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89話

 ゴールデンウイークが終わり、再び学業中心の生活が始まった。

 満景は、熊野高等専修学校の教室に入り、そして違和感を覚えた。

 その違和感は、時間を経る度に積もっていき、やがて担当教師である鬼瓦先生が登場したところで、確信に変わった。

 なにを確信したかについては、満景が言葉にする前に、鬼瓦先生が通達事項として伝えてきた。


「ゴールデンウイーク中の間に、新たに自主退学を選んだ生徒が出た。命懸けの霊能活動は出来ないとの理由でだ」


 鬼瓦先生の言葉の通りに、A組の教室には新たな空席が三つ――つまり三人の生徒が学校を去ったということだ。

 その事実に、満景は驚きつつも、疑問を抱いた。


(四月中にも自主退学するタイミングはあったのに、どうしてゴールデンウイーク中に決めたんだろう?)


 四月中の校外実習において、危険さは十二分に分かったはず。

 辞めるにしては、ゴールデンウイーク明けはタイミングがずれすぎているように、満景には感じられた。

 しかし、鬼瓦先生は満景とは違う意見を持っていた。


「ゴールデンウイークに生徒が辞める判断をするのは、この学校ではよくあることだ。四月中は身近に同じ学校に通う友人という存在がいて、その集団心理によって危険さが麻痺している部分があるんだ。しかし長い休みで学校の友人と関わる時間がすくなくなると、その集団心理が外れて真に自分と向き合う時間が現れる。自分自身を見つめてみて、危険な霊能現象と向き合うことに怖気づき、学校を通い続けられないと判断し、自主退学を選ぶのさ」


 鬼瓦先生が理由を口にすると、いまいる生徒の中から気まずそうな顔をする者が出てきた。

 恐らく、その生徒たちは、鬼瓦先生が言ったような、連休中に冷静に自身と学校についてを考えたのだろう。そして考えた結果、退学を選ばずに、こうして学校に通い続けることを選んだのだろう。

 表情を変えた生徒も含めて、鬼瓦先生はA組の生徒たちを見回した。


「学校も、ゴールデンウイークに自主退学者が出てくることは分かっていた。そして、ゴールデンウイークを声て在学することを選んだ生徒は、統計的に自主退学を選ぶ可能性が低いこともな」


 鬼瓦先生の口ぶりに、話の流れが変わったことを、満景は感じた。

 それは他の生徒も同じのようで、嫌な予感を感じているような表情になっていた。

 その嫌な予感を肯定するように、鬼瓦先生は企み顔で告げる。


「これから先の校外実習は、怖くて恐ろしい現場に行くことが多くなる。腹を決めて、心を強く持つことだ」


 鬼瓦先生は、そんな脅し文句を口にしてから、この日の連絡事項に話題を移した。

 しかし満景を含めて、多くの生徒が『怖くて恐ろしい現場』という単語が気になって、連絡事項がロクに耳に入って来ない様子でいた。

 ホームルームが終わった後の一時間目が始まるまでの短い空き時間で、A組の生徒たちは『怖くて恐ろしい現場』を話題に友人間で話し合った。

 満景と力雄と小里も、席が近いということもあって、集まって同じ話題で話し合いを始めた。


「巨大な悪霊。マンションに住みついた龍。結構、衝撃的な校外実習だったよね。あれよりもインパクトのある実習ってことなのかな?」

「うむぅ。怖いのは困る」

「せんせーが釘刺してきたってことはさ、生半可な霊現象が相手じゃないってことっしょ。うちの管狐は、攻撃力も防御力も皆無だから、満景に呪具の融通を頼むことになりそー」

「僕が作った物を渡してもいいけどさ。本職の人の物の方が安全だから、お金出して買った方がいいよ?」

「そんなに違いがあっちゃうわけ」

「言って、僕のは半人前の手習いだからね。インチキ呪具よりかは効果がある程度だよ」

「んなこと言って、悪魔召喚なんて出来ちゃってたじゃんか」

「あれにしても、僕が狙って呼べるのは、最下級の悪魔だけだよ。悪魔召喚に造詣が深い本職の人が作った呪具なら、供物次第で伯爵級まで呼び出せると思うよ」

「……悪魔について疎いから聞くけど、伯爵級ってどんなことできそな悪魔なわけよ?」

「物語に出てくる悪魔がやっていることは、ほぼできると思っていいよ。無限の金が出てくる道具をくれたり、どんな相手も惚れさせることが出来たり、悪魔的な知識を人の頭の中にインストールしたりとかね」

「ほんとに?」

「できるけど、見返りにどんなものを要求されるかわかったもんじゃないから、悪魔に頼るのは勧めないよ?」


 そんな話をしている間に、教科を教える先生が教室に入ってきたので、満景たちと他の生徒たちも会話を切り上げて自席へと戻り、そして授業が開始された。

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― 新着の感想 ―
ゴールデンウイークを声て→ゴールデンウイークを越えて
満景は師が多いからそのお陰でもしもの手段なんかもありそうですけどそれを常に頼る訳にもいきませんしねえ
お話全体の方向性が全然わからない…
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