表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神楽ノ幽言  作者: 雨内蛍


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/9

第三話 杪夏

 ――20XX/7/17/12:00

 今日は夏休み前日である。

 かなちゃんの一件から約二週間が経過していた。

 俺はその期間に三人の幽霊を成仏させていた。

 幽霊の単位って人でいいのかな。そんな疑問はどうでもいいけど。

 

 一人目は、バンドマンのロックでかっこいい男だった。

 なぜかライブでバンドをすることになった。なんでやねん、と言いたいところだが……まあいい。


 二人目は、海を見たいという車いすに乗った少年だった。

 もちろん海に連れていき、成仏してもらった。


 三人目は、目の見えない少女だった。

 これは……また大変で、花火を見たいと言い出して、霊眼という目を作り出して俺は死にかけた。


 と言った感じ……。疲れるけど、嫌な気はしなかった。

 誰かを救うというのも悪くないものだ。

 日が経つごとに紅葉との絆も深まっている。

 今は自信をもって相棒と言える。

「相棒!」

「なんだ。急に気持ちわりーな」

 こいつは多分ツンデレだと思う。いや、ツンツンツンデレかな?

「こんな雨の日によくも元気でいられるな。憂鬱だ」

「まあな。明日から夏休みだし」

「夏休みか……俺は打ち上げ花火を見てーな」

「じゃあさ、今度の夏祭り一緒に行こっか」

「ああ……」

 なんか照れてない? っていうか……。

「紅葉って目は見えてんの? どこにあるんだ?」

「360度、全部見えてるぜ」

「すげーな、便利すぎんだろ。見え方キモそうだけど」

「ははっ、きめーけどもう慣れた。百年だかんな」

「そっか……百年だもんな」

 百年も本でいられる紅葉は、正直言ってすげーと思う。

 終わりはあるのだろうか。ふと、そんなことを思ったけど口には出さなかった。

「神楽、この道を曲がって廃バス停に行け。五人目の成仏だ」

「りょーかい」

 

 ――この時の俺はまだ知らない。あの幽霊のせいで……事件に巻き込まれ、いや首を突っ込んだのは俺の方なのに……。

 いまだに葛藤が続く、このとき行かなかったら、もっと幸せでいられたのかな。

 嘆いたって無駄なのに……。俺のせいで大量殺人が起きるなんて、想像もしたくないよ……。


 俺たちは廃バス停に着いた。

「ここって……」

 この場所は知っている。

 雨の日になると、女の幽霊が立っていると噂がある場所だ。

 遡ること50年前、成人式前夜に起きた殺人事件の被害者である。

 雨の日連続殺人事件――最後の被害者。

「いるな……。いまいまい……」

「いまいまい? 呪文か?」

「違うよ。あの幽霊の名前、今井麻衣」

「なるほどねー、ってかなんで知ってるんだよ。知り合いか?」

「ちげーよ。このあたりじゃちょっと有名だからな」

 俺は幽霊に近づいた。その瞬間、異変を感じた。

 これはヤバい。空気が変わった。重い……息ができない。

「おい神楽! しっかりしろ!」

 紅葉の声が耳をすり抜けた。何か言ってる……。

 動けない。金縛りというやつだろうか。

 気持ち悪い。今すぐにでも吐き出したい。

 紅葉の声も、雨音も、何も聞こえなくなった。

 視界が霞む。体に力が入らなくなった。

 ごめん、紅葉。本落としちゃった……。

 濡れてない……?

 大丈夫……?

 「高橋くん……」

 この声だけが耳に届いた。

 名字を呼ばれた。この女の幽霊、今井麻衣は一体……。


 前に倒れこんだ俺には、走馬灯のようなものが見えた。

 あれは先週の出来事。

 図書委員で放課後に残っていたとき、辞書を手に取りパラパラとページをめくった。

 開いたページで一番最初に目についたのは、「杪夏」だった。

 夏の終わりという意味があるらしい。

 俺には、夏の終わりなんて来なかった。夏の終わり、ましてや夏休みも何もかも……。

 気づいたころには、気を失っていた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ