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117話

 満景たちの後にマンションの部屋に入った班も、隠された呪具がないかを家探しした。

 しかし、隠されていた呪具は新たには発見されなかった。

 そうして全生徒が探索を終えると、入れ替わる形で、腕に鑑識の腕章をつけた五人の男性が部屋のトイレに直行していく。鑑識の人たちは検査キットを取り出して、トイレの水や芳香剤と隅に置かれた塩を調べ始める。

 生徒の多くは、鑑識の仕草が気になって、部屋の中を覗きこもうとする。

 しかし、その行動を阻むように、鬼瓦先生が生徒たちに向って声を放つ。


「これで、校外実習は終了だ。ほら、下校が遅くなるから、すぐに学校に戻るぞ。そして明日までの宿題として、この呪術師の家の中を見て、感じたことや分かったことをレポートとして提出してもらう」


 唐突な宿題宣言に、生徒たちから非難の声が上がる。 


「「「ええー!」」」

「おいおい。これは校外実習だぞ。ただ呪術師の家を見させて終わりなわけないだろ。ここから去る前に、記憶が薄れないようメモを取る時間はやる。五分間な」


 生徒たちは、それぞれのスマホを取り出すと、メモアプリを呼び出して、呪術師の家で見たものについて書きだしていく。

 満景もスマホにメモをとっていくが、トイレにあった黒い像についてどう書くべきかに悩む。

 あの像を発見した班の一員であるからには、レポートの中に像の記載は必須だろう。


(結局のところ、あの像が呪術師が逮捕される案件に使われた呪物なのかは分かってないし、その効果も知らないんだよなあ)


 加えて考えるのなら、満景たちがマンションの部屋に入る前に現場検証は行われているはずなのに、どうしてトイレタンクの中を調べていなかったのか。


(捜査令状にトイレは除外されていたとか? もしくは、トイレのタンクの中を気にしなくなるような、意識改変系の呪術がトイレの個室に仕込まれているとか?)


 こういう考察もレポートに入れた方がいいのかどうかと、満景はメモの中に書き下した。

 そうして五分が経過したところで、鬼瓦先生がメモ取りの終了を宣言した。


「全員、学校に返るぞ」


 鬼瓦先生が先導する形で、A組の生徒たちは連なってマンションの敷地から出ていき、学校への帰路につく。

 その道中、生徒たちはお互いにメモを見せ合いつつ、宿題になったレポートをどう書くかを話し合う。

 満景の班も、同じようにレポートについて相談し合う。


「レポートって、どんな内容を書いた方がいいかな?」

「情報屋の報告書だと、どんな理由があって情報を探って、探ったらどんな情報を得たか。その情報から、どういう推論立つかって書くけどねー」

「今回のわたくしたちの行動に当て嵌めますと、呪術師の部屋を探ったものの、逮捕されるに足るほどの呪物がないと判断し、家探しを開始。結果、トイレのタンクの中に、怪しげな像を見つけたと。そして、その像こそが、呪術師が警察に捕まるに足る呪物であったと書くのですのね」

「おいおい、俺の勘働きがトイレタンクが怪しいと当たりをつけたってとこを、忘れんなよ」

「それなら、その前段階で、麻沙美ちゃんの管狐が狭いところや入れないところを探したことも入れないとダメだよね?」

「むぅ。書くべきことが多い」


 そうやって話し合いながら、満景たちはスマホのメモにレポートの概要を書いていく。

 それでも、それぞれにレポートに書くべきと重視する点が違うようで、メモにある概要に大なり小なり差異が発生している。

 満景は、トイレタンクを調べる人が少なかった点を。小里は、管狐が捜査に役立つ点を。力雄は、トイレの個室の隅にあった塩に重点を。ギヤマンは、自分が怪しげな像の発見者だという点を。手水舎は、班員全体の行動の流れを重視。若槻は、子供陰陽師として名をはせていた時期に見た、他の呪術師の邸宅との差を。

 それらメモの概要の差を見るに満景の班は、それぞれ違ったレポートに書き上げることは間違いなさそうだった。

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― 新着の感想 ―
見る人によって着眼点も変わってきますねえ やっぱ視点はいくつかある方がいいね
まぁトイレのタンク内は捜索順としては上位だもんな
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