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23、エルフの商会。2


規則的に響く判子の音が、部屋の中に響いた。


シルビアは、それ専用の機械であるかの様に、ただただ作業を繰り返す。

目を通して、押し。目を通して、押し。


光を完全に失った様な瞳に、リグは少し気の毒に思いながら、少し冷めた紅茶に口を付けた。



あの後、


部屋の中の会話を聞いていたかの様な完璧なタイミングで、リグを案内していた男性が入って来た。


来た時と同じ様に、小声で耳打ちをして、こちらを気にしながら部屋を出ていった。


それを受けたシルビアの青ざめた顔色から、リグは大まかな内容を把握したが、あえて確かめるような事はしなかった。


それより気になったのは、エルフの男性の視線だ。


(来た時とは、明らかに違う反応。


好奇と、それから意外、感嘆ってところかな…)


リグの不躾な視線に対して、気分を害した様子を見せるわけでもなく、男性は部屋を出ていった。


(いくら『これ』だからといっても、正直予想していたよりも大分反応が大きいな。)


黒色の瞳を確かめる様に、瞼の下側の皮膚を引っ張った。


それから仕事を再開したシルビアを見やって、問いかけた。


「この商会を設立したのって、シルビアさんってことで良いんですかね。」


「ああ。」


均等な音を崩さないまま、シルビアは簡潔に答える。


「なんでなんですか?


エルフが商会を作るって事も、過去はなかったですし、正直自分も驚きでしたし。」


「興味があったから。」


食い気味に答えられた事に、リグは思わず言葉を詰まらせる。


「…興味って、人間に?それとも商会に?」


「どちらかと言えば後者だな。


リマインがある程度手配してくれて、エルフの仲間と一緒に立ち上げたって感じだ。」


「…仲間って、そんな簡単に集まったの?


エルフって、無関心な感じでしょ。」


「無関心?


そんな訳がない。

あいつらは好奇心の塊みたいなもんだろ。

じゃなきゃ、こんなに野菜は研究されないし、何より、こんな上下社会を作る訳が無い。


今は、人間の商会のシステムにのめり込んでるんだよ。」


(なるほどな…


興味がある事に対して、集中するって感じなのか。


野菜は興味があって、建築は無いってことか。

発達の差が激しいわけだ。)


リグが考え混んで視線を外している時、唐突に等間隔の音が止んだ。


リグが顔を上げると、真剣な顔のシルビアが目に映る。


「そっちも質問したんだから、今度はこっちの番だろ。」


少し困惑の表情を浮かべながら、リグは答えた。


「ええ、まあそうですね。」


「聞きたいのは、二つだけだ。


リマインに紹介された経緯。

それと、『まるで、これまでのエルフのことを見てきたかの様なその言い方』は、固有スキルに関係しているのかどうか。」


リグは思わず苦々しい笑いを浮かべて思う。


(ああ、この人が『上』をやってるのは、こういう所なんだな。)





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