第四話 タイムスリップ
――19XX/1/12/12:14
俺は今井麻衣が殺害された翌日にタイムスリップしてしまった。
「今は、西暦何年の何月何日ですか?」なんてテンプレの台詞を言う日が来るなんて思ってもいなかった。
……ここが昔の町。随分と形を変えたものだ。
紅葉はいない。俺が手を離したから。
この状況、お前ならどうする? 紅葉……。
事件を解決しろってことだろう。
ただの高校生の俺が、どうやって……?
あの瞳の記憶を見る能力をもう一度使えたら、解けるかもしれない。
今井麻衣の幽霊は雨の日にしか出没しない。雨の日を待つしかないのだ。
聞き込みから始めるしかないな。まずは成人式の会場へ――。
成人式は開催されていた。中には刑事らしき人もいた。
それに――俺の祖父、高橋良一の姿も……。
写真でしか見たことがない。俺が生まれる前に亡くなったから。
どこか俺と似ているような気がした。
今井麻衣は俺と祖父を勘違いして、「高橋くん」なんて言葉をこぼしたのだろう。
刑事がこちらを見て近づいてきた。
「ちょっといいかな?」と警察手帳を見せてきた。
俺に何の用が……?
「君、どこの学校の生徒かな? 見ない制服だけど」
そうか。50年前には俺の通っている学校は存在しない。20XX時点で設立45年の学校だ。
「ちょっと、こちらに来てもらっていいですか? 二人きりで話をしませんか?」
「……ああ、いいだろう」
「ありがとうございます」
刑事は、俺を疑いつつも連いてきてくれた。
俺たちは人気のない公園のベンチに腰かけた。
「話というのはなんだね? 事件について何か知っているのか?」
俺ってやっぱりバカだよな。今から話すこと、信じてもらえるわけもないのに。
「俺は50年後の未来から来た。この事件は未解決事件のまま終わる」
「…………」
刑事は何を思ったのだろう。こんなヤバいやつ信じるわけないのに……。
「わかった。それが本当なら次の犠牲者を教えてくれ。もちろん知ってるんだろう? 雨の日連続殺人事件を――」
雨の日連続殺人事件。
雨の日、無差別に人が殺害される事件。
今井麻衣は13番目の被害者であり、最後の被害者。
この殺害を最後に犯人の消息は途絶えた。
50年後の20XXでも未解決の事件……。
「もちろん知ってます。だけど、これが最後なんです。次はない……」
「はあ……。少しばかり信じた俺がバカだった。じゃあなボウズ」
俺は悔しかった。どうすれば信じてもらえるのだろうか……?
悩んだ末、名案を思いついた。でも、これは――未来が変わるかもしれない。
――気づけば口走っていた。
「証拠はあります!」
刑事は足を止め振り向いた。
「面白い。見せてもらおうか」
「……高橋良一。成人式に参加している人です。その人と俺のDNAを調べてください」
言ってしまった。ごめんじいちゃん。
「ほ~。なるほどねー。わかった。……信じるよ。俺の負けだ」
「……ほんとに信じるのか? 調べないのか?」
「調べない。その必要はない。お前なら解けるんだろう? この事件を――」
こうして俺は刑事と知り合いになり、事件を探ることになった。
住まいの心配もいらない。刑事の家に居候させてもらえる。
なにか、事がうまくいきすぎている気がする。
どうやって未来に戻るのだろうか?
紅葉はどうしてるのだろうか?
俺は事件を解決できるのだろうか?
様々な疑問が脳裏を駆け回った。
それに刑事から聞いたダイイングメッセージ「4」について……。
何を伝えたかったのだろうか?
脳みそがパンクしそうだ。今日は疲れた。おやすみなさい――。




