118話
熊野高等専修学校は、霊能者を育てるための学び舎とはいえ、歴とした国立の学校である。
そのため、それぞれの学期ごとに中間と期末のテストが設けられている。
満景たちは、この学校で初めてとなる、前期中間テストを行った。
霊能者を育てる学校なので、霊能の力もテストされる――ということはなかった。
「A組のお前らは、雑多な悪霊を退治できる霊能力を持っている。だが他の組の生徒たちは、いままさに霊能力について学んでいる最中だ。そんな段階で霊能力のテストをしても意味がないし、A組だけ実施するのも不公平だからな」
そんな鬼瓦先生の言葉の通りに、一年生の前期の中間および期末テストにおいて、生徒の霊能力に関するテストは行われないと判明した。
では何のテストするかというと、他の高等学校や高等専門学校と同じく、学科のテストだ。
熊野高等専修学校では、午前に座学を行い、午後は霊能実習というカリキュラムを行っている。この午前の座学がどれほど身についているかを確かめるために、学科のテストが実施されるわけである。
そんな学科テストにおける、満景の手応えはというと。
(なんか、学科テスト、易しいような?)
分からない問題もあったものの、授業を真面目に聞いて覚えていれば、大半が解ける問題ばかりだった。
その満景の感想は、他のA組の生徒たちも同じようで、学科テストが一つ終わる度に、生徒同士が安堵する様子が広がった。
「なんてーか、身構えるほどのテストじゃなかったよな」
「ちょっと耳にしたんだけどさ。全教科、赤点は五十点未満だそうだぜ。赤点とっても、同じテスト内容で追試なんだとさ」
そんな易しいテストだったこともあり、A組の生徒たちは大した苦労もなく前期中間テストを突破することができた。
答案用紙が戻ってきて、休み時間に満景は同じ班員と答案用紙を持ち寄って、獲得点数と間違った場所の正答を教え合う。
「満景は、全ての教科が平均よりやや上なのですね。勉強に、得意不得意がありませんの?」
手水舎からの質問に、満景はどうかなと考える。
「化学系の問題は苦手ではあるかな。理解が及ばないから、丸暗記してどうにかしているだけだから」
「理解が及ばない、とは?」
「材料をもとに化合物を特定するとか、物質のモル計算とか、よくわかってないけど、物質の正しい表記を丸暗記することで対応してる」
「それでは応用が効かないのでは――本当に、化学の引っかけ問題に、まんまと引っかかって点数を落としてますわ」
会話する二人の横で、小里が力雄とギヤマンの答案用紙を見て声を上げる。
「二人とも、めっちゃ良い点とってんじゃん!」
その声に、どれどれと他の面々も覗き込む。
すると、どの答案用紙も、ほぼ満点の点が記されていた。
見た全員が感心の声を上げ、そして小里がノンデリ発言をかます。
「真面目ちゃんな力雄が高得点なのは納得だけどさー。なんでギヤマンの点数がいいわけ?」
「んだ、コラ。俺が高得点の何がオカシイってんだ」
「いやだってー。ギヤマンってほら、見た目イカツイしー。テストの点数なんて気にしねえ、って感じかなーって」
「アホが。学があって困ることなんてねーだろうがよ。それに、バカ晒して世の中を歩くなんて、ダセェだろうが」
ギヤマンの強い主張に、他の面々が感心して拍手を送る。
そんな中で、高槻だけが、こっそりと自分の答案用紙を隠そうとしていた。
その行動を小里が見逃さなかった。高槻の手から答案用紙を奪いとる。
「奪取!……うん、返すね」
小里がコメントもなく高槻に答案用紙を返す。しかも、他の面々に見られないように、答案用紙の点数が書かれている方を裏にするようにして。
その行動が何を意味するのかを、他の面々は察した。
「それでさ、この問題の答えが分からなかったんだけど」
「あーそれ、私も分かんなかったー」
「仕方がありません。教えて差し上げます」
「こっちにも聞け。ちゃんと分かり易く教えてやっから」
「若槻もな」
「そういう気遣いは、逆に傷つくからやめてよー!」




