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112/113

112話

 呪物供養の寺からは、普通の授業が続いた。

 午前中は座学を行い、午後の実習では呪具を作ったり、霊現象が起こっている現場に出たりした。

 生徒は、この学校生活に慣れて、学業をこなしていった。

 そんなある日、教室にて生徒たちがとある話題を口にしあっていた。


「今朝のテレビニュース見たかよ。呪術師の家に強制捜査ってやつ」

「見た見た。マンションの一室に、警察の捜査員が大量に入っていく、あの映像のヤツだろ」

「派手に稼いでいたところを、目を付けられたって噂だぜ」


 生徒たちの声を、満景は耳にしながら、その話題に興味が持てなかった。

 満景は基本的に、時事ニュースをスマホから収集する性質だ。そもそも、自宅にテレビを置いていないので、テレビ番組は見ることができない。

 加えて、呪術師の家に家宅捜査が入るのは、満景にとって驚くべきことではないからだ。

 しかし新しいニュースに食いつくであろう存在に、満景は心当たりがあった。

 その心当たりが、登校して教室に入ってきた。


「ねーねー、満景さー。ニュース見た、見たよね?」

「おはよう、小里さん。ニュースって、何の話?」


 満景の返答を聞いて、小里は信じられないといった身振りを大袈裟に行ってみせてきた。


「各局、呪術師の家に家宅捜査したニュースで持ち切りだったじゃんかー」

「ごめん。僕、テレビ持ってないから」


 小里は自身のスマホを取り出して、その画面を満景へ向ける。画面に映っているのは、呪術師の家に家宅捜査を行ったことを報せる記事だった。


「ネットでもお祭り騒ぎじゃん!」

「僕が良く見ているニュースサイトでは、あまり大きく取り上げてなかったっぽいよ?」


 満景が反証として、自身がよく使うニュースサイトをスマホ画面に映してから、小里に見せる。

 そのニュースサイトでは、本当に呪術師の家に家宅捜査した件が小さく扱われていて、大ニュースといった感じには受け取れない見た目になっていた。


「それに、呪術師の家に家宅捜査するって、そんなに珍しいこと?」


 満景が疑問顔でいると、小里は満景の反応を訝しむ顔をして、そして何か興味を引くものを見つけたような表情に変わった。


「えっ、もしかして。呪術師の家――満景の実家って、警察に度々調べられたりしてるとか?」

「年に一回は必ず警察が何人か来て、どんな仕事をしたかを聞いてきたりしてたよ。僕の両親は、何も隠すことないからって、素直にどんな仕事をしたかを教えていたし」

「それって、狗神で誰を呪ったって、警察に教えたってこと?」

「守秘義務があるから、詳しく誰から依頼を受けたとか、誰を呪ったかとかは喋ったりしてなかったけどね。でも、何時呪ったかという情報は的確に渡していた感じだよ」


 小里は理解の頷きを行ってから、言い難そうに次の質問をしてきた。


「人を呪ったことを正直に話して、捕まったりとかは?」

「逮捕されたりしないよ。呪いを受けたから、人に被害が起こったって証明できないからね。逮捕状のとりようがないから、どの事件ないし事故に関わってそうかを聞くのが精一杯だって、実家に聞きにくる刑事の人から聞いたし」

「へー。なら、今日の呪術師の人は、どうして警察が捜査に入ったん?」

「……そういえば、どうしてだろう?」


 気になったからと、満景はニュースサイトで詳しい事件の経緯を調べてみた。


「呪術をしていたから捕まったんじゃなくて、所持しちゃいけない物を持っていたからみたい。道具とかお香とかで」

「そうなん?」

「呪術関係で現在所持できない物って、結構あるんだよ。人に正気を失わせる呪刀は、日本刀登録審査会で弾かれちゃうから、銃砲刀剣類登録証が発行されない。だから呪刀のほとんどは登録証がなくて、それを持っていたら違法になるんだ。お香にしても、昔にあった呪力を高めるものには、現在では禁止されている薬効があるものが多くてね。それを使用していたのなら、違法薬物所持違反で捕まっちゃうね」


 満景は、件の呪術師はその手の道具を使っていたからこそ警察から家宅捜査されたのだろうと、予想した。

 しかし小里は納得していない顔だった。


「そんなショボい事件で、あれだけ大勢の警官が家宅捜査に出張ったっての?」

「どれだけの人数がいたのかは知らないけど、呪術師の家に踏み込める機会なんて、そんなにないからね。警察の人たちも気合が入っていたんじゃないかな」

「いーや私は、あの呪術師が有名人を呪ったから、警察が出張ってきたって説を推す。ネットじゃ、その手の陰謀論で持ち切りだかんね!」

「いやいや。情報屋の娘が、都市伝説的な陰謀論に傾倒してどうするのさ」


 二人が会話している間に、殆どの生徒が教室へ入っていた。そして鬼瓦先生も、程なくして教室にやってきた。

 起立、礼、着席が行われて、鬼瓦先生が連絡事項を喋り始める。


「午前の授業は時間割通りに行う。だが午後の実習は、予定が変更になった。喜べ。今一番人気の場所に連れて行ってやる」


 それが何処かというと、例の家宅捜査を受けた呪術者の家だと、鬼瓦先生は語った。

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情報屋の娘はその辺の情報は特にニュースに出ている以上のことは知らんのか
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