Round43 右か左か1か0かイエスかノーか男か女か
さて、ボーナスを獲るにはCZでのヒキを見せなきゃならん。
本機のCZは告白成功(という名のボーナス当選)すれば当たりだ。基本はベル、チャンス目、もしくは2択当てを当てられればボーナス当選のチャンス。
その名も告らせたいゾーン、らしい。
どんだけ相手からさせたいんだ…………わからない、俺にはラブコメが分からない。
「んふふ、ここでもチャンス目が大事ならわたしの有利は変わらないわねぇ」
「チャンス目の神になってやがる」
「勝利の女神では?」
どっちでもええわぃ!
◯オレの魂をママに託す!
◯これでママと一心同体
◯つまりおれもママ……?
◯ママ────ッ!
さすがは神、やはり人間から魂を取ることなど躊躇がない。画面へ吸い込まれた視聴者の魂がチャンス目へと昇華する。
とすればあとは、リールにボーナスの『7』図柄を上下に止めるサンド目が止まれば当た────
「えいっ」
初心者ゆえの即断か、神ゆえの自信か、俺のモノローグなんぞぶった斬るように、冥王の台には青7のハサミ目が成立する。
「やった、これ当たりよね⁉︎」
「開幕からなんつーヒキだ」
「私もお先です」
真反対では魔女が赤7を止める。ナチュラルボーンヒキ強はここでも強い。2択すらまだ出てないというのに。
「おっと、焦るな。右手に全てを託してんだからな」
CZも終盤、ようやく画面が騒ぎ出し『2択』演出が登場した。真ん中のリールを第一停止として、右か左か、2択を射止めるとチャンス目成立、ボーナスチャンスとなる。
どっちだ……と迷うことはない。
それは歴戦のスロッカスによる経験、あるいは異世界の者たちに負けぬよう研ぎ澄まされた勝負勘。
「当然右だ!」
真ん中、右、左とリールを止める。
ハート図柄は揃わない。失敗である。単に左右のどちらかを選ぶことをミスっただけなのだが、1/2を通せないのはいつになってもなんとも言えない。
◯草
◯左だよなぁ今のは
◯左を選べないからこうなる
◯次も左だゾ
なんとも不出来な結果で1回目のCZは終わってしまった。
「あ〜ん、レギュラーって少なすぎるわぁ」
「良かった、振り分けには負けてらぁ」
「我々が勝ってるわけではありませんからね?」
魔女も冥王も初回はREGで終わる。
このスロットはビッグボーナスをいかに連続させるかが全て。特殊なREGでもなければ意味がないのだ。
しかし冥王はめげない。なぜならボーナス終了後からすぐにチャンス目を積み上げられるからだ。
「いいも〜ん、みんなの力ですぐ当てちゃうんだから〜」
「リアクションしといてなんだけど…………あれ違反認定しなくていいのか」
「『店内で魂を生贄にしてはならない』というルールはないですからね」
そんなもんあってたまるか。
ボーナス後100G間は引き戻しチャンスとなっており、ここでいかに引き続けるかも本機の重要なポイントである。…………逆に言えば、ボーナス後100Gは打ち続けないといけないんだが。
「刹那、迷うことのないように」
「ハッ。誰が迷うか、さっきのは最初からハズレの演出だったんだよ」
そうでも言ってないとやってられない。2択とは、外した時点でハズレ演出だったと思うことが大事なのだ。大事なのは、選択を迷わないこと。一瞬でも迷えば、そこで勝負は終わり。
迷ってはいけない…………のだが、
早めのCZに入れるごとに、2択は何度でも現れる。右か、左か、1回目に現れる2択で右を外すとドツボに嵌る。次は左、いや裏の右、否裏の裏の左、いやいや裏の裏の裏の左、そのまた裏の裏の裏の裏の右か…………右か左か1か0かイエスかノーか男か女か…………繰り返される二者択一の問答に、どれだけの悩みが訪れようと、必ず右手で右を選ぶ。
〇右縛りやめな~?
〇もう左選べばええて
〇右好きすぎだろ
〇右フェチか
「いやいや右だから」
1/2……だからこそ、右を選べばボーナスのチャンスまでたどり着けるわけで。あ、ハズレた。だが2択は成功した。俺の選択は間違っちゃいない。
迷ってはいけないと、魔女に言われた。
躊躇ってはいけないと、魔女に言われた。
道を違えることは許されないと、魔女に言われた。
…………いや違うな。俺が、俺自身が『右に来る』と信じている。
これは祈りではない。儀式だ。
神への祈りではなく、己が信ずる道へ進むための、儀式。右で打ち続け、右を選び続けることが冥王に打ち勝つ方法の一つ。
「これが先人達による……………………って違うか」
CZがゆっくりと暗転し、またまたボーナスは来ず。しかし2択演出の突破率は確実に増している。隣で5連目を引く冥王が、ようやく神らしくこちらを煽り始めた。
「あらあら? お得意の技は見せてくれないのぉ?」
「ようやく温まってきたところだ、もうちょっと待ってな」
「減らず口はいいのでさっさと当ててください。儀式はもう十分でしょう」
「儀式って、右手で打ってることぉ? そんなのが儀式なわけ…………」
ない。
そう言おうとした冥王の口は、小さく開いたまま止まり、何事もなかったように笑って誤魔化した。
笑うなかれ右手の縛りを。
ヒキを手繰り寄せる右の選択は、高潔なる制約なのだ。




