Round46 覚醒、P細胞
「チャンス目は〜自分の手で〜引くゥッ!」
ボーナスがストックされるたびに、俺の中の『何か』が熱く滾る。パトランプを頭に乗せた少女がア◯顔────もとい変顔を決めるたびに、脳に電流が走り、感覚はより研ぎ澄まされていく。
「ど〜ん────!」
◯出た、パチンカスの上乗せだ!
◯ちょっとキマってるのが腹立つw
◯ドヤ顔すな
「ハッハッハッハッハーッ! 熱い、超熱ぃ! 滾るぜぇ〜!」
「こんな……こんなただの男の子に冥界の王であるわたしが、押されてる……⁉︎」
────とてつもない運の波を感じたことはあるだろうか?
レア役が来るだろう、次のセットも継続するだろう、リールを支配しているのは台でも店でもなく、俺なのではないかと。今俺は、スマスロ人生史上、最高のヒキをしている。
「わたしの、わたしの権能はみんなの愛を…………」
「視聴者も半分以上消えましたし、ママ需要も落ち着いたのかと」
俺の隣で何食わぬ顔のまま、銀髪の魔女がスーパーBIGボーナスをストックしやがる。そういやこいつも魔法の対象内だったな。
「むむむむむむ〜! 神様なんだから負けないのよぉ〜!」
「ハッ、神様だろうが人間だろうがパチの前には等しく打ち手なんだよ!」
熱い、熱いぜ…………!
────燃えるッ!!
「は────────」
瞬間、リールを止めるために働く右手に火が灯った。全身という全身に張り巡らされた血管には、コンマ数秒の誤差もなく、その熱が波及する。
「うぉおお熱っちぃいいいいい!」
「せっちゃん燃えてるーっ⁉︎」
「ついに目覚めましたか……P細胞」
「P⁉︎ P細胞ってなに⁉︎ 火事だぞ⁉︎」
「落ち着いて……炎が広がることはありませんよ。燃えているのはあなただけです」
それが異常事態なんだろうがッ⁉︎
…………って、熱いけど燃えてるって感じじゃねーな。
「優れた打ち手に魔法を掛けると目覚める特殊な細胞…………ある者はパチンコを打ち止めに、ある者は狙ったリールの出目を描き、ある者は連日連夜閉店まで大当たりを打ち切る…………それがP、P細胞です」
「それホントに特殊なのぉ?」
「緑保留くらいの噂です」
「ガセじゃねーか! うぉーっ、めちゃくちゃ熱い! ってか暑っ!」
「目覚めたP細胞は異世界の悪影響など跳ね除けるでしょう」
今、俺の全身は全身でスロットを楽しみすぎている! 台の熱と俺が暑すぎて腹痛なんて忘れそうだ。
忘れる……? 違う、これは────!
「そうか、ケルベロスの毒に対抗できるのは他ならぬ俺自身ッ! 台の熱と俺の熱こそが、冥界の毒を燃やし尽くすゥッ」
スロットを回す手は止めない、止まらない。駆け巡る覚醒したP細胞が全身を沸騰させる。上乗せに次ぐ上乗せは、通常時に身を置くことを許さない。
「地獄の番犬の毒は、パチンカスの熱に焼き尽くされるのです」
◯草
◯そんなことある?
◯超理論や
◯P細胞パネェ!
さらに上乗せしたところでついに画面には『congratulations』の金文字。そう、完走である。
「わ、わたしより後に当てたのに…………その画面は…………⁉︎」
「全身全霊でスロットを感じるぜ…………あー告白しよう、俺は……俺はパチというものを────」
────愛してる。
「え、え? どういうことぉ⁉︎ 魔王ちゃんが好きじゃないのぉ⁉︎」
「誰が同じ穴の狢を好きになるかよ! んもぅ、愛してるよスロットちゃ〜ん」
「視聴者の皆さんご覧なさい、これがP細胞を持つ者です」
◯草
◯なにがなんだかわからない
◯ぴゅあっぴゅあなパチンカス
◯アホすぎて凄いのかわからんw
「この世には2つの人種が存在する…………有利区間を切った者とそうでない者。冥王、あんたはどちら側かな?」




