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久しぶりにお前らと

エルドラールはみたまの創った世界だ。

だからみたまは知っている。

この世界がどういう世界なのか。

しかし全てを知っている訳ではないし、むしろほとんど知らない。

それがどうしてなのかは分からないけれど、みたまがそう言うのだからそうなのだろう。

そして当然時は流れる訳で、未来など全く知る由もない。


困難が多く不便な社会の方が、向上心を持つのでよく考え賢くなる。

でもそれは、困難や不便を乗り越える為に対してだ。

日本と言う国で生きる人は、特に困難もなく不便を感じなくても、より良い夢を求めているので賢い。

あらゆる事で新たな発明が次々に出て来る。

しかしそれも、教育を失敗すれば難しい。

逆に困難や不便が無ければ、人は平和ボケってヤツになるようだ。

「今の日本人は悪意に対して警戒心がなさすぎるよなぁ」

このデンジャー時代に、デンジャーが少なすぎるよ。

俺の知る日本なら、沢山デンジャーがいたんだろうな。

デンジャー協会でモブエロが会長に就任したあと、アトラクション大陸攻略メンバーに誘われた。

狛里や天冉は割と行きたそうだったけれど、俺は即断った。

テヘペロが会長を辞めて行くのだから、長期戦を想定しているのは明らか。

そんなに時間をかけていては、本業ができなくなるからね。

それに日本を長く空けたくはない。

いや空けるのは構わないけれど、直ぐに戻れる体勢は確保しておきたいから。

アーニャンと恵美がいれば何があっても割と対応できそうだけれど、デンジャー相手だと油断したらやられる。

気がついたら俺も、この世界で日本人になっているみたいだね。

「前の日本人を知らないの‥‥」

「少なくとも今の日本は不安になるわね」

「テレビを見ていたら平和過ぎるのよねぇ~」

恵美とは既に別れ、俺たちは萬屋に戻ってきていた。

テレビでは外国人が『日本にやってきて良かった事』を笑顔で語っている。

それを受けて日本人が『外国人にはもっと来てもらいたい』なんて言っているけれど、別にそれは日本人の総意でもなんでもないよな。

それが総意のように話す姿を見ていると、やはり不安を感じてしまう。

アメリカの惨状を見てきたばかりだから。

海外の様子を見て不安になる辺り、高杉晋作が清を見て危機感を持ったのと似ているのかもしれない。

テレビではアンケートの結果が表示されていた。

生活保護費を増やしてほしいとか、お小遣いがもっと欲しいとか、一生このまま暮らしたいとか。

そんな外国人が多くなっているとか。

そのお金、日本国民が必死に支払っている税金なんだよ。

感謝の気持ちすら伝わってこない。

なのにテレビに出ている日本人は何も感じないのだろうか。

尤も、それをする政治家を選んだのは国民なのだから、自業自得と言ってしまえばそれまでなんだよね。

正直テレビを見ていても気持ちが沈むので、俺はリビングから出て自室で横になった。


次の日、俺は皆にリセットワールドを冒険する事を提案した。

いずれどういう場所なのか調べる必要があったからね。

それに萬屋の仕事も無い訳で。

だからと言って情報収集という名のテレビはあまり見たくない。

外国人問題をなんとかしたいけれど、俺にできる事も思いつかないんだよ。

「賛成なの‥‥。虫取りするの‥‥」

「いやそれはしないけどさ」

六華みたいな事を言うな。

元気にしているだろうか。

我が娘よ。

「そうねぇ~。萬屋の仕事もないしぃ~、テレビを見てるのも飽きたしぃ~、良いんじゃないかしらぁ~」

「じゃあ決定な。アーニャンは悪いけど留守番頼む」

「分かったわ。僕には警察の仕事もあるし、ずっと店にはいられないかもだけど」

「オッケーオッケー!一応毎日夜には戻る予定だから、何かあればその時に」

「直ぐに連絡を取る方法はあるかしら?」

「そうだな‥‥」

こっちで何か有った時は、直ぐにアーニャンにコンタクトを取る事はできる。

でもアーニャンが俺たちの力を直ぐに必要とする場合もあるかもしれない。

滅多に無いだろうけれど‥‥。

「分かった。一寸神を一人残していくよ」

「了解」

「じゃあ狛里、天冉。行くぞ!」

狛里のサムズアップを見てから、俺たちはリセットワールドの我が家へと飛んだ。


リセットワールドでは、推古にも声を掛けた。

「という訳で、推古も来るか?」

「当然なのじゃ。じゃが既に結構広い範囲光宙が見て廻っておるようじゃぞ?」

「そうなのか?まあでも地図も作っておきたいし、悪いがもう一度見て廻る事にする」

俺の目的は、このリセットワールドの全てを見て周り地図を描く事にある。

この世界はいずれ俺が創造神となった時に、最終的にどうするか決める事になるのだろう。

その時の為に、本当に人が住んでいないのか、魔物はいるのか、どんな動物がいるのかを調べておく必要がある。

俺はできるだけこの穏やかな世界をそのまま残したいと考えているから。

やはり人間、自然の中で暮らすのが一番幸せだと思うんだよね。

大都会は便利だけれど、それが本当に人間が求めた生活なのかは疑問に思える。

尤も人が増えすぎたからそうならざるを得なかった所もあるのだろうけれど、だったら尚更、そうではない世界ってのも創ってみたい。

人が増えれば増えるほど自由が制限される訳で、もしかしたら人間のいないこのままの世界が良い可能性だってありそうだ。

もしも人間が世界にいなかったら‥‥。

或いは全ての人間を排除する事こそが世界の為に良いと考える人もいる。

俺はそうでは無いと思いたいけれど、ならば尚更より良い世界を想像しなければならない訳で。

その為にもやれる事はやっておきたい。

それでこの世界を調べるのは、基本的には日本時間で朝から晩までだ。

そして夜になれば萬屋に戻る。

でないとアーニャンにも迷惑をかける、と言うか、彼女は必ず眠りにつかなければならない理由があるから。

起きている時はエルドラールに、眠れば別の世界を生きる彼女。

時間的には重なる所もあるらしいけれど、その辺りどうなっているのかは本人にも分からないらしい。

ただ、毎日必ず寝る必要はあるのだ。

時差の大きいアメリカに行った時は、飛行機の中で爆睡していたよ。

日本を出たのは昼頃だったのに、よく眠れるものだと関心した。

「それじゃ‥‥私が地図を描くの‥‥」

「いや大丈夫だ。俺の頭の中には『妖凛ストレージ』と『冥凛AI』が搭載されているからね。二人に地図を完成させてもらって、俺がプリントアウトすれば済むから」

いやぁ~便利便利。

記憶してそれを教えてくれる妖凛だけでも助かっていたけれど、そのデータを冥凛が処理できるんだよな。

もちろん俺の思考だって記憶を処理する事くらいはできるけれど、それは俺の頭の良さに依存する。

ぶっちゃけ俺には正確な地図の想像なんてできませーん。

冥凛は賢いぜ。

ところで『なんとかだぜ』みたいな台詞を喋る人はアニメの中だけって話を昔聞いた事があるけれど、俺は使ってるから。

普通に使う人もいるから。

念の為。

「それじゃ行くか」

俺は出発しようと声をかけた。

すると天冉からみたまが姿を現した。

「この世界は良い所そうだし、私も一緒に行くわ」

ふふふ可愛い奴め。

そんなにお父さんと一緒に冒険がしたいのか。

なんて思っていると、みたまの表情がムスッとしたものに変わった。

「別にお父さんと一緒に冒険がしたいとか、そんなんじゃないんだからね」

おいおいツンデレかよ。

「そんな事は言ってないぞ?」

「顔が言ってるのよ。それにこれはむしろ天冉ちゃんの為なんだから‥‥」

「天冉の為?」

「そうよ。私が憑依していると、どうしても意識は私優先になっちゃうわけ。天冉ちゃんにも楽しんでもらいたいのよ」

そうなのか。

それでねぇ。

「でもずっと出てて大丈夫なのか?」

「んー‥‥、お父さんが妖凛や冥凛と分裂しているようなものと考えてもらえれば良いわよ」

「そっか」

俺と妖凛・冥凛は一心同体だ。

少女隊以上にその結びつきは強い。

だから分裂するとなると、それなりに魔力を食う。

俺にとってはそんな大した魔力ではないけれど、長く分裂していると当然支障も出てこなくはない。

つまり疲れたら憑依して、元気になったらまた出てくる。

そういう事なのだろう。

何にしてもこれでメンバーは決まったな。

多分‥‥。

「何を考えているのですご主人タマ!」

「そうなのね!妃子たちを忘れてもらっちゃ困るのね」

「やっぱり来るのか」

そう言いながら、俺の顔はニヤけていた。

喜びを隠せないな。

そうだよな。

この世界なら一緒に冒険の旅にも出る事ができるのか。

アルカディアでの戦いの日々が懐かしい。

「よし!出発だ!」

俺は真っ先に走り出した。

俺たちの冒険の旅は、走って行くのが基本なのだ。

と言っても、俺たちにとっちゃ大したスピードじゃないけれどね。

「競争なのね!」

「負けないのです!」

「ちょっ!」

そんなつもりじゃないぞ。

と思いながらも、俺は追いつかれないように走る。

すると狛里も天冉も、そしてみたままでマジで走り出した。

なんだよみたままで。

一人推古だけが飛んでいた。

元蜂だし、今もまだ完全な人間ではない辺り、こっちのが自然なのかな。

よくよく考えたら、この世界じゃ誰かに見られる心配も無いし、飛ばないという選択肢はないんだよ。

でも俺は、なんとなくそのまま走った。

すると推古が俺の横まできて声をかけてくる。

「どうして飛ばないのじゃ?そっちの方が楽じゃろ?」

「そうだな。だけど走った方が楽しいんだよ」

「そういうもんなのか?」

「ああ。推古も試してみたらどうだ?」

俺がそう言うと、推古も並んで走り出した。

流石だな。

楽に俺に並んで走る。

まともに追いつけるのは狛里くらいなのに。

俺はスピードを落とした。

皆が追いついてくる。

「二人に別れていたらご主人タマには勝てないのです」

「でも合体はしないのね。それで勝っても嬉しくないのね」

「別々で勝てる訳ないだろ!ははははは!」

そう挑発して再びスピードを上げようとしたら、前で推古が立ち止まっているのが見えた。

俺もそれに合わせてその場で止まると、皆も走るのをやめた。

「どうした推古?」

「どうやらこの場所、光宙が転生してきた場所みたいじゃの」

なるほど。

それでちょっと立ち止まって感傷に浸っているって事か。

「光宙がウンコだった場所なの‥‥」

「私なら意地でも捨てる記憶ね」

「そうねぇ~。すぐに立ち去りたくならないのかしらぁ~?」

「ウンコが好きなのです」

「違うのね。ウンコに戻りたいのね」

みんな言いたい放題だな。

光宙の記憶は推古がペラペラと喋ってくれたお陰でみんな知っている。

「マジ勘弁してくれー!別にウンコが好きでもねーし、ウンコだった頃を思い出してた訳でもねーんだよ!ただこの場所を懐かしんでただけなんだよ!」

「いいじゃないか。ウンコ。だいたい生きたウンコになる経験なんて、望んでもできないんだ。光宙はついてるよ」

ウンだけにね。

俺も言いたい放題です。

「そうなのです。菜乃もウンコになってみたいのです」

「妃子もなのね。他を寄せ付けないオーラを持っているのね」

オーラじゃなくて臭いだろ。

つかお前らが言うと、本当にそう思ってそうで怖いわ。

しかし推古がいきなり別人になって話すのは違和感あるなぁ。

二重人格だとしても差がありすぎ。

男と女だし、元人間と元蜂だし。

「もういいよ‥‥。どうせ俺は元ウンコ。それは一生変えられない事実なんだー!」

推古‥‥の中の光宙はそう言って再び走りだした。

青春だなぁ‥‥。

俺はなんとなくそんな風に思いながら、後に続いて走り出した。


この日の探索は、夕方までピクニック気分で続いた。

特に予想を覆すようなモノとの出会いはなく、生物は極見慣れた動物がいる程度。

凶暴な熊や虎なんかと出会う事もない。

ただ景色は色々とあって、海や湖、山や森などが見られた。

「今日はこの辺りで終わりにするか」

「ピクニックは楽しかったの‥‥」

飯以外はずっと走っていたけどね。

それも俺たちにすればゆっくりと歩いているようなものか。

話したり競争したりプロレスしたりだし。

「やっぱり太陽の下はいいわね。じゃあ私はそろそろ天冉ちゃんの中に戻るわ。明日もまた此処に来たら出てくるわよ」

「おう!おつかれ」

生前じゃ、絶対こんな事は無かったんだろうなぁ。

物心がついてからは、あまり話した記憶もないかもしれない。

ふと天冉の視線に気がついた。

「どうした?」

「何でもないわよぉ~」

何でもなくはないと思うけれど、まあいいか。

「それじゃご主人タマ、菜乃たちも帰るのです」

「あまりイスカンデルから出てると、神パワーがマイナスになるのね」

そういえば少女隊も一応神。

自分の世界を離れたら、その分取り戻す必要がある。

つかコイツラは神の仕事しねぇのかな。

きっと仕事は適当にして、闇の家とかにいる方が多くなりそうだけどさ。

実は既に異世界に行ってる可能性もあるけれど、話さないなら聞く必要もなく。

やる時はちゃんとやるだろう。

「お前らも神なんだから、イスカンデルを崩壊させるなよ。うっかり討伐対象にならなきゃいいけどな」

むしろそっちのが心配だよ。

「大丈夫なのです。菜乃たちが悪い事をするのはご主人タマにだけなのです」

「そうなのね。少女隊は子供たちの中ではアイドルなのね」

この話がアニメだったら、間違いなく少女隊のキャラソンは出てるだろうけどさ。

ついでに妖凛と冥凛で、ほとんど歌詞の無いキャラソンも作られたりして。

ユニット名は『凜々』だな。

「そうだな。そのつもりで俺はお前たちのボディーを作ったんだ。アイドルくらい軽くこなしてくれないと困る」

「任せるのです」

「一発屋として名を残すのね」

それでいいのかよ。

「じゃあ帰る‥‥か‥‥」

振り返ると既に狛里と天冉はいなかった。

「みんな少女隊との水入らずを‥‥」

再び前を見たら、今度は少女隊もいなかった。

みんな冷たい。

俺は分身を一人残してから、萬屋へと戻るのだった。

明日また此処から探索を始められるようにね。


萬屋に戻ると、みんなはリビングでくつろいでいた。

俺は特に何を言うでもなくソファーに座る。

そして俺の中の冥凛に声を掛けた。

『それじゃ冥凛、今日行った場所の地図を創造してみてくれ』

『ん‥‥』

返事を一つしたと思ったら、直ぐにそれが頭の中に映し出された。

そう表現するのが一番しっくり来るからそう言ってるだけで、実際に映し出されている訳じゃないからね。

つか、これは‥‥。

俺はその地図を見て驚いた。

これは、日本の近畿地方か。

それも縄文時代のような、大阪にまだ内海が存在した頃の。

神武東征よりも昔だな。

南方がまだハッキリしない時代。

もしかすると‥‥。

俺は明日続きの探索をするのが楽しみになっていた。

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