遠いアメリカ大陸アンデットダンジョン
萬屋狛里は、イスカンデルが生んだバグだ。
だから神以上どころか、圧倒的に強大な魔力を持っている。
少なくとも俺やみゆき以上の魔力だ。
少女隊が北都尚成となってイスカンデルの神となり、世界は安定しつつあるけれど、狛里との繋がりは未だ保たれたまま。
その証拠に、彼女が俺の女手となりアルカディアの住人となった今でも、狛里はイスカンデルに行く事ができてしまう。
そして今尚、魔力は大きくなり続けていた。
そんな彼女だから、狛里は魔力コントロールが苦手だ。
それはもう出会った頃から今までずっと。
但し、偏に『魔力コントロールが苦手』と言っても、種類は幾つかある。
みゆきのように、魔力が溢れて抑えきれなかったり。
狛里はそこまで酷くはないので、普段は魔力を抑えられている。
しかし隠す事は下手だった。
全力で隠し抑えても、精々半減くらいが限界。
それが出会った頃の狛里だった。
だから特別なカチューシャを付けて、強制的に魔力を半減させていた。
それから時が流れ、狛里はそれなりに成長していった。
魔力コントロール技術が高められ、今ではカチューシャで魔力を抑えなくても自力でなんとかできるようになってきている。
そこで、戦闘時の対応に問題があるとして、今ではカチューシャを付けなくなっていた。
それでも、状況に応じた繊細な魔力調整という意味ではまだまだできていなかった。
必要以上の力で相手を攻撃してしまうのだ。
人を殺しをしたくない狛里にとって、それはとても辛い事。
そこで、魔力調整をサポートする『セーラースカーフ』という魔道具を俺は狛里に与えた。
攻撃する時の余計な魔力を光に変えて、攻撃力を落とすのである。
最初は戦闘時常に光を発して戦っていたけれど、そうすると攻撃時以外も魔力が抑えられる事になって敏捷性に欠けるデメリットがあった。
とは言っても、それが問題となるシーンはほとんどないんだけれどね。
しかし問題は問題なので、狛里は攻撃時だけコントロールするように変えていった。
だから最近では、攻撃の瞬間だけ光ると言った感じになっている。
それが今、その一瞬の光さえも失くなっていた。
つまりそれは、ようやく狛里も魔力コントロールが完璧にできるようになってきたという事だろう。
ただ本人としてはまだ完璧ではないようで、弱い相手でも積極的に戦いたがっていた。
コントロールを完璧にする為に‥‥。
俺たちは北米大陸へと来ていた。
大西洋を渡る時、思った以上に遠く感じたのは、おそらく気のせいではないのだろう。
地球であったアトランティス大陸の話。
そしてエルドラールを見れば想像できる。
大西洋には隠された大陸があるに違いないのだ。
大航海時代までアメリカ大陸が発見されなかったのは、おそらく本当に遠かったから。
地球の場合はアメリカ大陸発見後、アトランティス大陸の消滅か何かの理由によって今の地図になったと考えられる。
その辺りはいずれ調べるとして‥‥。
とにかく今は、先に地図を完成させる方向で行くとしよう。
まずは北米を探索し、俺たちは二つ目のダンジョンを発見していた。
当然見つけたからには挑まずにはいられない。
俺たちは迷わずダンジョン攻略へと乗り出した。
どうやら此処も、ピラミッドダンジョンと同じく一度きりのダンジョン。
できれば光宙一人にクリアさせたい所だけれど、狛里も戦いたいようで、結局二人で攻略していく事になった。
「マジックミサイル!ひゃっほーい!魔法最高だぜ!」
なるほど、このダンジョンを見れば最初に魔法スクロールを見つけた意味が分かってくる。
ここの敵はゾンビやスケルトンと言ったアンデットだ。
物理攻撃はほとんど効かない。
とは言え魔法を覚えた所で、今の光宙一人ではつらそうだ。
「うわっ!魔法が出ねー!魔力切れか?!」
流石にスライム並みの魔力では、何発か撃てば打ち止めになってしまう。
「じゃあ刀で斬ってやるぜ!」
しかし物理攻撃では倒せない。
「うおっ!どうやって倒せばいいんだ?」
一人騒ぐ光宙の横で、狛里がガシガシとアンデットを倒してゆく。
良い感じに魔力を抑え、問題なく倒しているな。
「なんで俺には倒せねーんだよ!?」
全く、そんな事も知らないのか。
「光宙!アンデットには物理攻撃は効かない!倒せるとしたら魔法武器か銀の武器くらいだ」
「そうなのか?でも狛里はふつーに倒してっぞ?」
「それは魔法属性を付与して攻撃しているからだよ」
「なんだよそれ」
分からないかな。
「推古、ちょっと手伝ってやったらどうだ?」
「ふむ。しかしわしも、魔法は使えんからの」
「えっ?そうなの?」
そう言えば魔法を使った記憶はない。
というか、元エルドラールの住人だから、そもそも俺たちの言う所の魔法は使えないんだよな。
「俺の能力もまだ取り込めてないか‥‥」
「うむ。理が違うでの。難しいと言ったであろう」
ならば‥‥。
俺は先日の魔法スクロールを取り出した。
実は研究がてらもう一度発動するようにしておいたんだよね。
「これを広げてみろ。光宙同様マジックミサイルが使えるようになる」
「ほう。流石は策也じゃの。では遠慮なく使わせてもらうのじゃ」
そう言って推古はスクロールを受け取ると、素早くそれを広げて魔法を覚えた。
「ふむ。確かに使えるようになったみたいじゃ」
推古は早速マジックミサイルを放つ。
すると、光宙に襲いかかろうとしていたゾンビが、一瞬の内に崩れ落ちた。
「おおっ!なかなかの威力だな」
流石は推古。
光宙とは魔法のデキが違う。
「しかしじゃ‥‥。もう撃てなくなってしまったのじゃ」
あらら‥‥。
そう言えば推古も、まだまだ魔力は小さい。
光宙同様、今正に成長が始まったばかりなのだから。
「これじゃ推古が参加しても意味無しか」
倒せているのは狛里だけ。
それも慎重に魔力コントロールを確認しながら戦っているので、なかなかアンデットの数は減らなかった。
「おい!策也たちも戦ってくれよ!これじゃ俺、噛みつかれてゾンビになっちまう!」
「それは大丈夫だと思うぞ‥‥。しかしこのままじゃジリ貧か。そうだ!光宙はエルドラール人だったんだろ?ならば生活魔法くらいは使えるはずだよな?!」
生活魔法は、エルドラール人の多くが義務教育レベルで教えられる最低限の念術の事だ。
俺たちの言う魔術ではなく念術で行う為、魔力が枯渇しても使える。
「そりゃー使えっけど、そんなのでゾンビが倒せるとは思えねーぞ?!」
「そのままだとな。だから刀に炎を宿して攻撃してみろ!それはもう立派な炎の刀じゃないか!」
それで上手くいくかどうかは知らないけれど、やってみる価値はあるだろう。
それに光宙は、魂がウンコ刀にある。
生活魔法で炎と言えばだいたい指先に灯すのだから、光宙なら刀に灯すのと大差ない。
「おう!そんな方法があんだな。よし!やってやんぜ!」
光宙は俺が言った通り、直ぐに炎を灯し刀に付与した。
「うおー!!あっちー!ヤベー!ヤベーぜ!」
そうだったな。
本体がウンコ刀なんだから、体全体に炎を纏うようなものか。
しかもなんか言っていたはず。
知的生命体だった時の方が痛みを感じなかったとか。
つまり刀だと感覚がしっかりしている訳で。
これで上手く行かなければ、念術でマジックミサイルを試すしかないかな。
かなり高度な技術だし、できるとも思えないけれど。
「くっそー!別に火傷する訳じゃねー!我慢してやっぜ!」
なかなか根性があるな。
それに何気にゾンビにダメージを与えているぞ。
一撃とはいかないけれど、これなら十分に戦える。
結局光宙は戦い抜いて、なんとかこのフロアのアンデットを全て倒したのだった。
「凄いな光宙。光宙のくせに炎を纏って戦うとか、想像してなかったわ」
「俺も想像してねーよ!つうかさ、俺って転生してきたんだよな。なんで俺、生前の名前をずっと使ってんだろ?普通転生したら名前を変えるもんだろ?」
「そうなのか?」
俺は今でこそ名前は本名だけれど、元々は違う名前を使おうとしていたよな。
それに苗字はもう御伽じゃない。
「なんかいい名前に変えてくれよ」
別に自分で好きに名乗れば良いと思うけれど、そう言うなら考えてみるか。
「そうだな‥‥。じゃあウンコ!」
「違うの‥‥。うんちちゃんなの‥‥」
「え~?スライムなんだからゲーリーとかいいんじゃないかしらぁ~?」
「今はむしろ硬いんだから、ベンピなんじゃない?」
「クソで十分なのじゃ」
‥‥。
みんな言いたい放題だな。
ほら見ろ。
光宙がすねてるぞ。
「頼むからぽまいら‥‥、ウンコからは離れてくれよ‥‥。そもそも光宙なんてドキュンネームで苦労してきたんだぜ?せめて普通の名前を付けてくれ‥‥」
あまりの悲壮な訴えに、俺たちは少し声が出なかった。
つか『ぽまいら』って、やっぱ光宙はヤンキーじゃなく厨二病か。
「悪かったな。だったら『サトシ』なんてどうだ?」
あのアニメ繋がりだけど、直ぐに思いついたのはこれくらいだった。
「サトシか‥‥。適当に付けられた感はあるし、普通過ぎる気もすっけど‥‥。それで苗字は?」
「そうだな。じゃあ『カスミ』だ。漢字では『霞砂利』と書く」
俺は見えるように魔力で漢字を表示して見せた。
ちなみに『砂利』と書いて『サトシ』と読むのは、ジャリボーイだからだよ。
豆知識な。
「おう!なんか霞ってかっけーな!忍者みてーでよ。気に入った!それにすっぜ!」
本当にいいのかな。
砂利だぞ?、
しかし本人がそれでいいのだからいいんだろう。
俺は納得した。
すると突然、何か大いなる力を一瞬感じる。
なんだ今のは?
そうか、そういう事か。
この零界は俺の世界だ。
俺が設定した事は、きっちり反映されてしまうのだな。
もしも『光宙』改め『砂利』が不満を訴えてきたとしても、おそらくしばらくは変更できないと理解した。
「先に謝っておく。砂利、ゴメンな」
「なんか分かんねーけど、気にすんな」
俺は事実が発覚する前に許されたのだった。
さてダンジョン攻略は更に続く。
マミーなんかも出てきて、正直気持ちが悪くなるダンジョンだ。
それでも砂利が頑張っていたし、狛里だって首を捻りながらも戦っていたので、なんだかんだ気がつけばボス部屋まで来ていた。
「ボスはリッチか。思った以上に強いのが出てくるな」
二つ目のダンジョンでこんなのが出てくるとか、正直今の砂利には荷が重いぞ。
それでも俺は手出ししない。
狛里は手伝うみたいだし、なんとでもなるだろう。
「頑張れ砂利!」
「応援はしてあげるわよぉ~」
「頑張れー!」
「わしも食う以外には力になれんでの。砂利に任せたぞ」
「ジャリボーイ!行くのです!」
「そうなのねジャリボーイ!お前に決めたのね!」
いきなり影から出てきて少女隊も応援?していた。
つかそのネタ、言いたかっただけだろ。
応援する気なんてサラサラ無く、少女隊はただ楽しい事をするだけなのだ。
そんな中狛里だけが、砂利と一緒に取り巻きのゾンビを攻撃する。
「私がザコを引き受けるの‥‥。あの大っきいのは砂利ちゃんに任せるの‥‥」
でもリッチには手出ししないのね。
とにかく魔力コントロール能力を高める事に集中するのか。
まあでも取り巻きザコを抑えてくれるのなら、砂利はリッチと一対一で戦える。
時間はかかるけれど、精神力さえ持てば勝算はあるのだ。
「やってやんぜ!」
砂利はザコの壁を抜けてようやく炎のウンコ刀で攻撃する。
焼きウンコの臭いがしてきそうなショボい攻撃だ。
それでもそれなりにダメージは与えられているようだった。
これを果たして何百回行えば倒せるのやら。
「マジックミサイルだぜ!喰らえ!!」
ほう、もう魔力が回復してきているか。
小さい魔力だけれど、回復力はそこそこある。
これは将来楽しみだな。
但し現状、ほとんどダメージは与えられていない。
リッチがザコアンデットを召喚する。
それを狛里が倒してゆく。
砂利はその間、数回リッチに撫でるような攻撃を繰り返す。
リッチがそれを嫌って反撃してくる。
砂利は攻撃を食らってぶっ飛ばされてもへこたれない。
「いってー!マジで痛いんだけど?助けてくれー!」
へこたれてた。
それでも砂利はリッチへと向かっていった。
「だから、俺たちが参戦したら一瞬で終るんだよ。一人で頑張れ!」
砂利も本当は力の近い者とパーティーを組んだ方が良いんだろうな。
その方が楽しいだろう。
と言っても、砂利と力が近い者ってのも難しい。
耐久力は神クラスと言って良いくらいなのに、攻撃力は精々中級冒険者レベル。
そしてスキルに至っては駆け出し冒険者。
何を基準に同レベルと言えばいいのだろうか。
耐久力だけなら俺たちと行動していても普通なんだよ。
「こいつ、倒せる気がしねーんだけど?」
「俺が見た限り、三百回くらい攻撃すりゃ倒せるはずだ」
尤も、リッチは自らを回復する個体も有った気がするし、断言はできないけれど。
「そんなに俺の体力が持たねー!」
「死にそうになったら助けるのです。死にかけるとより強くなるのです」
「そうなのね。むしろ死んでから助けるのね」
「死んでたら駄目じゃねーか!」
そんな設定のアニメ、多いよなぁ。
俺の世界にそんな設定はしていないけれど、そういうのも決められるのだろうか。
でもまだ零界をどうするか決めていない。
砂利の名前くらいはいいけれど、世界の事を決めるのは慎重に進めよう。
「死んでも蘇生は可能だ。心配するな」
砂利は死なないだろうけれど。
「やってやんよ!死ね!リッチー!」
必死に頑張ればなんとななりそうだな。
それよりも俺は、狛里の必死さが気になった。
ザコ相手に必死に戦っているように見える。
割と最小限の魔力で倒せているし、魔力コントロールはほぼ完璧に近いように見えるんだけどな。
まさかそれだけしか魔力が出せない?
訳ないな。
攻撃以外の動きは、やっぱり狛里だ。
世界の理最速で動いている。
それは俺以上の魔力が無いと難しい領域。
俺ですらスキルに頼っているのに。
その動きをしたら俺は攻撃ができない。
まあまだ何かが引っかかっているのだろう。
気の済むまでやればいいさ。
狛里や砂利の戦いは、そのまましばらく続いた。
徐々にアンデットの数は減り、リッチも弱ってきているのがハッキリ見えるようになってきた。
それ以上に砂利が疲れている感じがするけれどね。
しかしこのレベルの冒険者を回復させるのは容易い。
色々なポーションや、魔法だって存在する。
「魔力回復!」
みたまが俺よりも先に魔法を使っていた。
コレコレ。
「おお-!力が湧いてくっぜ!」
砂利の動きは一気に良くなった。
「助けてやるんだな」
「みんなも見てるのに飽きてきたから、早く終わらせてもらおうと思ってね」
確かに天冉も推古も眠そうな目をしている。
少女隊なんてゾンビの死体を念力で粘土のようにしてウンコを作る始末だ。
「そんな事してないのです!」
「そうなのね。これはソフトクリームなのね」
そう言われればそう見えなくはないけれど、正直絶対に触りたくない時点でソフトクリームとは言えない。
何処まで人差し指を近づけられるか試してみても、残り五センチを切ったら手が震えるよ。
「恐怖の人差し指なのね」
「菜乃は一ミリまで近づけられるのです」
「あっ!くっついた!」
「うぎゃー!汚いのです!」
「エンガチョなのね!」
やっぱりウンコじゃねぇか。
それにしても砂利のせいで、少女隊が出てきたら半分がウンコネタになってしまうようになってきたな。
そろそろアイドル路線に戻してやらないと、ウンコは飽きてきたしファンもいなくなる。
そもそもアイドルだった記憶がない訳だけれど。
金輪際ウンコっぽい話になりそうな時には見なかった事にしよう。
俺は心に誓うのだった。
覚えていたらの話ねw
さてそんな事をしている間に狛里がザコを倒し終わり、残すはリッチだけとなった。
「さあ最後だ!とっておきの魔法を見せてやっぜ!」
ほう、砂利は何か魔法が使えたかな。
「マジックミサイル!」
やっぱりそれしか使えないよな。
それでもちゃんと最後に決め手として取っておいたのは、戦い方が少しはマシになってきたって事かもしれない。
時間はかかったし魔力回復(念力回復)もしてもらったけれど、ほぼ一人で倒せたのはよく頑張った。
『熱さに耐えてよく頑張った!感動した!』と言ってやりたい所だけれど、猫蓮にもこのネタを使ったかもしれないのでやめておこう。
つか、自分を犠牲にして戦う辺りは似ているのかもしれない。
なんだか猫蓮を思い出す事が最近多いな。
猫蓮によって何か悪い事が起こりそうな予感がしてきた。
これは忘れた方が吉だと思う。
俺は頭を振って現実へと戻ってきた。
「どうだ?!俺もこんくれーやれんだぜ!」
「凄い凄い。よく熱い中アレだけ戦えたな」
俺なんて炎に包まれて耐性無しじゃ、五秒も戦っていけないぞ。
「メチャメチャ熱いっつーの!だけどなんてーかな。途中から熱さはほとんど感じなかったっつーか」
「そうなのか?」
何かあったのかな。
「ご主人タマ。内緒なのだけど、魂が人の方に移動していたのです」
「そうなのね。砂利の軟弱野郎は拷問から逃げたのね」
いや逃げていいだろ。
むしろナイス対応じゃないか。
でもそれに砂利は気がついていない。
無意識にそうしたって事か。
或いは自己防衛機能が働いたか。
人間なら皆持っていて、例えば強烈な痛みから解放される為に気絶したり。
辛い記憶は強制的に失くなったり。
まあ何にしても、これで砂利はウンコ野郎では失くなったのかな。
俺は一応確認すると、魂はしっかりウンコ刀へと戻っているようだった。
やっぱり普段はそっちのが落ち着くんだろうね。
「そろそろ宝箱を開けたらぁ~?」
「そうじゃの。このダンジョンはクリアじゃ」
見ると部屋の奥に宝箱が見えた。
「おお!今度も俺が開けっぜ!」
砂利はそう言って走り出す。
そうなると少女隊も‥‥、アレ?
「どうせ大した物は入ってないのです」
「もう分かっているのね」
確かにこの程度のダンジョンに、こいつらが満足するようなアイテムは期待できないだろう。
そんな訳で少女隊は影の中へと潜っていってしまった。
おやすみ。
俺はゆっくりと宝箱へと歩いていった。
俺が宝箱の所に移動した時には、既に砂利が中身を取り出していた。
「またスクロールみてーだぜ?」
「十徳道具って書いてあるわ」
なるほどそういう事か。
最初のダンジョンでは、アンデットを倒せる魔法を覚えた。
そして二つ目のダンジョンで十徳道具って事は‥‥。
「砂利、また広げていいぞ」
「おうよ!」
そう返事をして、砂利はスクロールを広げた。
するとやはり魔法が発動し、砂利が十徳道具の魔法を使えるようになる。
「なーんだ‥‥。大した魔法じゃねーな」
確かに大した魔法ではない。
だけれど、もしも普通の冒険者がその気持なら‥‥。
俺は神目線でこの冒険を楽しんでいた。




