Round42 黒紅髪の冥王によるスロット攻略法『愛を捧げよ、豊穣の為に』
「スロットって指定は譲ったから台はこっちが決めるぞ」
「どうぞ〜、いぇ〜い」
なんという余裕か。これも冥王の為せる態度…………
「視聴者のみんなぁ〜チャンネル登録忘れないでねぇ〜」
「平日にこんな配信見てる奴は登録してる暇人しかいねぇよ」
◯間違ってないのが悔しい
◯ゆ、有給だから……(震え声)
◯創立記念日なんだよ
◯↑学生じゃねーか!
ホントに暇人しかいねぇ…………
「わたしのこと好きな人はいつでも歓迎よぉ〜」
「それって魂利用するから?」
「…………うふ♡」
微笑みで誤魔化すな。
どうせ碌でもないこと考えてそうだしスルーだ。今日の戦う舞台を決めよう。
まさに刹那、スロットコーナーで目が合った。赤い筐体に描かれた赤い瞳の美少女……ここで会ったが100年目、即決だ。
「これで行こう」
「これはなんとも、婚活に即したお題ですね」
「そうかぁ?」
「恋愛的な意味で」
ラブコメと婚活は同ジャンルと言えるのだろうか…………
というわけで今回の台は『告白させたい』で有名な大ヒットラブコメ漫画を題材にした1台である。
「告らせたいって、なんだかじれったいわねぇ」
「そういうラブコメだし……」
「わたしがやらしい雰囲気にしていいかしら?」
「あんたの場合『エッチ』より『アダルト』になるからダメ」
ボーナス中にボーナスを上乗せすることでいわゆる『1G連』をさせることで出玉を大量獲得する仕様だ。ヒキが強ければ強いほど出玉に期待できるというワケ。
「なんだか難しそうねぇ」
「当たるまではチャンス目をひたすら引けばいいだけだよ」
基本1/22で出るハート図柄の『チャンス目』を揃えるとCZの抽選がされ、CZを越えると晴れてボーナスとなる。台の状態によっては1/11、1/7までチャンス目の確率が上がる。
特徴はそれだけではない。
なんとチャンス目以外はチェリーやスイカなどのレア役がほぼない。チャンス目に強弱こそあれ、基本は弱チャンス目。あとはチャンス目の高確率状態になる時計目くらいで、通常時は如何にチャンス目を重ねるかがキーとなる。
「チャンス目を制す者が通常時を制すということです」
「ハートぉ〜? 愛じゃなぁ〜い⁉︎」
「愛ねぇ……」
最大30も積まないと応えてくれない役が愛なのかねぇ。できればサクッと当たって欲しいもんだ。
ゲーム数でも抽選はされるが、過度な期待は良くない。信ずるは己の右手、祈り────はしないが、右手でベットし、レバーを優しく叩き、3つのボタンを左から押していく。
「あらあら〜、わたし相手に何もしなくてもいいのかしら〜?」
リールはハズレ目、大した問題ではない。
再び右手でスロットを回す。大事なのは、手順を間違えないこと。大切なのは『右手』だ。
「いつもと違うことしたらトチるだろ?」
「その通りです」
俺とは反対に、銀髪の魔女は左手でリールを止めていく。単なる遊技方法ではない、これは…………儀式だ。
「ふぅ〜ん……じゃ、わたしは魔法使っちゃうわね?」
冥王は座席の斜め後ろに設置したカメラへスマイルを向ける。
瞬間、冥王が暗く輝く。
「みんなぁ〜ママのこと好き〜?」
◯好きだぁ────!
◯愛してるぅ〜!
◯ママ────ッ!
◯ママ────ッ!
「……ならひとりずつ、わたしのために魂を燃やしてね♡」
輝きの収束は、魔法発動の合図。一方通行の告白で視聴者数が1減ると同時に、冥王の台にナビが現れた。右肩上がりのハート揃い、チャンス目である。
「次告白してくれる人ぉ〜?」
◯俺だ俺だ俺だ!
◯ママ大好きだ!
◯好き好き大好き
◯ママ──ッ!
回転のたびに視聴者はチャンス目の生贄となり、そして冥王の台は着実にCZへ近づいてゆく。
「視聴者の魂をチャンス目にしてやがる!」
「この為のママ属性、この魔法の為の視聴者人気だったわけですか…………」
「うふふ……そうよぉ、銀の魔女ちゃん? 冥王であるわたしの権能による魔法────『愛を捧げよ、豊穣の為に』!」
俺のスマホから、撮影のカメラから、推定視聴者の魂達が冥王のスロットへ向かっていく。捧げられた魂がレバーの起動でチャンス目のナビを生み出す。
「愛は何者にも変え難い……それってつまり、愛ほどの価値を持つ力なら、何にでもできるってことじゃなぁい?」
「こいつとんでもねぇこと言ってるぞ」
「発想の転換が飛躍してますね」
「冥王としての権限フルパワーよぉ!」
ひとり、またひとりと告白した奴からチャンス目に変わっていく。魂の徴収、命による投げ銭である。
「配信視聴者が消えていくぞ⁉︎」
「以前のパチンコ配信で視聴者の魂を利用することは織り込み済みです。私達は焦らず儀式を進めましょう」
あぁ……なんて儚い命たちなんだ…………こんな横暴、許せるわけ…………
…………………………
……………………
………………
…………
……まぁ、パチンカス共の魂くらいええか。
「儀式? なんのこと?」
「ふっ、見てわからないか冥界の王様よぉ」
「だって右手で打ってるだけだも〜ん」
そりゃそうだ。その通りだし。
右手でMAXBETを押して、レバーを叩いて、ボタンを押してリールを止める。ひとつひとつ丁寧に、丁寧に…………当たれと願って。
魂なんぞ捧げなくとも、自分で引いたチャンス目は応えてくれる。CZ抽選は赤文字ばかり表示され、否応なく熱を伝える。
「魔王がどうしてパチとスロを愛してやまないか教えてやるよ」
「そして己がヒキと運命を切り拓くものだということも、ですね」
魂が渇望する虹色を見るために、
人は、己の手でリールを回す。
────いっぱい当てたいから。
◇ ◇ ◇
◯参考機種
『パチスロ かぐや様は告らせたい』
導入は1年半前のスマスロですね。
いやはや、ボーナスの1G連があんなに楽しいとは……パチンコばかり打ってると気づかないものです。
◯ 黒紅髪の冥王によるスロット攻略法
『愛を捧げよ、豊穣の為に』
告白した相手の魂を変換し、レア役に変える魔法。愛がなければ成立しない(一方的な愛でも可)。




