の危機を退け、主義刹那は冥王と一緒になりめでたしめでたし。
「変なナレーションしてないで助けて師匠」
「冥王の夫が私の弟子なら……私は冥王の師匠でしょうか?」
「知るぁッ────!」
こうして、ほとんどの人間が知らない間に異世界の、しかも冥界とやらとの戦いは幕を閉じた。
「まぁでも…………5号機だけは復活しても良かったかもなぁ」
「ママはぁ〜?」
「要りませんッ!」




