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ピラミッドダンジョン

RPGの常識でもある。

それは、スタート地点から遠くなればなるほど、高いレベルにないとやっていけなくなるって事。

リセットワールドへ来る時、どうして同じ場所にしか来られなかったのか。

バグ世界や闇世界なら、表の世界と相対する所や座標指定した場所にゲートが繋がっていたのに。

それはこの世界がまだ、攻略されていないからなのか‥‥。


俺たちは零界の探索を再開していた。

その時ふと、気づいた事がある。

俺の魔力や能力がパワーアップしていたのだ。

これはおそらく、推古やハチ公が完全にこの世界の住人として確定したからだろう。

仮にもしもその推測が正しいのだとしたら、世界を創造する神はきっと、強い者を多く世界に住まわせたいと思うに違いない。

だから魔法世界か、科学技術が発展した人口の多い世界を創るのだ。

あくまで憶測だけれど、強くなる事で天界に行った時の立場が良くなる気がする。

俺はみゆきと一緒であればそれで良いのだけれど、その為に強さが不要だとは断言できない。

ならば零界をどうするのが良いのか、真剣に考えなければならないよな。

そんな事を幾つかの思考で考えながら、探索は関東甲信越から東北へと進んでゆく。

そして三日後、とうとう神話時代の日本地図が完成した。

イザナキとイザナミが創った、八つの島ね。

「次は北海道かな」

「何もなくて退屈なの‥‥」

「綺麗で良い所ではあるのよねぇ~。でもそれだけだと飽きるわねぇ~」

この二人がこういう事を言い出す時は、離脱を考えている時だ。

或いは本当に飽きたか。

「もう少しみんなで見て回ろうよ。多分本番はこれからよ」

「わしは命令には逆らえんし、どうせ暇じゃから付いていくぞい」

「俺も何していいか分かんねーし、異世界に来たら冒険しかねーから行くぞ」

嫁隊はみたまたちの言葉を聞いて、もう少し頑張る気持ちになったようだ。

一息吐いて天冉は笑顔を作った。

「ココからはもう少し速く走るの‥‥」

「そうするか。光宙の魔力も多少は増えてきてるしな」

何度も言うけれど、俺たちの世界でいう念力ね。

でも、少し魔力も増えているような気がするな。

これはきっと、この世界の住人になったからだろう。

と言う事は、推古も更に強くなるのか。

ちょっと恐ろしいな。

何処まで強くなるのか。

そしてそれによって俺の力も押し上げられる。

俺たちは飛んで海を渡った。

光宙もいつの間にやら飛べるようになっていた。

つかハエやカモとして飛んでいたからね。

衣服の一部を翼に変化させれば、そりゃ飛べるか。

それに、伊達に推古と一心同体だった訳でもないだろう。

そんな訳で俺たちは北海道を走り出した。

しばらく走ると、熊が視界に飛び込んでくる。

「熊がいるんだ」

「徐々に危険な動物も増えてきている気がするわ。甲信越地方ではマムシも見たわよ」

「もっと強いのと戦いたいの‥‥」

「狛里ちんと戦える動物はなかなかいないわよねぇ~」

狛里とマジで戦える奴なんて、そうそう出てきてもらっても困る。

そんなのが出てくれば、世界の存亡に関わるからな。

そんな事を考えている間にも、熊は視界から消えていた。

流石にこのペースで走っていたら、全ては一瞬しか視界に捉えられない。

光宙も一週間程度でよくココまで成長するものだ。

スピードに全振りとか言っていたけれど、やはり推古と一緒になっていた事が大きいのだろう。

世界地図が出来上がった頃に何処まで強くなっているかが楽しみになった。


北海道は一日で駆け抜け、そこから樺太、更には千島列島を制覇する。

そして俺たちはいよいよ、ロシアからユーラシア大陸へと入っていった。

ここまで北に来ると、流石に推古は寒そうだ。

俺は推古用に、温度自動調節機能が付いているドレスを作ってやった。

「推古。これを着れば寒くなくなるぞ」

「それはありがたいのじゃ」

神よりもポテンシャルの高い推古でも、寒さに弱いのは蜂だったからか。

今もまだ完全な人間じゃないけれどね。

そんな事もあったけれど、他には特に何事もなく、俺たちは高速で大陸を駆け抜ける。

走るのに疲れると、今度は更に高速で空から地図を埋めていった。

次第に獰猛な動物も数多く見られるようになってきた。

虎など肉食系の動物。

或いは毒のあるヘビやワニ。

カバや象なども見つけられた。

しかし‥‥。

「これだけ探してもまだ魔獣はいないの‥‥」

「そうだな。やはり零界には魔獣はいないのかもな」

それでも俺たちはなんとなく先へと進んでいた。

この頃になると、俺たちはエルドラールへは戻らず、みんなの家で夜を過ごすようになった。

距離が遠いから、一々戻ってはいられない。

万屋には一寸神ではなく等身大の分身を置いてね。

そして俺たちが眠っている間は、凜々たちにも探索を頼んでいた。



それから三日ほどで、ユーラシア大陸は制覇した。

東アジア、中東、そしてヨーロッパ。

結局空から見る限り、変わった所は見つからなかった。

もしかしたら天岩戸のように隠されたダンジョンはあったかもしれない。

しかし俺たちは、とりあえず地図の完成を優先していた。

そんな中、エジプトからアフリカ大陸に入ったところで、俺たちが漠然と探していたモノがようやく見つかった。

リセットワールドではあまり考えられない、人が作ったであろう建造物。

人はいないようだけれどそれはあった。

「ピラミッドか‥‥」

「この辺りは四千年以上前からあるって云われていたわよね」

「何か面白そうな気配がするの‥‥」

狛里の言う通り、ピラミッド辺りから気配が感じられた。

これは魔物だ。

「ようやくお待ちかねのモノが見つかったわねぇ~」

「お、おーよ!よーやく異世界転生の冒険が始まるぜ」

「魔物がおるようじゃが‥‥。とにかく入るかの」

推古はそう言って、光宙の手を引いてピラミッドの入口向けて空から落ちていった。

「うわぁー!」

正に落ちている。

でもこの程度で死ぬような光宙ではない。

むしろ死ねない体だしね。

推古が地面に降り立つと同時に、手を引かれていた光宙は地面に激突した。

「いってー!何すんだよ!」

光宙は直ぐに立ち上がった。

「元気そうじゃの。ほれ、ココが入口のようじゃ。偶には一番に入るのもいいじゃろ?」

偶にって言うか、初めてのダンジョンなんだけどさ。

天岩戸を入れても二回目なんだけどさ。

「そ、そーか。一番か。よし皆!俺についてこい!」

そう言う光宙を空から見下ろしていた俺たちは、やれやれと言った感じで地上へと向かった。

入口の前に降り立つと、当然少女隊が出てくる。

「一番は譲らないのです!」

「そうなのね。光宙には負けないのね!」

しかし既に片足を突っ込んでいた光宙に、少女隊が勝てる訳もなかった。

「いつの間に入口を開けたのです?」

「そうなのね。そんなシーンは描かれてないのね」

そりゃこの作品は描写がほとんど書かれてないけどさ。

そこはちゃんと想像でカバーしてくれよ。

「へっへーん!一番のりは俺だぜ!」

そう言って真っ先に入った光宙の顔に、何かが張り付いた。

「うおっ!なんだこりゃー!」

かろうじて口は塞がっていなかったのでそんな台詞も言えたけれど、これは良くない状況である。

「スライムなのね」

「この世界にもいたのです」

そう、スライムが光宙の顔に張り付いていた。

そしてこのままだと、光宙がスライムに食べられてしまうかもしれない。

つまり今度は弱いスライムになってしまう可能性がある。

とは言え光宙に、スライムを倒す術があるのだろうか。

あるにはあるけれど、それに光宙が気づくかどうか。

俺は面白いので放置して見ていた。

皆も同じ気持ちのようで、光宙がどう対処するかを見ている。

「冒険の始まりだぞ。スライムくらい倒せないようでは、此処から先は連れていけないよなぁ」

「分かってるよ!スライムごとき瞬殺してやんぜ!」

威勢はいいな。

それに倒す自信もありそうだ。

光宙は背中に手を伸ばし刀を抜いた。

本体はむしろそっちなんだよな。

つまりこれでスライムになる事は避けられるか。

そう思った瞬間、光宙は自らの頭に向けて刀を振り下ろす。

自分の頭もろともスライムを切って捨てた。

おいおい、そんな事してもスライムは倒せないぞ。

スライムを物理攻撃で倒すなら、核を斬ってしまわないと。

核はしっかりと外している。

光宙の頭だけが二つに割れていた。

「うおー!頭が割れているー!」

そりゃ自分で斬ったからな。

「でも生きてるー!」

そりゃオリハルコンスライム人間だからな。

「だったらなんべんだって斬ってやるぜー!」

アホだなこいつ。

「うおー!」

光宙は自分の頭目掛けて何度も刀を振り下ろした。

ちょっと怖いぞ。

キ印にしか見えない。

ある意味バーサク状態。

しかし何度も刀を振り下ろしている中で、スライムの核を斬る事に成功していた。

スライムがゆっくりと溶けて地面に落ちてゆく。

それに気づかず、光宙は尚も刀を振り下ろしていた。

「もうスライムは死んでるの‥‥」

「この人大丈夫かしらぁ~?」

天冉にも異常者扱いされているぞ?

とんでもない奴が転生してしまったもんだ。

俺は大げさに『ヤレヤレ』とポーズして見せた。

「おっ?ふっ‥‥、スライムごとき、楽勝だったぜ」

今更格好つけても、みんなの光宙を見る目は変わらないよ。

残念!


それからピラミッドダンジョンの中へ入っても、光宙の戦い方は変わらない。

一応スライムの核を狙って刀を振るけれど、なかなか当たらなかった。

最近魔力が増えたとは言え、冒険者レベルはスライム並み。

同レベルな訳だ。

ただ素敵な体を持っているから負ける事は考えられないし、いずれ勝利できているだけ。

それでも少しずつ倒すペースは上がっていった。

「魔法を使えば楽勝なのです」

「使わなくても楽勝なのね」

普通の冒険者なら確かにどう転んだって楽勝だろう。

なのに楽勝できない光宙。

既にこいつは零界の住人であり、エルドラールの神になる目は一応潰えている。

それでも強くなれば可能性はあると思っていたけれど、流石に俺も諦めざるを得ないか。

そう思った時、スライムではなくネズミポケ‥‥、じゃなくてネズミの魔獣が現れた。

光宙はソレを瞬殺する。

絵的に放送禁止にしたいシーンだ。

「スライムじゃ無けりゃ楽勝だぜ!」

「ほう」

小さな核を斬るのは器用さが求められるけれど、そうでなければ割とやれるのか?

某テーブルトークゲームだと、器用さと敏捷性って割と一緒に扱われるんだけれどね。

光宙は不器用だけれどスピードだけはある。

出てくる魔物が大型の獣化するにしたがって、光宙は普通に戦えるようになっていった。


光宙の戦いが安定するようになると、他のみんなもそれなりに狩りを楽しみ始めた。

一応全ての魔物が魔石を持っているようで、久しぶりに魔石集めといった感じになっている。

そんな中、俺は一つ違和感を覚えた。

なんだ?いつもと少し何かが違う。

何が違うんだろう。

俺はよく状況を確認してみた。

すると直ぐに理解した。

狛里が光っていない。

狛里は魔力が大きすぎるが故に、自分の魔力コントロールをサポートするアイテムを身につけている。

セーラースカーフね。

戦いの際、大きすぎる魔力を光に変えて無駄に消費させているのだ。

それでもここまで随分とコントロールできるようにはなっていて、今では攻撃の一瞬しか光を発する事はない。

しかしそれさえもが失くなっていた。

「狛里、光らなくなってるな。もう完全に魔力コントロールができるようになったのか?」

すると狛里が戦いをやめて俺の横までやってきた。

「もう大丈夫なの‥‥。かなり頑張ったの‥‥」

そういう狛里は、ちょっと嬉しそうだけれど、少し目を潤ませているようだった。

そうか。

そんなに嬉しいか。

「良かったな。じゃあもうセーラースカーフは」

『いらない』と言おうとしたら、狛里はスカーフを押さえて体を横へ向けた。

「まだ必要なの‥‥」

完璧にコントロールできるようにはなったけれど、まだ必要とな。

つまりまだ完璧ではないって事か。

「そうか。それは狛里の物だし、別に取ったりはしないぞ?」

必要失くなったら取られるとでも思ったのかねぇ。

つかただ木刀に変わるだけのスカーフをそれほど気に入っているとか。

少し狛里が可愛いと思った。


さてダンジョンはドンドン奥へと続いていく。

それに伴い徐々に魔物も強くなっていた。

と言っても、俺たちにとっては何も変わらない。

唯一光宙にとっては楽しいゲームのような冒険となっていた。

「徐々に強くなってんな。だがしかし!俺の刀で斬れない奴はいねーよ!」

ウンコ刀だけどな。

魂が憑依しているから、並みの刀よりもよく斬れてるよ。

気づくと少女隊の姿はなかった。

既に飽きて再び影に潜っている。

みたまは天冉と世間話か。

推古は光宙の戦いを見ながら、時々光宙にヤジを飛ばして楽しそうだ。

そして狛里は‥‥。

弱い魔物相手に、何故か必死に戦っていた。

なるほど、セーラースカーフが無くても完璧に魔力コントロールができるように、今も特訓中って訳ね。

それにしても必死に戦っている。

スカーフがあるのだから、そこまで必死になる必要はないと思うんだけれどね。

まあでもコントロールできないよりはできた方がいい。

俺は黙って狛里を応援した。


気がつくと最下層まできていた。

つまりなんだかんだ光宙は、ボス戦までたどり着いていた訳だ。

狛里も戦ってはいたけれど、いつものように沢山狩った訳ではない。

紛れもなく光宙の実力でココまで来たと言えるだろう。

尤も、死なないし体もオリハルコンで自由自在だし、この程度の相手に負ける可能性なんてないんだよね。

唯一ある意味負けるとしたら、最初のスライムに食われる事くらい。

スライムがオリハルコンをちゃんと食えるのかは知らないけれどね。

仮にその場合でも殺られる訳ではないし、ここまで来られる事は必然だった。

「さあラスボス戦だぜ!何でもかかってきやがれ!」

このダンジョンは、どうやら一度っきりの攻略で終るみたいだ。

魔物を倒したら再び湧いて出てくる様子はない。

ならば手出ししない方がいいだろう。

ボス部屋に出てきたのは、サイクロプスのような魔物だった。

特にヤバい魔法を持っている訳でもないし、普通にでかいだけの人形(ひとがた)魔物。

倒すのは容易いだろう。

「アレの相手は光宙に任せよう」

「分かったの‥‥」

狛里はやや不満そうだった。

いつもならこんなに弱い魔物とは戦わないだろうに、どうしたんだろうか。

「戦いたかったのか?でも狛里がやると一瞬で終るだろ?」

「倒さないように戦ってみたかったの‥‥」

魔力コントロールの特訓の為ね。

もしかしたらあと少しで完璧にマスターできる所まで来ているのかもしれない。

ゴールが見える所で足踏みは、あまりしたくないよな。

とは言え光宙がやる気だし、今が一番楽しい時でもあるはずだ。

俺にも狛里にも邪魔する事はできなかった。

サイクロプスのような魔物相手でも、光宙のウンコ刀の切れ味は輝いていた。

両手両足を一太刀で切断する。

そして最後は真上から振り下ろし、頭から一刀両断にしていた。

「俺つえー!」

確かに強い。

ほとんどオリハルコンの体のおかげではあるけれど、ここまで魔力が小さくても戦えるんだな。

これはアレだ。

RPGを始めてすぐに、最強の装備一式を揃えてしまって無敵状態になる感じ。

となると割と強くなるのも早いかもしれない。

ならばこいつが神になる可能性も微レ存頭に置いておこう。

エルドラールに戻れたらの話だけれどね。

「さて後は‥‥」

「宝箱があるの‥‥」

こんな所は現代風味のファンタジー世界なんだな。

リセットワールドのデフォルト仕様なのか、或いは俺の世界として動き出した事が原因なのかは分からないけれど。

「俺が開けっぜ!ひゃっほーい!」

なんかキャラ変わってきてないか?

もう少しヤンキー入っているのかと思いきや、完全なお調子もんだな。

俺は少し気持ちが沈んだ。

「同族嫌悪ねぇ~」

「人の振り見て我が振り直せよ」

はい、その通りでございます。

でも俺、多少はマシになってるよね?

もう爺さんの域に片足突っ込んでるし、だいたい大丈夫だよね?

光宙はスキップしそうな勢いで宝箱の前まで移動した。

俺たちも後から歩いてついて行く。

「それじゃ‥‥。開けていーか?」

「別に良いぞ」

どうせ大した物は入っていない。

なんせこの程度のダンジョンだからな。

一応トラップの(たぐい)は確認しておく。

当然の事だけれど無かった。

光宙が宝箱を開けると、中には小さな巻物が一つ入っていた。

スクロールと言った方がいいかな。

俺はそれ見て直ぐに理解できた。

これは魔法のスクロール。

「なんだこれ?」

光宙がそれを手に取る。

俺は少し調べてみたいと思い、直ぐに声を掛けた。

「光宙。ちょっと見せてくれないか?」

そう言うと、光宙はゆっくりとそれを俺に差し出した。

俺は手に取ると、今度は神眼でしっかりと確認する。

なるほどな。

これは広げた者に魔法を授ける為のスクロール。

単なるゴミスクロールではない。

巻物の外側には、マジックミサイルと書かれてあった。

俺は光宙にスクロールを返した。

「で、何か分かったのか?」

「まあな。光宙、この巻物を広げてみな」

「お、おーよ!」

俺が広げるよう言うと、光宙は返事をしてからスクロールを広げた。

すると直ぐにスクロールに込められた魔力が解放され、魔法が発動する。

「うおっ!何だ?!」

スクロールが発する魔力は思っていた以上に大きく、少し光も発していた。

「これは魔法を覚えられるスクロールみたいだな。今光宙はマジックミサイルの魔法を覚えられたはずだ」

神眼で見た所、失敗する可能性もあるようだったけれど、流石にこの程度の魔法を覚えられない確率は低い。

俺には魔法が成功したように見えた。

「マジか!?おお!分かる!分かるぜ!」

どうやら光宙は、無事魔法を覚えられたようだった。

まさかこんなに簡単に、魔法を使えるようにできるのか。

このスクロールの効果はしっかりと神眼で確認したぞ。

俺が手を差し出すと、光宙はスクロールを俺に差し出した。

俺はそれを受け取り、改めて神眼で確認する。

なるほどなるほど。

スクロールの紙には魔砂が含まれているのか。

これなら材料さえ揃えば俺にも作れるだろう。

尤も、イスカンデルでは北都尚成が能力を授けるダンジョンを作れたのだから、この程度俺にできない訳がない。

その頃の記憶が俺にあれば、これくらい楽勝で作れたんだろうけれど。

その記憶は少女隊が封印している。

俺はスクロールを巻き直し、元の形へと戻した。

「正直どうでも良いような物しか出ないと思っていたけれど、これは当たりだったな」

魔法が使えない人を魔法使いにしてしまう。

強力な魔法を覚えさせるのは難しいだろうけれど、零を壱にできるのは凄い事だよ。

自動車も走り出しにパワーを使うし、エアコンだって動き出すまでの電気使用量が多い。

光宙が今一つの魔法を覚えたのは、俺が一つの魔法を覚える百倍は価値があるのだ。

「うおー!試してぇー!」

「ダンジョンクリアしてから覚えさせるとは、何かの嫌がらせのようじゃの」

然り。

この嫌がらせ的な流れは、この世界が俺の世界であると感じさせるものだった。

でも‥‥。

「この零界にはダンジョンがある。探索を続けていたら又見つけられるよ」

「おーよ!早く次のをみつけよーぜ!」

「ダンジョンがあるなら私も頑張るの‥‥」

「面白くなってきたわね!」

こうして俺たちは、一つのダンジョンを制覇した。

このピラミッドダンジョン以外にダンジョンが本当にあるかは分からない。

でもゼロだった今までと、一つ見つかっている今ではモチベーションが全く違う。

俺たちは意気揚々とアフリカ大陸の奥へと進んだ。

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