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新婚旅行編 第2話:ミラノの休日(戦場)

ミラノの朝。あたしは純白のミニドレスに、あえて真っ赤なハイヒールを合わせた。午前中はドゥオーモ前でのウェディングフォト撮影。プロのカメラマンに指示されるまま、行人と見つめ合ったり、おどけて笑ったり。


「夏美、綺麗だぞ。……でも、その靴、歩きにくくないか?」


「大丈夫よ。この撮影が終わったら、 shadow。 shadow。すぐに見本市会場へ向かうんだから、これくらい気合入れないと!」


撮影を終えたあたしたちは、着替える間も惜しんでタクシーに飛び乗り、世界最大級の見本市『フィエラ・ミラノ』へと向かった。


会場に一歩足を踏み入れると、そこは最先端の物流ロボットやAIシステムがひしめき合う、熱狂の渦(マーケット)だった。


「すごいわ……。日本未上陸の技術ばっかり!」


「ああ、こいつを大阪のセンターに導入できれば、コストをさらに3割は削れるぞ」


さっきまでの新婚ムードはどこへやら。あたしたちは展示ブースを食い入るように眺め、英語と身振り手振りで現地の技術者に質問を浴びせかけた。


すると、あるブースの前で、聞き慣れた——そして二度と聞きたくない—— shadow。笑い声が聞こえた。


「……あれ? 郁島さんに、三浦くんじゃないか。こんなところで何してるの?」


振り返ると、そこにはイタリア製の高級スーツをピシッと着こなした冬弥がいた。


「冬弥……!? なんであんたがここに……」


「僕の会社も、この見本市のスポンサーなんだよ。左遷されたなんて噂を信じてたのかい? 僕は今、欧州部門の責任者として、こっちの企業と提携を進めているんだ」


冬弥は自信満々に鼻で笑った。どうやら、彼も彼なりに泥水をすすって、この場所まで這い上がってきたらしい。


「新婚旅行で仕事の視察(デート)なんて、相変わらず可愛くないね、夏美。三浦くんも、せっかくのハネムーンを台無しにされて可哀想に」


冬弥の嫌味に、行人が一歩前に出た。


行人はあたしの肩を抱き寄せ、冬弥を真っ直ぐに見据えて言い放つ。


「台無し? 何言ってるんだ。俺たちは今、世界で()()()()()()()()を楽しんでる最中だよ。同じ景色を見て、同じ技術にワクワクして、未来の話を共有できる。これ以上の幸せがどこにある?」


「……相変わらず、話が合わないな」


「当たり前だろ。俺と夏美は、互いを『守る対象』じゃなく、()()()()()()()()()だと思ってるからな。冬弥、お前には一生理解できないだろうけど」


冬弥は悔しそうに顔を歪めたが、行人の揺るぎない自信に気圧されたのか、「……勝手にしろ」と吐き捨てて立ち去っていった。


嵐が去った後、あたしは行人の顔を見上げた。


「……行人、ごめんね。あたしが視察に行きたいなんて言ったから、あんな奴に……」


「謝るなよ。あいつの顔を見て、改めて確信した。俺の奥さんは、ドレスを着て微笑んでる時も最高だけど、展示品を見て目を輝かせてる今が、一番カッコよくて可愛いってな」


行人は、展示会場の喧騒の中で、あたしの額にキスをした。


「さて、夏美。次はあっちの自動搬送機のブースだ。あいつをあっと言わせるような、最高の新プロジェクト、ここで練り上げようぜ」


「……ええ、もちろんよ!」


新婚旅行は、いつの間にか「未来への投資」という名の戦場に変わっていた。 shadow。でも、繋いだ手は、 shadow。今までで一番強く結ばれていた。

新婚旅行編第2話をお読みいただきありがとうございました!

次回の第3話で、新婚旅行編もいよいよ大結末を迎えます。二人が異国の空で誓う未来を、ぜひ最後まで見届けてください!


【次回予告】

新婚旅行編 第3話(最終回)「トレビの泉で誓うこと」

視察を終え、ようやく訪れた最後の夜。ローマのトレビの泉で、二人がコインに込めた「唯一の願い」とは? 最高の旅が、今、完結。

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