74話
子供相撲大会が終わり、今度は青年相撲大会――十八歳未満の人が出場する大会が始まった。
子供大会の参加者とはうって変わり、青年大会では本気で相撲に取り組んでいる人達ばかりが出場者のようだ。
出場者全員が立派な体格をしていて、中には本物の力士顔負けの体格の者もいた。
試合も迫力がある。
立ち合いでぶちかまし合い、張り手や蹴たぐりが放たれ、投げを限界まで堪えるために頭から土俵に突っ込むなんてことはザラだ。
こちらの大会での優勝商品も、力昇岩との取り組みのようだが、青年たちが力昇岩に向ける目には憧れと共に勝利を目指す貪欲さがあった。
そんな相撲の取り組みを見ていると、鳥居の方向がにわかに騒がしくなった。
「そいや、そいや!」「そいやそいや!」
太鼓や鐘の音と共に遠くから近づいてくる掛け声を聞くに、どうやら街中を練り歩いていた神輿が戻ってきたようだ。
土俵周りに残っていた子供たちは、そのかけ声を聞くや神社の外へと走り、そして神輿がやってくる方向へと去っていく。
それから青年相撲の取り組みが三つ消化されたところころで、神輿の担ぎ手と共に、周りで囃し立てる人たちも一塊になって、鳥居をくぐって神社の中へ入ってきた。
「そいや、そいや!」「そいやそいや!」
「そいや! そいや!」「そいやそいや!」
掛け声とともに神社の中を周回するように、神輿が担ぎ手たちによって運ばれる。
青年大会は一時中断され、青年たちも土俵周りから「そいやそいや」と声を上げて盛り上げる。
やがて神輿は、あらかじめ作ってあった安置場所へと置かれた。
担ぎ手たちは神輿に一礼してから安置場所から少し離れると、全員で輪になるように立つ。
「では締めに、お手を拝借。三本締め、参ります。よー、おッ!」
担ぎ手、子供、青年、そして力昇岩が、掛け声に合わせて、合計三十発の柏手を打った。
そうして神輿担ぎが締められると、担ぎ手たちは身内で雑談を始め、子供たちは土俵周りへ歩いていき、そして青年たちは大会の取り組みに戻った。
担ぎ手の一人だった力雄は、境内に満景がいるのを見つけると、近寄ってきた。
先ほどまで神輿を担ぐという力仕事をしていたからか、力士回しと法被の間から覗く彼の肉体は、良くなった血流で真っ赤になっていた。
満景は力雄に向かって笑いかける。
「お疲れ様、力雄。なんか飲んだり食べたりする?」
満景は荷物持ちとして預かっている中の、食べ物や飲み物が詰まった袋を掲げる。
これは全員で話し合って、力雄用に買っておいたものだ。もし力雄が食べない場合は、若槻が引き取る予定だ。
力雄は汗が浮かんでいる額を腕で拭うと、厳めしい表情の口元を少しだけ綻ばせた。
「では、お好み焼きを貰ってもいいか。それと緑茶」
「いいとも」
満景が品を差し出そうとすると、力雄は待ったと手を上げた。
「家に案内する。皆も、休憩したいだろう?」
そう言われてみればと、人ごみの中を出店を巡ってウロウロしたため、少し疲労感があった。
友人たちの様子を見ると、はしゃぎ疲れの様子が見受けられた。
なので全員が力雄の申し出を受けて、神社の中に建てられている力雄の実家へとお邪魔することにした。




