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62話

 鬼瓦先生は、実習の目的を語り終えると、改めて満景たちに問いかけた。


「お前たちは隠匿方向に結論が進まないと判断して実習目的を話したわけだが、まだ自分たちの実力で解決できるか試したい気持ちはあるか?」


 満景は、自分に解決能力がないことを自覚しつつも、時間の猶予があるのなら未だ解決方法を考えてみたいと考えていた。

 そんな満景と同じことを考えていそうなのは、負けん気を出している手水舎。

 一方で小里と力雄は、実習の目的を把握した途端に、さっさと解決できないと認めて解決できる人に投げてしまえば良いと、そう考えていそうな表情になっている。

 そしてギヤマンは、他の面々とは違う表情をしていた。

 ギヤマンは、話し合いの間はやる気がなさそうな表情をしていたのに、鬼瓦先生が実習目的を話し出すと急に戦闘意欲が湧いたような目つきになっていた。

 そのことに満景は気付いて、心の中で溜息を吐く。


(はぁ。きっとギヤマンは、鬼瓦先生に龍を追い出すことは出来ないと言われたことに、自分が舐められたと感じて腹を立てているんだろうなぁ)


 この満景の予想が合っていたかのように、ギヤマンは龍がいるマンションの部屋の前に移動した。

 その行動に、鬼瓦先生が眉を寄せてギヤマンに問いかける。


「何をする気だ?」

「決まってんだろ。あの龍を追っ払うんだよ」

「どうやってだ」

「もちろん、ぶっ叩いてだ!」


 ギヤマンの宣言に、鬼瓦先生は肩をすくめる。


「お前の実力じゃ、龍を叩いたところで痛痒すら感じない。そも龍気の前に、龍に近づくことすら出来ないだろ」

「へっ。そりゃどうかな。先生、あんた言ってたよな。龍気ってのは、身体に取り込めば超人化できるってなあ!」


 ギヤマンは、龍が発する龍気を全身で受け止めるためにか、両手両足を大の字に広げて立つ。

 すると途端にマンションの部屋から出てくる龍気の量が減ったように、満景は感じた。


(違う。減ったんじゃなく、ギヤマンの求めに応じるように、龍気がギヤマンの身体に入っているんだ。だから僕たちに届く龍気の量が減ったんだ)


 満景が見抜いたように、ギヤマンの身体は龍気を吸収して変化を起こし始めていた。

 ギヤマンの四肢にはち切れそうなほどの力が満ち、髪の毛は逆立って燐光を放ち出し、皮膚は高揚で真っ赤に。


「うっわっ。まるで赤鬼じゃん」


 小里が呟いた通り、ギヤマンの額に角が生えれば正に赤鬼だ。

 しかし流石の龍気であろうと、ギヤマンに額に角は生させることはできなかったようだ。

 それでも、ギヤマンは通常時の何倍もの力を得たことは、彼の様子から分かる。


「へへっ。これだけの力がありゃあ!」


 ギヤマンは特殊警棒を伸ばして蜻蛉に構えると、靴を脱がずにマンションの部屋の中へと駆け入った。そして、リビングでとぐろを巻く龍へと肉薄した。


「食らいやがれ!」


 高まった膂力を全て込めて、ギヤマンは龍の頭部に目掛けて警棒を振り下ろした。警棒も龍気を吸っていたのか、その表面にある梵字が煌々と光り輝いている。

 その警棒が龍の頭に命中し、まるで近くで雷が落ちたかのような轟音が響いた。

 渾身の手応えを感じたのだろう、ギヤマンはしてやったという顔になっている。

 しかしギヤマンの表情とは裏腹に、龍の寝顔は静かなまま――いや、龍に変化が起こる。

 龍が薄目を開けて、頭を殴りつけてきた無礼者を視認したのだ。

 しかし、その目に浮かんでいるのは怒りではなかった。

 寝ていて羽音が五月蝿い虫を感じたときのような、起き上がって対処するか眠気を優先するかを迷う目だった。

 そして龍は、眠気を優先するように目を閉じ直すと、軽く鼻息を吐いた。


「ふすっ」


 起こされて不機嫌な気持ちを吐き出すような、そんな小さな鼻息。

 しかし、その鼻息で巻き起こされた現象は、軽くはなかった。

 鼻息の何倍もの風が部屋の中に突如発生し、その風によってギヤマンは部屋の外まで吹き飛ばされた。

 廊下の壁に背中が叩きつけられて、ギヤマンの口から痛そうな呻き声が出る。


「ぐあっ!」


 廊下の上でエビ反りして痛みに堪えるギヤマンに、鬼瓦先生は呆れ顔を向ける。


「龍気を吸収してでも、龍に挑もうと考えるガッツは買うけどな。お前が吸収している龍気の大元は、あの龍だぞ。限界まで取り込んだところで、本家本元に勝れるはずがないだろう」

「だが、殴りつけたら起きた! 何度もやれば、寝にくい部屋だと感じて出ていくかもしれねえ!」

「そう何度も殴られてくれると思うのか。それに、先ほどの反撃は鼻息だけだったが、もし五月蝿ささに頭や手を振るってきたら、お前は大怪我を負うことになる。そう理解しても、試したいか?」


 鬼瓦先生は言葉をかけながら、指でギヤマンが握る警棒を示す。

 ギヤマンと共に生徒たちが警棒を見ると、光る梵字からヒビが四方八方に伸びていて、耐久度に限界が来ていそうだと分かる。

 ギヤマンも、流石に警棒なしで龍に打撃を与える気はないのか、ムスッとした顔で警棒を縮めて懐に収めた。


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― 新着の感想 ―
ギヤマン、心持は先駆けとして超優秀なんだけど、 致命的な所で突出して全員に迷惑かけそうな、 そんな猪武者感ある。後煽りにかなり弱い。賢い人にうまく使われそう。
ギヤマンはある意味素直で可愛い。教育のしがいはありそう。
頭悪い。よく五体満足でこれまで生きてこれたな。
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