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転生したらウンコってマジ?

俺の名は『河合光宙(かわいぴかちゅう)』、十五歳の男子。

極普通の中学生だった。

だった?

そーなんだよ。

そーだったんだよ‥‥。

そんな俺はある時、ウンコを踏んで滑って頭を打って死んじまったんだ。

まさかそんな事で死ぬなんて。

クソッ!クソッ!クソッ!

(くそ)なんてマジでクソだと思ったね。

でも死んでしまったものはしょーがねぇ。

できれば転生しねーかなぁ。

なんとなくそんな事を考えていたら意識が失くなった。

意識が戻り気がつくと、俺はこの何もない世界に来ていた。

体は‥‥、ウンコだった。

って、なんでそーなんだよ!

ウンコなんてあり得んだろ!

転生モノのアニメなんかは色々知ってっけど、流石にそんなトンデモ展開は見たことないぜ?

だいたいウンコのせいで死んでウンコを憎んでいたのに、なんでウンコなんだよ。

でも生まれ変わっちまったもんはしゃーねーなぁー‥‥。

つか指一本動かす事もできねぇ。

指なんてねぇけど。

つかウンコが生きてるってなんだよ。

そもそもなんのウンコだよ。

臭くて鼻がひん曲がっちまうぜ。

って、何処に鼻があんだよ!

自分の体臭で死にそうになるなんて、俺やべぇ!

こんな体験ができる奴なんて俺くらいだろ。

ある意味ラッキーだな。

ラッキーじゃねぇよ!

いい加減にしろ。

だいたいこのままだと、枯れて死んじまうのは確定だな。

それで土に還るんだ。

せっかく転生できたのにそりゃねーぜ。

頼むから、せめて自分の運命は自分で切り開けるものにしてくれよ。

人間なんて贅沢は言わねぇ。

スライムでも蜘蛛でもドラゴンの卵でもいいからさ。

せめて普通の生物が良かったよ。

しかし暇だなぁ。

このまま臭い中で俺は枯れてゆくのだろうか。

そう思っていたら、ハエが一匹飛んできた。

こらやめろ!

俺を食うな!

やべぇぞハエ。

痛い!痛いよ!

つかなんでウンコに痛覚があるんだよ。

生前もっとハエに優しくしておけば、こんな事にはならなかったんじゃねーか?

つかハエに優しくなんてできねーよ!

コイツラ害虫だぜ?

見て殺さない奴なんていねーだろ?

駄目だ噛まれていると痛みで意識が飛びそうだ。

みじけぇウンコ人生だったな。

今度生まれてくる時は、せめてウンコじゃない奴にしてくれ。

そこで俺の意識はプツリと切れた。


また俺は意識を取り戻した。

空を高速で飛んでいる。

おお!スゲェ!

なんかまた転生したのか?

そう思ったら、先ほどまでと同じ臭いが辺りに漂っている。

そして俺はその根源であるウンコに着地した。

って、それさっきまでの俺じゃねーかよ!

ハッキリと覚えてるぜ。

景色も臭いも同じだ。

どうやら今度は、俺がハエになったみたいだな。

でもなんだろう。

ウンコが美味そうに見える。

徐々にその感覚は強くなってるぞ。

ハエの本能が俺に溶け込んでいるようだ。

そんな気持ちには負けねぇ!

俺はウンコから離れたいんだ!

でも俺の意思とは別の意思が、ウンコへ向かおうとしている。

どうやらハエの中に俺の意思というか、魂がただ移っただけみてーだな。

このハエ、さっき俺を食った奴だ。

つまり俺は食われると魂が移動するのかもしれない。

賢いぜ俺。

こういう話は色々と生前見てきたしな。

流石にウンコはねーけどさ。

つか俺を食うな!

ウンコを食うな!

でもマジでウメェ!

ウンコってこんなに美味かったのかよ。

こりゃ沢山(たか)っていたのも納得するしかねぇ。

もうここは諦めて、俺のウンコを食い散らかしてやるぜ。

俺のウンコって、俺が排泄した訳じゃないからな。

つか結局なんのウンコなんだよ!

それが分からないとなんだかスッキリしないぜ。

できればドラゴンとか希望だよ。

でも大きさ的には人間か犬って所だろうな。

やだなそれ。

リアルすぎて。

できれば魔獣でありますように。

そんな事を思っていたら、向こうでワンコが糞をしているのが見えた。

そのウンコは、ソックリ俺のウンコと同じだと判断できた。

あの犬かよ!

クッソ!なんてこった。

生々しいの見たら気持ちが悪くなってきたぞ。

でも美味いんだよなぁ。

臭いも既に良い匂いに感じられるし、完全にハエになっちまったみたいだ。

もういいよハエで。

ウンコよりは三倍マシだ。

飛んで移動できるだけでも、俺はこの世界で生きて行ける。

生きていくのか?

ハエで?

死んだ方がマシかも。

しかしウメェなぁ。

今は全てを忘れてこの幸せを味わっておこう。

と思ったら、そろそろお腹が一杯だ。

残念だなウンコ。

もっと食っていたかったぜ。

いやいやいや、いくらハエになったとしても、俺は人間としての尊厳は捨てない。

もう二度と食わねーぞ。

でも中毒性を感じる。

俺はきっと数時間もすればまたここに戻ってくるだろう。

人間としての尊厳サヨウナラ。

そんなものはクソ喰らえだ!

上手い事言っちまったな。

そして美味いもの食っちまったな。

‥‥虚しくなってきた。

とりあえずお腹が一杯の間は、優雅に空の散歩でも楽しむか。

そう思って飛び立った瞬間、俺の目の前は真っ暗になった。

何が起こった?

俺は飛んでいない。

身動きもできない。

体が痛い。

ハエに痛覚があるのかどうかは知らないけれど、やっぱりいてーよ!

これは消化液?

体が溶ける。

何かに食われたか?

そう言えばさっき視界の隅に『マガモ』が見えた気がした。

奴か。

奴が俺を食ったのか?

今度も俺の魂は移動できるのかね。

ハエよりはマガモの方がいいな。

渡り鳥だからちょっと面倒だけど、少し暖かい所で定住する事もできんだろ。

カルガモの仲間にでも入れてもらうぜ。

アイツラ怠け者だから渡らないし。

ああ、意識が失くなってゆく‥‥。


しばらくして気がついた俺は、やはりマガモになっていた。

よっしゃー!

これならそれなりの人生‥‥、いやカモ生を送れるだろう。

水面をスイスイ泳ぐのは気持ちえー!

しかし‥‥。

マガモの思考は結構感じられる。

こいつマジでバカだな。

鳥の中では割と賢い方だって思っていたけど、所詮は三歩歩くと忘れる鳩や鶏と同じ鳥のナカーマ。

食いもんの事と敵の事しか考えてねぇ。

おいこら!何やってんだ?!

苦しいだろうが。

ああ、逆さになって水草食ってるんだな。

味はまあまあだな。

むきになって食うほどじゃない。

だけど生きる為には食うしかねーのか。

いや、ただバカだから食えるもんなんでも食ってるだけね。

こうやって魂が移動しても元の魂は残ってるから、そいつと上手くやっていくしかない。

こいつと友達になれりゃいいんだけど。

流石にここまで馬鹿だと難しいぜ。

人間同士でもIQが二十離れていたらコミュニケーション取れねーって云われているし。

まあ俺は人間の中ではかなり馬鹿な方だけどな。

ははははは!ラッキーだぜ!

って、なんでそうなるんだよ!

流石にマガモとは一緒にやれんわ。

ハエの方がまだ何も考えてなくてコミュニケーションも必要ないから良かったかも。

クソッ!

せっかくだしドラゴンとか出て来て食ってくれねーかな。

流石にドラゴンなら最強だし、寿命も長いし、俺つえー的な楽しい毎日を送れるんじゃね?

きっと人の姿にもなれて、最高だと思うんだけど。

しかし今更だけど、ここって平和すぎじゃね?

全く平和じゃねーけどさ。

なんとなくだけど、本当は元いた世界に転生するはずだったような気がすんだよな。

何かトラブルがあって、受付する神様がご不在でこうなった気がする。

記憶にはねーけどな。

‥‥。

のどかだ。

のどか過ぎる。

転生っつったら、強くなって大冒険なんじゃないのか?

食物連鎖とか弱肉強食が今一感じられないぞ。

これでは強い奴に食われて強くなる計画が無理じゃねーか。

常に食われるとは限らんけどな。

狩られてそれで終わりって事もあり得る。

人間だって釣った魚を食わずに殺しちまう事もあるからなぁ。

そうなったら俺はどうなるんだろう。

今度は死体として生きたりして。

そんな事を思っていたら不安になってきた。

だったらマガモのままでいいか。

いやでも暇で死にそうだ。

生前は何もしない猫生活に憧れていたけど、それはそれでヤベーのかもしれん。

成長したぜ俺。

マガモだけど。

俺は頑張って俺の意思で大空に飛び立ってみた。

バカな元のマガモ思考なんて、無視すりゃ良かったんだ。

おお!!

空を飛ぶっていいじゃん。

気持ち良いぜ!

まあカモがほとんど水面とかで過ごしているのを見ると、そのうち飛ぶのにも飽きるんだろーけどさ。

でもしばらくは楽しめそうだ‥‥。


一週間ほどで飽きた。

飛んでも飛んでも大して景色が変わんねぇ。

つか完全にこの世界は大自然メインなんじゃね?

どれだけ飛んでも人っ子一人いやしねぇ。

人どころか魔獣とかドラゴンとか、そういうファンタジーな生物さえいねぇ。

いるのは普通にいる動物ばかり。

せめて人に飼われてー!

‥‥。

動物がバカなのは、暇で死んじゃうからかもな。

俺は目を閉じ、生前を思い出していた。

死んだら転生したいとか思っていたけど、それはチート魔法使いとかだったらって話で。

もしかして転生は、普通に拷問なのかもしんねーな。

そう思った時だった。

俺の体を何かが貫いた。

えっ?何が起こった?

俺の体はピクリとも動かない。

痛みすら感じない何かに殺られたのか?

でも、俺は生きてるな。

どういう事だろう。

そうだな。

ウンコでも生きていたんだ。

死体でも生きているに違いない。

「これは美味そうな鳥が穫れたの。今日の昼飯はこれにするのじゃ」

えっ?これは人の言葉?

俺は必死に声のする方向を見ようとするけど、首が動かねー!

死んでるしな。

でもウンコでも見られたんだ。

死体でも見られるだろ?

そう思ったら、目を向けなくてもその人が見えた。

おおっ!メッチャベッピン姉ちゃんじゃねーか。

何処かの国の姫様じゃねーの?

今昼飯にするとか言ってたよな?

こんな人になら食われてもいいぜ!

いやちょっと待て!

俺は食われたらその人の体の中で元の人格と一心同体になるんじゃねーか。

それはマズイだろ?

俺は男で、この子はおんにゃのこなのだ。

おんにゃのこの秘密を知ってしまうー!

‥‥。

いやでも自分も女になるって事じゃねーの?

生まれ変わったら男女どちらが良いかってアンケートでは、女が良いって方が多いんだよな。

俺はまだどちらが良いかなんて考えた事もねーけど、きっと女の方が良いに違いない。

なら問題ねーじゃん。

おっと、色々考えている間に家についたようだ。

立派な家が建ってるんじゃないか。

一応人が住んでる世界なら、これから俺は幸せになれる。

つかこの子、俺を瞬殺するくらいだし強いのかな。

強くねーと転生後を楽しむ事なんてできねーぜ?

俺はまな板の上に乗せられた。

まな板の上のカモか。

できればネギを持ってきたかったな。

その方がこの子は俺を美味しく食べられただろう。

しかし、これから包丁で切り刻まれるんだよな。

ちょっと怖いんですが‥‥。

「さて、どうやって食ってやろうかのぉ。カモは美味いのじゃ。やっぱり焼いて食うのが一番じゃの」

ギャー!

いきなり首を落とさないで。

羽をむしらないで。

内蔵を根こそぎ出さないで。

そんなに痛くはないけど、自分で見ると気持ちが悪い。

つか痛くて気絶している方がいいんじゃね?

「臭みは気にせんし、適当にぶつ切りにして焼くのじゃ」

俺は適当に切られて串に刺された。

そして火の上で焼かれる。

熱い熱い!

熱いよ!

なんで切られる痛みよりこっちのが感じるんだよ。

死んだマガモからステータスが肉に移ったのか。

なんとなくそう分かってしまった。

単純なものの方が痛みとか感覚が敏感になるなんてありえんだろ。

しかも微妙に気絶一歩手前なんだよ。

熱い熱い熱い!

俺、こんがり焼けて美味しそう。

じゃねーよ!

死にてぇ!

つか既に死んでるはずだろ?

もしかしてこれが不老不死って奴か?

こんな嫌な不老不死は知らねーぞ!

いつかは土となって生き続けるとか?

そう言えば俺、転生したら不老不死がいいとか思ってた気がするわ。

でも行いが悪すぎてこういう形になったとか。

はぁ‥‥。

こんな事なら、ウンコにも優しくしておくべきだった。

もう熱すぎて熱さも感じなくなってきたよ。

皮膚にカーボンの鎧ができてきたのかな。

いやすげぇよカーボン。

ゼロカーボンとかなんとか言ってる人いたけど、愚かだな。

カーボン大切よ。

ダイヤモンドも確かカーボンからできてたよな。

俺、カーボン真理教に入信するぜ!

とかそんな事を考えてねーと、マジで意識飛びそう。

「そろそろじゃの」

おっ?灼熱地獄からは解放か。

「ちょっとだけ塩を振るのじゃ」

うおー!!

染みる!

痛い!

塩は駄目だろ!

グアー!

流石にこれは耐えられん!

そこで俺は結局意識が失くなるのだった。


そんな訳で次に目覚めた時、俺はあの女の子になっていた。

えっと‥‥。

人間じゃねぇ?

キマイラBの女王だと?!

そう言えば死ぬ前、テレビでキマイラBがどうとかってやってた気がするわ。

つー事は、ここはエルドラールなのか?

世界は広いからな。

もう少し見て回れば‥‥。

『わしの中に誰かが入って来おったの。面白い事が起こるものじゃ。お主は何者じゃ?』

女王様に話しかけられたぞ!?

『えっ?俺?神の使いとでも言っておこーか』

『嘘じゃの。記憶全てこちらにも流れて来ておる』

だったら聞く必要ねーじゃん!

『でもどういう思考をしておるのかは、記憶からは分からんのでな。なるほど。お主がどういう者かはだいたい分かったのじゃ。とりあえず追い出す方法も分からんし、悪意もなさそうじゃ。しばらくはそこにいさせてやろう』

『あざーっす‥‥』

なんだか肩身が狭いなー‥‥。

こうして俺、十五歳男子の河合光宙は、異世界のようで異世界で無いような世界に転生しちゃったみてーだ。


それからしばらくして‥‥。

「もしも推古が俺の力を全てコピーできたなら、光宙も推古から分裂できるようになるかもな」

この人は此花策也って人らしく、女王様を使役するご主人様らしい。

曰く、分裂できるようになる可能性はあるみたいだ。

つまり希望はある。

俺はいつか分裂できる日を夢見て、とりあえず蜂女として生きていく事を決意するのだった。

つかどーでもいーけど、この女半端なく強くね?

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