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アーニャンも一緒に

政治家に女性が少ない理由は、政治はそもそも男の世界だからだ。

子供の頃、男の子はロボットや車が好きになるように、女の子は人形やぬいぐるみが好きになる事が多い。

政治は女性を惹きつける魅力に乏しく、関心を持って見る人は少ないのだ。

それが政治家の数にも影響する訳で、無理に女性を増やそうとするのは、女性を不幸にするだけなのである。

男女にはそれぞれの幸せがあり、やりたい事をしながら助け合える関係でありたいものだと俺は思う。


主人公とは、物語の中心人物である。

しかし時に、そうではない場合もあり得る。

「策也ちゃん‥‥主人公は私なの‥‥。だけど出番が少ないの‥‥」

確かにな。

だけどそうは言ってもなぁ。

「狛里は強すぎるから、活躍すると話にならないんだ」

「強いのは罪なの‥‥」

狛里はそう言って俯いた。

家族の事もあるし、強さには触れない方が良かったか。

益々強い事を嫌に思うかもしれない。

だけれど反面、強さに誇りを持っている所もある。

俺も強くなって分かったけれど、強すぎるのもそれはそれで悩みはあるんだよなぁ。

尤も、そうでなくては成せない事もあるし、守れない者もいる。

金持ちが金持ちなりの悩みがあるように‥‥。

ただそれは贅沢な悩みなのだろう。

俺はただ俯く狛里の頭をポンポンとするのだった。


狛里とそんな話をした次の日、俺たちはとある家に仕事できていた。

スズメバチが巣を作っているようで困っている。

だからそれを除去して駆除してほしいという依頼だった。

俺たちは早速その家に向かう。

『カタンゴトン、ガタンゴトン』

‥‥。

「流石に金も貯まってきた事だし、自動車を買うのも考えて良いかもな」

「策也ちゃんなら作れるの‥‥」

確かに作るのは問題ない。

だけれど、日本には車検とか保険とかある訳で、自作自動車だと色々面倒そうだ。

確かに古いオンボロ自動車に乗れば、壊れて他人に迷惑をかける可能性はある。

故障が原因で自らの命を落とすような事故に遭う事も否定できない。

しかしだ。

全員が一・二年に一度チェックをするのは過剰ではないだろうか。

余計なお世話だと言いたいね。

事故などあれば自己責任。

事故だけにね。

‥‥。

全く、こんなくだらない事を考えてしまうのは、本当にこの移動時間が無駄だからだ。

東京の人は通勤に三十分以上使うのは当たり前だと云う。

でもこれ、限りある人生の中ではかなりの無駄だと思うよ。


そんな無駄な時間を、狛里たちと生産性の欠片もない会話で埋めた後、俺たちはようやく依頼主の家へと到着した。

千葉県房総半島の東、海に近い所に建つ一軒家。

何が悲しくてこんな所まで来なくちゃならないのだろうか。

飛べば一瞬で来られる場所も、電車を乗り継ぎ何時間もかかってしまったよ。

電車賃も安くはないぞ。

尤も今の俺たちはもう、金にとやかく言う必要がないくらいには金を持っているけれどね。

あーあ。

来年の納税が楽しみだよ。

「わざわざこんな所までご足労いただいてありがとうございます」

「いえいえ、困っている人を助けるのが我々萬屋の仕事ですから」

こうしてちゃんとお礼を言われれば悪い気はしない。

何処へだって行けるよ。

チョロすぎるぜ俺たち。

「そうなの‥‥。何処にでもいくの‥‥」

「‥‥」

流石に天冉は、今回の割に合わない仕事を良くは思っていないか。

でも天冉も困っている人を助けたい気持ちはあって、当然反対はしなかった。

つかぶっちゃけ今回の仕事は俺一人でも余裕だし、なんなら後からセーブポイントを利用して飛んできても良かったんだけどな。

狛里も天冉も共に過ごす事が必要と考えていて、それはそれで分からなくはないけれどね。

「それでぇ~、その除去してほしいスズメバチの巣は何処にあるのかしらぁ~?」

それを知らないと仕事にならんよな。

しかしようやく桜が咲き始めた時期にスズメバチの巣とか、ちょっとおかしい。

だから駆除業者もまだ本格的なシーズンに入っていない訳で。

それで俺たちが呼ばれたんだけれど‥‥。

「それがねぇ。近くにはあると思うのですが、見つけられないのです」

巣の場所が分からんのかーい!

「そうですか。そのスズメバチは直ぐに見つけられるのですかね?」

「それはもう。裏に回れば、そこら中に飛んでますよ」

そこら中に飛んでるって。

スズメバチってそんなもんだっけ?

可能性としては、かなり巣に近いのかもしれない。

「それでは裏に案内してもらっていいですか?」

「はい」

俺たちは依頼主のおばちゃんについていって、家の裏へと案内された。

表の庭から、家を迂回して裏の庭って感じだね。

裏側に行くと依頼主の言う通り、本当にスズメバチを其処等中(そこいらじゅう)に見る事ができた。

なんじゃこりゃー!

「本当にいっぱいいるの‥‥」

「結構大きな蜂なのねぇ~」

「蜂の中では最大最強だからな」

あくまで前世での記憶だけれど、魔物を除けばこの世界でもそう考えていいだろう。

知らんけどw

「それじゃあ後はお願いしますね。私はちょっと怖いので家に入ってます」

「分かりました。終わったら呼びます」

「はい」

しかしこの数、もしかしたら既に何軒か駆除依頼を断られたんじゃね?

そもそもこの時期にこれだけの数の蜂が集まっているなんて、普通じゃない。

何か理由があるのだろうけれど、俺は蜂の専門家ではないので当然分からない。

とにかく除去するしかないだろう。

俺は索敵探索神眼と駆使して、辺り一帯スズメバチの気配を探った。

すると一ヶ所、数が集中している場所がみつかった。

おそらくそこが巣。

とりあえず蜂の活動は、そこを中心に集中している。

遠くまで行っている蜂はいなさそうだな。

半径十キロまでで確認できる範囲は確認した。

二キロまでなら百パーセントだけれど、それ以上は見落としもあるかもしれない。

しかし六百メートル四方より外には一匹もおらず、これなら間違いなく全滅も可能のはずだ。

一応結界で覆い、蜂が出られない空間を作る。

「狛里、天冉。おそらく巣はあの斜面にある穴の中だ。周りに被害が出ないように、飛んでるのも全て駆除してしまってくれ」

「分かったの‥‥。ようやく主人公が活躍するの‥‥」

「狛里ちんまかせたわぁ~。私は逃げてきたのを駆除する事にするわよぉ~」

狛里がやる気だし、天冉も概ね任せる事にしたようだ。

まあそもそも虫ってあまり好きじゃないのかもしれないけれどね。

うちの六華なら喜んで捕まえそうだけれど。

子供たちは元気にやってるかなぁ。

金魚やリンもいるし、大丈夫だとは思うけれど少し心配だ。

いや、会えない事がチョッピリ寂しいよ。

なんて思いを馳せていたら、駆除は滞り無く終わっていた。

「狛里早すぎだよ。俺がどれだけ魔法やスキルを駆使しても、これほど早くに全てを握り潰したりはできないわ」

時を止める以外ならね。

確認した所、二キロ圏内に蜂の生命反応はゼロ。

仕事は約三十秒だった。

「今日は主人公らしく活躍したの‥‥」

「おう。流石は主人公だ」

俺は狛里の頭を撫でてやった。

これで世界は今日も平和だ。

俺は俺の成果に満足した。


仕事が終わったので、俺たちは依頼主の女性に報告に行った。

「仕事終わりましたよ」

「あらまあ。早いわねぇ」

「一応確認お願いします」

そう言って再び裏庭まで同行してもらった。

「あら本当に。一匹も飛んでないわ」

「はい。全部やっつけましたので。死骸は全てこの袋の中です。ご覧になられますか?」

「死んでるのよね?それじゃ少しだけ‥‥」

俺は少しだけ袋を開けた。

中には無数の蜂が入っている。

「本当に。こんなに沢山いたのね」

「飛んでるの以外にも、巣に沢山いましたから」

しかしこうして見るとちょっと気持ち悪いな。

スズメバチは蜂の子も含めて食べられるし美味しいらしいけれど、流石にこれを食いたいとは思わない。

全部握りつぶされていて、見た目も悪いし。

あれ?それにしても狛里、刺されたりはしなかったのだろうか。

外を飛んでいるのはおそらく働き蜂だからメスだ。

メスは針を持っていて刺してくる。

狛里なら握りつぶすのも一瞬だし、上手く握りつぶしていったとは思うけれどね。

「それではこちらが代金になります」

「どうもぉ~。では領収書ねぇ~」

天冉はお金を受け取り、領収書を渡した。

蜂の入った袋は、いつか食べる事もあるかもしれないと思い、一応異次元収納へと入れておいた。


そんな感じで仕事を終えた俺たちは、帰りの電車に乗り込んだ。

「こうやって電車に乗るのも、それはそれでいいけどさ、やっぱ自動車が欲しいよな」

「だったら買いに行くの‥‥」

「そうねぇ~。ただ私たちってぇ~、何時この世界からいなくなるか分からないわよねぇ~」

「確かに‥‥」

確かにそうなんだ。

死んだとなれば相応の対応があるのかもしれないけれど、消えた場合借りている萬屋や貯金もどうなるのか分からない。

失踪は七年現れなければ死亡とされるようだけれど、その間誰かに色々と迷惑をかける事になるかもしれないな。

とりあえずお金は、必要なもの以外は貯金せず、金でも買って闇の家にでも置いておこう。

「自動車を買う事も含めて、その辺りアーニャンに相談してみるか。警察関係者ならどうするのが一番良いか、アドバイスが貰えるかもしれない」

「じゃあそうするの‥‥」

「そうねぇ~。この世界の人に後の事をお願いしておくのも必要かもねぇ~」

そんな訳で俺は、駅の乗り継ぎの際アーニャンに電話をした。

『あ、俺だけど?』

『オレさん?』

やべぇ、コレじゃオレオレ詐欺みたいじゃないか。

『策也だけど』

『うん。分かっているわよ』

‥‥。

いくらガラケーでも、番号表示から相手が誰かくらいは分かるよな。

『ちょっと相談があるんだけど今良いか?』

『どうぞ』

『移動に自動車が欲しいと思ったんだけどさ。俺たちって何時いなくなるか分からない身だろ?だからどうするのが一番誰にも迷惑がかからないようにできのるか、アドバイスを貰おうと思ってな』

自動車も住まいも、何も持たないのが一番良いのかもしれないけれど、仕事が長引く可能性もあるしね。

かと言って明日終わる可能性も無きにしも非ず。

なるべく身軽で、できる限り快適に。

ファンタジー世界なら、そんなの考える必要もなかったよなぁ。

こういう便利な世の中も、その分息苦しさを感じるよ。

『んー‥‥。じゃあ全部僕の名義で契約する?いやいっそ、自動車なら僕がクロパトで送ってもいいよ』

『いやアーニャンだって仕事があるし、いつも送り迎えは無理だろ?』

『僕の役職名は警察庁特別顧問なのよ。基本的に行動は自由だし、警察庁付きの萬屋みたいなものなのよね』

完全に雇われ職員って訳ではないのか。

『それでも完全に自由ではないんだろ?テレビ出演も断れなかったし』

『んー‥‥。年に数回は断れない仕事もあるにはあるんだけれど、それ以外は僕に全て任されているのよね。そして最大の仕事は萬屋との良好で強固な関係作り』

『なるほど、それなら俺たちの頼みは第一優先の仕事として成り立つ訳か』

つか年に数回の仕事って、売れない声優かっての。

友人に声優やってる奴がいたんだけど、『月に二本仕事があれば生きて行けるのになぁ』とかほざいてやがった。

売れてもいないのにどんだけギャラ高いんだよ。

『バグ世界やリセットワールドの家を自由に使わせてもらっている訳だし、こっちとしても相応のお礼はしたいわ。というかもしも良ければ、僕も萬屋で暮らして何時でも対応できるようにしたい所よ』

『マジか?』

『マジマジ』

ふむ‥‥、こちらとしても警察関係者の運転手と自動車はありがたい。

そして萬屋を家とするなら、万一の時は後の事も頼めるよな。

「狛里、天冉。アーニャンが一緒に暮らして自動車の運転手をしてくれるって言うんだけど、どう思う?」

「楊ちゃんなら大歓迎なの‥‥」

「そうねぇ~。部屋なら余ってるしぃ~問題ないんじゃないからしらぁ~」

返事は分かっていたけれどね。

『と言う訳だ。聞こえてたか?』

『うん。じゃあそうしましょう。確か萬屋の一階は銀行で、その地下には駐車場があったわよね?』

『ああ。だけどそこは銀行専用の駐車場だぞ?』

『問題ないわ。一ヶ所だけこちらで手を回して借りておくわね』

なんか警察庁特別顧問はスゲェな。

まあデンジャーならそれくらいできて当然なのか。

それに銀行に常に警察関係者がいる状態ってのは、セキュリティ面で逆に良いのかもしれない。

『それじゃ何時でも萬屋に来てくれ、セーブポイントを使って中に入っていいぞ』

セーブポイントが使えるのに、一緒に住む意味はあまりないのかもしれない。

でもこちらと向こうのタイミングが常に確認できる状態ってのはありがたい。

というか、俺たちも帰りはセーブポイントを使えば良かったじゃん。

でも狛里たちは、これはこれで電車を楽しんでいるから良しとしよう。

『これからクロパトで向かうわ。大して荷物も無いし、それで引っ越しも済ませちゃうわよ』

クロパト一台で運べる荷物って、どんだけ物が少ない生活してるんだ?

とは言えオレの部屋にもベッド以外にはほとんど無いか。

何でも魔法でできる訳だし。

『分かった。多分そっちのが早そうだから、空いてる所なら勝手に自分の部屋にしてくれていいぞ』

『了解。それじゃまた後で』

『ああ』

オレは携帯の切断ボタンを押した。


さて萬屋に帰ったら、既に全てが終わっていた。

「この部屋使っても良かったかしら?」

「ああ、問題ないぞ。しかし物が少ないな」

「バグ世界の家に置いているのよ。あそこ、行けなくなるって事はないわよね?」

なるほど、あっちに置いているのか。

「俺が死んだらどうなるかは謎だけれど、多分残るだろう。ウインバリアが健在であれば」

闇の家はイスカンデル。

バグ世界はウインバリア。

そしてリセットワールドはエルドラール。

それぞれの裏世界だから、おそらく元の世界が健在なら失くなるとは思えない。

逆に元の世界が崩壊しても俺が生きてさえいれば、それはそれで残るはずだ。

そういう気がするだけなんだけれどね。

「ところで、テレビは無いんだな」

「うん。受信料払いたくないのよ」

「‥‥」

この世界でも受信料とかあるのか。

普通情報を得るには対価が必要ではあると思うけれど、やはりこちらの欲しい情報が得られるネットの方が利用しやすい。

テレビは放送局が伝えたい事が中心になるからなぁ。

「あれ?でもプロのデンジャーって無料にならなかったっけ?」

萬屋のリビングにはテレビが置いてあって、それで最初この世界の常識を勉強をしていたんだよ。

受信料なんて払ってないぞ?

「そうなの?」

「知らんけど‥‥」

まだ『受信料払えー!』って来てないだけかな。

「ど、どっちにしてもテレビは一台あれば十分だわ」

「だな」

正直テレビを置いていても、電源が入っているだけで見ていない事の方が多いのだから。

ぶっちゃけ今更見たいものも少ない。

狛里は料理番組とか大食い番組は好きみたいだけれどね。

リビングに行くと、狛里が大食い番組を見ていた。

「策也ちゃん‥‥これくらいなら五分で食べられるの‥‥」

「そうだな。だけど狛里はこういうのがあってもチャレンジしなくていいからな。店が可哀想だから」

「分かっているの‥‥。店が潰れちゃうと困るの‥‥」

狛里が行くとマジで潰れそうで怖いわ。

つか、今日もテレビでの情報収集は無理そうだな。

かと言ってSNSでマウント取ってもつまらないし、今日は狛里に付き合って一緒に見るか。

そう思ってソファーに座ると、なんだか眠くなっていつの間にか意識はとんでいた。

眠っている間も、狛里たちの声は聞こえていたけれど、いつの間にかその声も聞こえなくなり‥‥。

『世界各国でスズメバチのような蜂が確認されています。しかしこれ、スズメバチじゃないですよね』

『先日ファーブルさんがアマゾンから持ち帰った蜂と同じようです』

『この蜂は一体どういうものなのでしょうか?何故世界各国で見つかっているのでしょうか?更に言うなら、政府が乗り出して早急に駆除している点も気になりますね』

『見つかったのは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、インド‥‥』

『全て西側、或いは某国との敵対国家なのが気になる所です』

『南半球では見つかっていないのでしょうか?』

『蜂の習性、或いはアマゾンで見つかっている蜂ですから、南半球でこそ活発に活動していると思われるのですが‥‥』

『とにかく、この蜂に関して情報をお持ちの方は‥‥』

そんなテレビの音は聞こえていたようだけれど、俺の意識は夢の中だった。

ちゃんと聞いていたのは、妖凛と冥凛だけね。

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