~葛飾北斎の異世界チート伝説②・骨と竜~
森を抜けると大草原だった。
この先に見えたのは……
こりゃ、富士じゃねぇか?!
赤茶色の山肌、左右対称の稜線。山頂に雪を冠する巨大な山。
草原に紫色の靄がかかり始める。
「気を付けるでござる!」
「何か来るぞ!某に任せろ!」
忍者が北斎に結界を貼り前線へと向かう。
その瞬間。
ガシャガシャ……
ガシャガシャ……
地面からスケルトンの軍団が姿を現した。
すげぇな……これが本物か。
さらさらさらさら
へぇ。関節はこうなってんだな。てぇと腕の長さはこのくれぇかな。
「北斎さん!拙者の結界が甘くてすまぬでござる!スケルトンメイジの遠距離攻撃でござるよ!これ回服薬でござる!」
え……いってえ。腕から血が出てやがる。
ちょうどいい。赤が欲しかった。
血を筆に含ませて、薬を飲んだ。
この間も。
シャキーン!シャッ!シャキーン!
武士は軍勢ど真ん中でスケルトンを斬り倒していた。
俺は餓者髑髏の仕上げに目に赤を入れた。
次の瞬間、
ガシャン!ガシャン!
巨大な餓者髑髏が実体化した。
餓者髑髏はスケルトン軍団を殲滅していく。
「こんなすげぇの、鳥山石燕、歌川国芳にも見せてやりてぇな!あいつらならどう描くか見てみてぇ。」
スケルトン軍団が一掃されても、紫色の靄は晴れるどころか、さらに濃くなり、一ヵ所へと集まり始めた。
「ドラゴンだ!」
武士が刀を構えて叫ぶ。
「北斎さん!逃げるでござる!結界もこれには耐えきれないでござる!」
でけぇ!すげぇぞ。
俺は巨大な和紙を取り出し描き始める。
畳十畳半。これが限界の大きさか。
色はねぇ。墨絵だ。
「描けたぞ!おめぇら下がってろ!」
巨大な墨絵が空へ舞い上がる。
まるで天井絵のように空を覆った、その瞬間。
「龍だ!」
「龍でござる!」
大きな翼を広げたドラゴン。
翼はねぇが、空を悠々と泳ぐ龍。
ドラゴンがブレスを放とうと身構えた。
龍の周囲に雷雲が渦を巻く。
ピカーーッ!
ゴロゴロゴロゴロ……
ドッカーーン!
凄まじい閃光が空を切り裂き、ドラゴンを真っ二つにした。
「す、すげぇ。」
龍はゆっくりと大空を旋回すると、富士に似た山の向こうへと消えていった。
「こりゃぁ、俺が描いた富士越龍図そのものじゃねぇか!おもしれぇな!」
「まだ油断は出来ないでござる!」
「見てみろ!あの靄だ!……まるで波のように押し寄せてくる。この先には、とてつもない魔物の波が待っているかもしれぬ!」
【鳥山石燕】
江戸時代中期の絵師。
『画図百鬼夜行』をはじめ数多くの妖怪画を描き、日本の妖怪文化に大きな影響を与えました。
【歌川国芳】
江戸時代後期を代表する浮世絵師。
奇想天外な発想から「奇想の絵師」とも呼ばれています。
代表作『相馬の古内裏』は、巨大な骸骨が描かれた作品として有名です。
【富士越龍図】
『富士越龍図』は、葛飾北斎晩年の代表作の一つです。
富士山の上空を龍が舞う姿が描かれています。
本作では、この作品をもとに物語を描きました。




