賢くない賢者と勇気のない勇者⑨
「まぁ、説明はこんなところかな。
あとは実際にやってみないと分からないこともあるだろうから実戦あるのみ、とりあえずやってみようか?」
そう言って俺にレジの前に立つように促す。
「えっ、いきなり一人でやるんですか?」
俺はいきなりのことに面食らって上ずった声を出してしまった。
「斎藤さんは理解力あるし、頭良さそうだからきっと大丈夫ですよ。横の方で見ていて、ピンチになった時には助けますから、とりあえずやってみましょう」
そう言っていじわるく微笑む花田さんは小悪魔に見えた。
確かにギルワで初心者に説明する時には、先ず実戦に出てどんな感じか覚えた方が上達も早い、と何度か初心者の人にチャットで尋ねられて答えたことがあったが、いざ自分のことになると話が違ってくる。
これからは本当の戦いだ。
ミスをすれば最悪ゲームオーバーなんてことだってありうる。俺の人生がね。
パートナーはいることはいるが、メインで戦うのは俺だから何が起こるか分からない。
そんなことを考えながら、緊張して立っているとすぐにお客さんがレジの前に立った。
俺の第一号のお客さんだ。
近所の主婦といった感じの50歳くらいの女性だ。
思わず後ろにいる花田さんの方を頼り見るが、彼女は特に何でもない、といった感じで一切反応しようとしない。
まるで自分一人でやっていみなさいよ、といった感じである。顔に似合わずスパルタだ。
「いらっしょいませ」
とりあえず教えられた通りに挨拶から順番に進めていこうとして、いきなり噛んでしまった。
最悪だ。
言いなおそうか、どうしようかいきなりテンパってしまう。




