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99話

 受けた呪いを返す方法について、鬼瓦先生は教え始める。


「基本的に、呪いっていうものは、縁を利用して行われる。今回の実習では血を使ったが、他には髪の毛や衣服、そして人の縁を使うこともある」


 鬼瓦先生は黒板に、髪の毛の隣に藁人形、衣服の絵の隣にぬいぐるみ、人の絵の隣に別の人の絵と両者を繋ぐ形の線をチョークで描いた。


「縁を通じて呪うからには、この縁を破壊すれば、自然と呪いも離れていく。これが呪い返しの基本的な考え方だ」


 鬼瓦先生は、髪の毛と藁人形の絵を指す。


「髪の毛を通しての呪いなら、ある作法で自分の髪を少量切ることで、呪いを外すことができる。衣服を通した呪いなら、今まで着てきた服とは系統の違う服を着ればいい。人の縁の呪いなら、人間関係をリセットするのが効果的だ」


 生徒たちが理解の頷きを行うのを見ながら、鬼瓦先生は説明を続けていく。


「しかしだ。髪を切る、服の趣味を変える、人間関係をリセットする。どれも手間がかかる。そこで過日の霊能者は、もっと楽に呪いとの縁を切る方法を編み出した。いまじゃ、これが呪い返しの一般的な作法になっているほどにな」


 鬼瓦先生は教壇から離れると、呪いを受けた生徒たちに、一枚の紙で作られた人形を渡していった。


「その人形に自分の名前を書いて、それから燃やせ。それで簡単な呪いなら、すぐに跳ね返すことができる」


 鬼瓦先生は教壇に戻り、呪い返しについての詳しい説明を始める。


「人形に名前を書くと、その人形はお前たちと縁続きの存在――つまりは分身となる。そして呪いは、縁を通じて分身に移動する。この理論は、呪いを引き受けるお守りや、呪い避けの護符などにも使われている」


 鬼瓦先生は、黒板に人と人形を描き、次に雲のようなものを描き、それが人から人形に移る様子も描いた。その後で、人形に火の絵を描き入れた。


「こうした人形に移動した呪いを、人形と共に燃やす。人形のあった縁は炎によって焼滅するため、人形にある呪いは縁を通じて人間へは戻れなくなる。標的を失った呪いは、役目を終えたと判断して消えるか、呪うのを失敗した反動として術者に返ることになる」


 パンパンと手に付いたチョークを払いつつ、鬼瓦先生は生徒たちに目を向けなおす。


「これが簡単な呪いの返し方だ。民間に流通しているような程度の低い呪いなら、これ一発で解決できる。ただし、強い悪霊や巧みな呪術者からの呪いになると、人形の分身を見抜いて、即座に人に呪いが戻ることがあるから、過信は禁物だ」

「そういう呪いの場合は、どうすればいいんですか?」

「有名な神社や寺でお祓いを受けろ。それでダメなら、時間と共に呪いが薄れるのを期待するしかないな」


 満景と同じように、生徒たちの脳裏には、昨日に校外実習で見た、呪いを受けた人が収容される施設の光景が広がったことだろう。

 不安そうにする生徒たちに、鬼瓦先生は笑って見せた。


「心配するな。あの施設にいくような呪いは、滅多にあるもんじゃない。あんな強い呪いを受けるような、人に強く恨まれる覚えが、お前らにあるか?」


 大多数の生徒は、それもそうかと納得した様子になる。


「よし、呪い返しについての説明は以上。ほら、人形を燃やせ」


 鬼瓦先生に急かされる形で、呪いを受けた生徒たちは人形に自身の名前を書くと、ライターで人形を燃やし始めた。

 人形を燃やして上がった煙の大部分は、空中に溶け消えていった。

 しかし少量の煙が、呪いを発動させた生徒の中の二人へと移動する。

 恐らく、消える煙は呪いが消滅したもので、移動する煙は呪い返しが発動したものなのだろう。

 そして呪い返しの煙が向かう先の生徒の一人は、ギヤマンだった。


「チッ、面倒クセえ」


 ギヤマンは、自分に近づく煙をみるや、私服の中に隠し持っていた特殊警棒を取り出す。その特殊警棒を伸長させると、煙を一薙ぎにした。

 特殊警棒に殴られて、煙は霧散して空中に消えていった。

 満景の感覚からして、ギヤマンが呪い返しによる呪いを受けた様子は感じられない。どうやら特殊警棒にて、呪いを殴り消してしまったようだ。

 呪い返しが向かったもう一人の生徒は、ギヤマンのような打ち消す道具を持っていないようで、呪い返しの呪いを受けてしまったようだった。

 その呪い返しを受けた生徒へ、鬼瓦先生が声をかける。


「その呪いは半日で消える。これから半日の間は、危険な場所に行ったりせず、大人しく過ごすように」

「ええー、そんなー」


 その生徒の苦情の声をかき消すように、学校のチャイムがなった。


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― 新着の感想 ―
(´・д・`)ソンナー
呪い返し返し、にまではならんでも実力さえあれば返ってきた呪いもどうにかできると
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