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神楽ノ幽言  作者: 雨内蛍


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2/9

第一話 出会い

 ――20XX/6/30/17:28

 あれから一週間が経っていた。

 相変わらず雨だ。今年の梅雨は長引くらしい。

 僕は図書館に訪れていた。

 本を読むのは割と好きである。文学とかはくそくらえだけどな。

 読みたい本を探していると、歪な黒い本を見つけた。

 ただものではない。そう僕の感は告げた。

 好奇心から本を手に取った。

 この瞬間から始まった。僕の地獄への道が開かれたのだ。

 この時のバカな僕は知らない。

 左手が爆発して無くなり――終いには命を失うなんて。


 バカな僕は、表紙のタイトルを読み上げた。

「幽言書霊告……?」

 意味が分からなかった。中国語なのだろうかと疑問が挙がった。

 でもページをめくると日本語が書いてあった。

 少し気味が悪かった。怨念のようなものが感じられた。

 無意識に、「なんなんだ、これは……?」と声が漏れた。

 不思議なことに、所々白紙があった。

 凍り付くくらい静かな図書館に、声が響いた。

「おいお前、俺の声聞こえてんのかー?」

 本が喋った。幸いにも、この声は周りに聞こえていないようだ。

 よかった。安堵した。幽霊が見える僕は、対して驚くこともない。

 本は不服そうに言った。

「お前、もっと驚けよ。つまらねーな」

「ごめん。こういうのには慣れてるからさ」

「突然だか、この本を手に取ったお前には任務を与える!」

 えっへん、と誇った声色で申した。腕を組んでいる姿が容易に想像できた。

 本だから腕なんてないが……。

「任務ってなんだ……? 面白そうだったらやってもいいぞ」

「面白そうだったらか……。この本を手に取った時点でお前に契約が結ばれた。使命を背負ったのだ」

「言ってる意味が……」

「わからないか。まあ無理はないな。俺様が特別に説明してやる――」


 本の説明を聞いた。

 幽言書霊告とは、幽霊の遺言を手に入れて、成仏できない幽霊に成仏してもらうものだ。

 後悔や、伝えたかった想いなど、様々なものである。

 僕は七番目の後継者らしい……。

 本を手に持ったものは、みな一年以内に亡くなったらしい。

 僕は使命を背負ったのだと理解した。

 正直に言うとやりたくなかった。

 でも、やってる。そんな気持ちだった。


「――以上が幽言書霊告についてだ。わかったかお前」

「……ああ、やるよ。やってやるよ」

「そりゃありがてーな。そういえば、名前聞いてなかったな。まず先に俺から。俺は紅葉。よろしくな……相棒」

 相棒という響きは、どうしてだか嫌じゃなかった。

 紅葉、いい名前だな。

「俺は神楽。よろしく相棒」

「くくくっ。いいじゃねーか。気に入ったぜ」

「さんきゅ……」

 少しの沈黙が流れた。先に口を開いたのは紅葉だった。

「神楽、本当に引き受けるのか? 今のお前ならまだ引き下がれるぜ。強い霊力を持つお前は、契約を引き裂ける」

 やたら真剣な口調だった。

 僕、いや俺は言ってやった。

「男に二言も遺言もねえ! これが俺の答えだ」

 言ってやった。図書館にいる人たちの視線が痛い。そっか、俺の声は普通に聞こえるんだった。

「ありがとう、神楽。お前は絶対に死ぬなよ……」

 とてもやさしい声だった。俺の心に花が咲くような、台風も吹き飛ばせそうな。

 そういえば、心の俺から僕は消えていた。不思議な感じだ。でも、なぜか嬉しかった。

 だって、友だちができたから――。

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