賢くない賢者と勇気のない勇者⑧
店長が去ると花田さんは俺の方を向き優しく微笑みかけてくれた。
「斎藤さん、これから色々と覚えることが多いですが、分からないことがあったら何でも聞いてくださいね」
最初にそう言い置いて、花田さんは仕事の説明を始めた。
花田さつきという名前のこの娘は、さっきの予測通りどうやら俺よりも年下らしい。しかし堂々とした態度を身につけており、非常に頼りになるという印象を受けた。
隣に立ってレジの操作方法から説明を受ける。
彼女はとても説明が上手く、オペレーション自体もそれほど複雑ではなかったので、簡単に理解できた。
そもそもいつもパソコンを使っているのだから、こういう機械関係についてはある程度慣れていると言ってもいいから取りつきやすい。
しかし、それにしても花田さんの横に立つと、彼女がつけている香水の匂いがほのかに香りとても気になる。
朝霧さんの時もそうだったが、女性と二人きりで話す機会なんてここ数年なかったことだし、元々女性は苦手だったので、ひきこもる前からもあまり話すことが無く、だからこそどう話していいのかに困ってしまう。
俺がまごまごとした表情をしているのを察してか花田さんは
「どこか分からない所がありましたか?」
と優しく聞いてくれた。
「……いや……大丈夫です」
返す言葉が見つからなくて無愛想に返事をしてしまうが、それでも花田さんは変わらずに優しい説明を続けてくれる。




