65話
学業を送る日々を過ごし、ゴールデンウイークの時期に差し掛かった。
「満景は、連休、どうする?」
休み時間の中で小里に問われて、満景は予定を思い出すために目を上向かせる。
「基本的に、バイトしている占いの館にいるかな。ゴールデンウイークは書き入れ時の一つだし」
「へー、けっこう人が来んの?」
「新年度に入ってから初めての大型連休だからね。新しい環境で悩みを持った人が多く来るよ。連休だから遠方からも来やすいしね」
「占い師的に、旅行者が占いに来て嬉しいもん? リピーターになりにくいと思うけど?」
「嬉しいと思うよ。占いの館に勤めている占い師たちは凄腕で、悩みの解消法を一発で教えちゃうから、リピーターってそんなに居ないし」
「そんなに、ってことは全く居ないってわけじゃないわけ?」
「人の中には、呪いや宿命とは関係なしなのに、トラブル続きの人生を送っている人もいるからね」
小里は納得の頷きを行ってから、話を力雄へ向ける。
「そっちは、連休に何するの?」
「……毎年、子供の日に例大祭を行う。その準備と撤収作業で、連休はつぶれる」
「例大祭って、お祭りってことっしょ。出店とか、やっぱあんの?」
「ある。昨今減ったが、それでも他所より多く出店している」
力雄との会話が一段落ついたところで、満景が小里へと逆に同じ質問をする。
「小里さんは、連休に何か予定があるの?」
「いやー、全くないんだって、これがね。だからさ、まだ予定が埋まってない人を誘って、何かしたいなーってね」
「それじゃあ、僕ら二人は期待に沿えなかったってわけだね」
「いやいや。連休中に行く予定に組み込む候補を教えてもらったからねー」
「……占いの館に来る気なの?」
「ダメなん?」
学校の友人が職場に来る光景を思い描くと、満景としては気恥ずかしさを感じてしまう。
「ダメじゃないけどさ。小里さんは、何か占ってもらいたいことがあるの? 僕で良かったら占えるけど?」
「あれ? 満景って、手伝いっていうか、雑用じゃなかった?」
「占いの館のオーナーから許しを貰って、平日の短い時間だけ占い師をしているんだよ。この学校の制服を着てね」
「なるー。学校制服なら、霊能者としての実力に一定の担保が生まれるもんねー。ちなみに、満景の占いの腕って、どんなもんなん?」
「当たるも当たらぬも八卦、って感じだね」
「当たり率が低いならダメじゃん」
小里がケラケラと笑っていると、手水舎と若槻が近寄ってきた。
「楽しそうにお喋りしているご様子ですけれど、何の話なのです?」
「占いって聞こえてきてたけど、面白い占いの結果でもでたの?」
二人からの疑問に、小里が笑い声を止めて返答する。
「いやさ、これから始まる連休の予定を聞いてたわけ。んで、満景は占いの館で働いて、力雄は自分家の神社で例大祭やるって聞いてね」
「へぇ。犬塚は、占いをするのですか」
「例大祭――神社のお祭り。本当に小さい頃にいったっきりだなあ」
満景は、手水舎から胡散臭い者を見る目を向けられていることに気付きつつも無視し、若槻の呟きを話題として拾う。
「その過保護な守護神が憑いたから、他所の神社には行けないんだっけ」
「それもあるけど、昔はチビッ子陰陽師として活動していて忙しかったから」
「じゃあ、その活動を始めてからは、祭りに行ったことがないってこと?」
「チビッ子陰陽師のときも、地元の祭り紹介の番組で行ったことはあるよ。予定が詰まっていて、ろくに遊べなかったけどね」
残念がる若槻を見て何を感じたのか、唐突に小里が声を上げた。
「よしっ、この皆で力雄の神社でやる祭りに行こう!」
決定事項を伝えるような口調を受けて、満景は待ったをかける。
「だから、僕は占いの館で働く予定があるからね。そもそも、若槻さんには守護神が憑いていて、神社には近づけないんだから」
「満景の予定はともかく、力雄はどう思う? ももかちゃん、神社に入れなさそ?」
「……恐らく、神社に入れる。うちの神は開放的だ。力比べができる強者を常に求めている」
「要するに、ももかちゃんの守護神が嫌がらなければ、ももかちゃんは祭りを楽しめるってわけ?」
「若槻がお願いすれば、その守護神とて祭りを楽しむ邪魔はしない、はず」
子供の日に神社の祭りに行く流れが出来つつある。
満景は改めて自分の予定を口にしようとするが、その発言を止めるように手水舎が手を満景の肩に乗せてきた。
「無粋な事を言うのは止めなさいな。友人一人の幸福のために、都合を付けられないような職場ではないでしょう」
「……分かった。無理言ってでも、五月五日の予定を空けるよ」
満景が降参したことで、この面々で力雄の神社の祭りに参加することが決まった。




