~第246世界・ジャパネスク①天狗の鼻は折れるのか~
~第246世界・ジャパネスク①天狗の鼻は折れるのか~
「あらぁ。グレンさん久しぶりですねぇ。冒険ですかぁ?」
「ああ、火属性素材が欲しくてジャパネスクへな。」
受付嬢が世界番号が書かれているリストを見る。
「あそこは早くに創られた異世界ですよぉ?危険ですよぉ。」
「俺を誰だと思ってるんだ(笑)」
受付嬢は肩をすくめて笑った。
「グレンさんならぁ。大丈夫ですねぇ。」
冒険者ギルドの異世界への扉を潜るとそこには……
一面赤茶けた大地が広がっていた。
ど真ん中にでっけぇ火山。火山へと続く何本かの道。道の入口には朱色の鳥居。
「な、なんなんでぇ!ここは!」
「そ、某も見たことない……」
「拙者もでござる。なんだか不気味でござるな……」
剣聖が不思議そうな顔をしている。
「そうか?火属性の魔物が多いから俺は良く来てるぜ。冒険者に安く串肉を売ってやりたいからなぁ。」
『そこーー!?(か?)(なのか?)(そこでござるか?)』
「行くぞ!」
そう言ってグレンが1つ目の鳥居を潜る。
「ここは武士、お前の出番だ。仮にもSランクになったんだろ?」
「そ、某ですか?い、いざ!参る。」
その時!
「はーっはっは!ワシはクラーマの大天狗、ワシの領域に入ってくる命知らずがおるとは!はーっはっは!」
武士は刀を握り直した。
(大天狗が出やがった!)
さらさらさらさら
(へぇ、実際の鼻はこんなに長ぇんだな。)
「スラッシュアターック!」
武士の渾身の一撃!
「効かぬわ!」
天狗が大団扇を一振。スラッシュが押し戻される。
「危ないでござる!」
忍者が結界を貼る。
さらさらさらさら
(これが大団扇か。剣撃を押し戻すたぁすげぇ。)
「おい!武士。天狗相手に力技は通用しないぞ!風を読むんだ。風の切れ間があるはずだ。」
「風の切れ間……」
さらさらさらさら
(おお、あるな……風の切れ間ってのはそこか。)
「風の切れ間に一太刀入れて天狗の鼻を切ってみろ!トドメは俺がさしてやるから。」
剣聖はそういうと結界の外へと武士を押し出した。
「風を見ろ。」
「全部同じ強さじゃない。」
「そ、某、避けるのにせ、いいっぱい……」
「風が弱まる一瞬がある。そこを斬れ!」
「剣聖さん容赦ないでござる。」
「なぁに震えてやがる!おもしれぇじゃねぇか!」
さらさらさらさらさらさらさらさら
「ええええい!やけくそだ!」
武士が刀を振り下ろす。
パキン……
ポキン!
武士の刀の剣先が折れて飛んだ。
「折れただとォオオオオ!」
天狗の叫び声がこだまする。
「おいおいおい!武士のヤツ。力技で大天狗の鼻を折りやがった(笑)切れって言っただろうが。」
さらさらさらさら
(折れてる!この瞬間はぜってぇ描くぞ。)
さらさらさらさら
「後は俺に任せとけ。」
スパーーン!
剣聖の一撃。
それだけ……
「ん、風の魔石か。そりゃそうだわな。炭火の火力上げるのに使えはするか……」
「そ、某、死ぬかと思った。(死んでるけど)」
「出来た。」
「何がでござるか?」
「見てみろ!【クラーマの大天狗鼻が折れる】大作でぃ!」
「某の活躍が描いて無いように見えるが?」
「こまけぇことはいいじゃねぇか。で、剣聖さんよぉ。次はどんなおもしれぇ敵が出てくるんだ?」
葛飾北斎は『大天狗図』という作品を残しています。蜘蛛の巣を背景に、長い鼻を持つ大天狗が大胆な構図で描かれた作品です。
本作では、その一枚から着想を得て、「天狗の鼻が折れた瞬間を北斎ならどう描くだろう?」という遊び心を加えてみました。




