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54話

 初の校外実習を終えた、その翌朝。

 鬼瓦先生が教室に入ってきたのにもかかわらず、教室の席には幾つかの空きがあった。

 鬼瓦先生は、その空いた席に目を向けてから、生徒たちに顔を向けなおした。


「昨日の実習、お疲れ様。衝撃的な出来事があったが、無事に乗り越えられて嬉しく感じている」


 そう前置きのようなことを語ってから、空いた席の理由を語り始める。


「昨日の実習が衝撃的だったからか、何人かの生徒が体調不良を理由として欠席している。恐らくだが、今日欠席している生徒の中の何人かは、自主退学を申し出るんじゃないかと見ている。これは、毎年そういう生徒がでることからの推察だ」


 話を聞きながら、満景はさもありなんと納得していた。

 悪霊たちは弱かったとはいえ、あれだけ大量に押し寄せてきた。さらには、生徒側の攻撃が全く通じなかった、あの巨大な悪霊。

 この学校を卒業したら、あんな存在たちと戦う業務につく可能性がある。

 そう知って、怖気づいてしまう生徒が出てきても、不思議ではない。

 そして満景は、占い師の館で働いてきたことから、あることを知っている。

 現代の霊能者は、あんな悪霊たちと戦わなくてもいい職業に就くことができる。

 占い師は最たる例で、神具や仏具に呪具などの製作者、風水師や土地見などの生活アドバイザー、それ以外にも沢山の職業がある。

 そも、霊能者でないとなれない職業でなくても世の中には様々な職業があるし、熊野高等専修学校でなくとも学校は沢山ある。別の道を進むのだって、全然ありえる選択肢だ。

 鬼瓦先生は、言葉を続ける。


「今日出席した生徒の中にも、このまま学校生活を続けることに不安を覚えている者はいるだろう。もう一度、よく考えて、継続か自主退学かを選んで欲しい」


 それで朝のホームルームが終わり、授業開始の時間の時間までの短い休み時間が始まる。

 満景は次の授業の教科書とノートを準備していると、右隣から肩を突かれた。


「なんだい、小里さん」


 満景が顔を向けると、小里は迷いが浮かんでいる表情をしていた。


「さっきの先生の話さ、どう思うよ?」

「どうって、なにが?」

「学校を辞めるかって話だってば」


 満景は何を話題にしたいかを理解して、小里に向き直る。


「小里さんは、学校を辞めたい?」

「いや、辞めたくはないけど、昨日の悪霊を思い出しちゃうとね」

「巨大な悪霊については、他の生徒も対処できなかったんだから、ノーカウントだとして。他の悪霊については、小里さんは十分に対処はできていたと思うから、心配しなくても良いと思うけど?」

「いやいや。対処できたって言ったってさ、ほぼほぼ満景からもらったお守りのお陰じゃんかー。満足に戦えも身を護ることもできない私が、居ても良いのかなーってさ」


 不安に感じている部分を知って、なおさら満景は心配要らないと感じた。


「小里さんは考え違いをしているね。僕が渡したお守りであれ、有名霊能者が作った霊札であれ、それを使って身を守ることができたのなら、それは小里さんの実力だよ。悪霊祓いについても、僕らの歳じゃできなくて当たり前。A組の生徒は、多少なりとも悪霊祓いの心得があるから、どうにかなっているだけだしね。それに小里さんは、入学式にバッチを貰わなかったら、たぶんB組に入れられた口だろうし」

「言われてみれば、そっかー。入学式のとき、管狐を使えば惑いの呪術なんて効かないぞって、張り切っちゃったことが原因だったかー」

「だから小里さんは、これから色々と学んでいけばいいと思うよ。小里さんの管狐に戦闘能力が皆無だったとしても、小里さんが戦えないってわけじゃないんだし」

「えー。私、あんまり戦闘向きな自覚ないんだけどー?」

「なら、逃げ隠れする術を覚えればいいよ。忍者系統を始祖とする霊能者だと、その手の術が多いらしいよ」

「ふむー。逃げ隠れか、そっちなら出来っかもねー」


 小里は迷いが多少晴れたようで、普段の調子に戻って授業の準備を始める。

 満景は、小里が迷っていたのなら、他はどうだろうと顔見知りに顔を向ける。

 力雄は、昨日前線で戦い続けていたのに、疲労感が全くない普段通りの雰囲気で座っている。

 一方でギヤマンは、疲労感が抜けていない様子で机に突っ伏しながら、不機嫌そうな雰囲気を周囲に振りまいている。恐らく、巨大な悪霊に手も足も出なかったので、自分自身の実力の無さに苛立っているのだろう。

 若槻は、守護神の所為で昨日の実習は全く活動していなかったので、周囲の生徒に対して申し訳なさそうな態度をとっている。

 最後に、昨日の実習で多少言葉を交わした、手水舎。

 彼女は、昨日の実習での指揮について他の生徒たちから感謝され、有頂天な調子で感謝を受け取っている。彼女を慕う取り巻きが出来そうな勢いだ。


(実際、手水舎さんの指示は的確だったよね。でも思い返してみると、手水舎さん自身は大して戦っていなかったけど)


 その点が気になったものの、授業を始めるために先生が入ってきたので、満景は気にすることを止めて授業に集中することにした。



ここから二日に一回更新に切り替えます。

楽しみに感じてくださっている皆様には申し訳ございませんが、ご理解くださいますようお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
あの悪霊を喰ってたやつ含めて最終的に先生らがどうにかしたんだろうけども実習初回であんな目に遭ったらねえ 今ここにいる面々も最終的にどれくらい残るやら
手水舎はちと気に食わん。判断も内容も知らない危険性のある切り札を成績のために強要する点が特に。自己保身の色が強く見える。
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