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リセットワールド

俺たちの認識でいう所の魔法とは、体内に蓄えた魔力によって起こす現象。

念術は、人がそもそも持っている生命エネルギーを使って現象を起こす。

妖術は、妖精が使う念術のようなものだ。

全ては、内にある力によって引き起こされる。

しかしこの世界では、マナから魔力を現象が直接取り込み、永続的にインフラが維持されている。

これは俺たちの常識ではありえない。

例えば永続魔法は存在するけれど、ほとんどの永続魔法は『魔石』や『宝石』といった、魔力を取り込み使える媒体が必要となる。

或いは、魔力ドレインの檻や変化の魔法は、常に『人』という媒体から魔力を吸収する事で永続化を可能としている。

つまりどんな魔法でも永続化するには『人(生命体)』か『媒体となる石』が必要なのだ。

なのにこの世界に来た事で、それは単なる思い込みで有ったと証明された。

魔法はそのものが魔力を集めても良いのだ。

この世界ではそれが当たり前。

当たり前だからこそ、個人的なその行為が基本的には禁止されている。

エルドラールの人たちは、その危険性を認識しているという事‥‥。

少なくともそれを禁止させた者たちはね。


この日俺たちはアーニャンに頼まれ、尖閣諸島の魚釣島地下に、セーブポイントを設置したりする為にやってきていた。

「こんな所に警察施設を作っていたんだな」

「うん。一応日本領土だから、他国の軍が上陸してきても警察権限で逮捕できるようにね」

なるほどなぁ。

「とは言え作るのは大変だったんじゃないか?」

施設というには程遠い単なる地下空間ではあるけれど、ここに来るまでの苦労を考えるとその難しさは分かろうと云うもの。

潜水艦で隠密に地下ドックへ入らなければならない。

辺りに他国船籍が無いかを慎重に確認しながら、一キロほど離れた海底の割れ目に作られた穴から入ってゆく。

海上保安庁ではなく海上自衛隊の協力無しにはたどり着けない。

「地下の空間自体は、元々それなりの大きさであったみたいだよ。地上までの階段と出入り口の設置は、かなり難しかったらいしけどね」

潜水艦だから大した機材は持ち込めないだろう。

当然複数のデンジャーが関わっているのは間違いないけれど‥‥。

なんとも羨ましい。

生前の世界でもこういうのがあったら。

なかったと断言はできないけれど、デンジャーのいない世界では建造は無理だったろうな。

「そう言えば、アーニャンは異次元収納魔法は使えないのか?」

「異次元収納魔法?」

「アイテムボックスと言った方が分かりやすいか」

ウインバリアではアイテムボックスと言っていたな。

「うん。使えるよ。だけれど数と大きさに上限があるから、大した物は持ち込めなのよね。だからセーブポイントを作ってもらうのよ」

「そっか。セーブポイントなら、人以外なら持っている物も一緒に移動できたか」

ちなみに人を連れて移動する事はできない。

元々ウインバリアでも、町への移動はみんな一緒にできたけれどセーブポイントはセーブした者が自ら移動するしかできなかったからね。

セーブポイントと町への移動は仕様が別だったって事。

あの時狛里がいきなりセーブポイントへ飛べたのは、別仕様だったからだ。

「それじゃ、ここにセーブポイントを作ってもらえるかしら?」

アーニャンが指定したのは、地下空間の奥にある倉庫のような場所だった。

でかい扉で広めの部屋って感じか。

「オッケー!」

俺は異次元収納を解放し、材料となる物を自由に出し入れできるようにした。

セーブポイントは、エルドラールでは三つ目となる。

萬屋の奥、アーニャンの家、そして魚釣島地下施設。

そう簡単に壊れるものではないけれど、誰もが接触できる所には作れない。

できれば厳重に人を制限できる場所が好ましいのだ。

そうするとなかなか作っておくのは難しかった。

俺は簡単にセーブポイントを完成させた。

俺のセーブポイント作成技術も洗練されていて、ドンドン素早く簡単に作れるようになっている。

そしてこの世界の魔法技術も取り入れ、見た目もそれと分からないような作りにできるようになった。

今回作ったものは、一見ただのテーブルのような形だ。

「コレなら誰も重要な移動装置だと分からないわね」

「だろ?形はもちろんだけれど、魔法装置っぽくないのが重要だ」

尤も、魔力の流れはどうしても消せないから、分かる人には分かるんだけれどね。

だからこそ作る場所は選ぶ訳で。

「所で僕をセーブポイントにする事はできないのかしら?」

「できなくはないけれど、あいつらは遠慮なくやってくるかもしれないぞ?携帯電話で許可を取るって意識は多分すぐに失くなるだろうから」

前に一度、俺が風呂に入っている時に移動してきやがった。

見られて困るものではないけれど、流石に所構わずはマズイ。

‥‥。

でもアイツら、見られて困る時にやって来た事はないな。

もしかしたら狙ってやっているのだろうか。

和魂(にきみたま)で狛里には俺の居場所が分かるだろうし。

ちなみに和魂とは一霊四魂の効果の一つで、和を結んだ相手の場所がお互いに分かると云うもの。

俺と天冉は、狛里と和を結んでいた。

「そっか。んー‥‥。仕事中に来られても困るわねぇ」

アーニャンは悩み始めた。

確かにセーブポイントになっておくメリットはある。

携帯ですぐに俺を呼び出せる可能性は、逆の立場なら魅力的だろう。

俺としてもセーブポイントはあらゆる保険になり得るから、多いに越したことはない。

ちなみに人でセーブポイントになっているのは現在五人プラス七人の一寸神だ。

俺・狛里・天冉・妖凛・冥凛、そして一寸神が赤炎・青水・緑風・黄雷・茶地・灰闇・白光ね。

妖凛と冥凛が人かどうかは微妙な所だけれど。

「こんな事はできないかしら?指輪のセーブポイントを作るの」

「なるほど。それは面白いな。今の俺ならできるかもしれない」

セーブポイントを作るには、基本永続的に使う為に沢山の魔石や宝石が必要になる。

それが当初常識だった。

だから人をセーブポイントにするにも、ある程度能力の高い者しかできない。

普通の人をセーブポイントにしたら、すぐに魔力が枯渇して死ぬ恐れもあるからだ。

しかしこの世界で『マナから直接魔力を得る』という概念を得た今、指輪程度の物でもセーブポイントにできるはず。

但し全く問題の無いセーブポイントになり得るかと言えばそうではない。

例えばマナの無い所や、魔力ドレインの檻の中なんかだと効果を発揮できない事になる。

思った以上にセーブポイントは魔力を食うんだよな。

だからどちらにしても人をセーブポイントにするのは慎重であるべきだけれど、使えない事があっても問題がないアイテムなら作っておく価値はある。

「どう?できそうかしら?」

「そうだな。とりあえずチャレンジしてみるか」

俺は今持っている宝石の中で、最も適していると思われるダイヤモンドを取り出した。

本当ならインテリジェンスジュエルの方が良い。

しかし今回自分をセーブポイントにしないのは、都合の悪い時にアイテムボックスにしまっておくという手が使えるからだ。

インテリジェンスジュエルは生き物だ。

仮にアイテムボックスに入れられるとしても、信頼関係を築くには逆効果になる。

結局セーブポイントとしての効果が得られないで終わるだろう。

普通の宝石を使って、何処までやれるか。

質量の大きなオスミウムとプラチナの合金が最適か。

或いは真逆で、水素や水など原子の数が多い物を選ぶべきか。

しかし水素や水は個体としての維持にも魔力を必要とするし、何かでコーティングするにしてもそれなりの強度が必要になるだろう。

宝石ではダイヤモンドが最も魔道具に適しているのだから、人工ダイヤで作るという手も‥‥。

駄目だな。

衝撃ですぐに砕けてしまう。

宝石を使うにしても、全体的には金属を使うしかない。

大きさも魔力量に影響するから、おそらく元素の数よりも質量優先でいいだろう。

そして硬さだ。

オスミウムは魔石並の硬度だけれど、プラチナとの合金にすれば一気にその良さは失われる。

バランス的にはタングステンの方が‥‥。

ちょっと待て。

何もこの世界にある金属から選ぶ必要はないじゃないか。

俺はこの世界にダイヤモンドミスリルやアダマンタイトを持ち込んでいる。

オリハルコンは向かないにしても、そのどちらかが最適だろう。

俺はまず、ダイヤモンドミスリルとダイヤモンドを使って指輪を作った。

そして宝石とリング部分のダイヤモンドミスリルに術式を書き込む。

「一応セーブポイントとして使えなくはないか?」

「できたのかしら?」

「んー‥‥。ちょっと魔力効率が良くない。これだとセーブポイントとしての効果を発揮する為に、使用者側でも大量の魔力を消費する必要が出てくるだろう」

ダイヤモンドミスリルとダイヤモンドの相性が悪すぎる。

例えるなら、N極同士だと反発して上手く行かない感じか。

或いは、やはり結婚するなら男と女の方がバランスが良いって所。

これならダイヤモンドミスリルよりも、普通のミスリルの方がまだマシだろう。

「つまり、僕が魔力を送り込まない限り、セーブポイントとして役に立たないって事かしら?」

「まあそういう事だな」

「だったらそれで良いんじゃないかしら?」

「ああ!なるほど。ならば一度試してみるか?」

俺は指輪に魔力を送り込んでみた。

思った以上に魔力を取られる。

それでもなんとかセーブはできた。

ちなみにセーブした時に、前のセーブポイントに飛ばされるような仕様は、今は全て排除している。

一々飛ばされて戻って来るのは面倒だからね。

あくまでアレはウインバリアのゲーム仕様として必要だっただけだ。

「ほれ、セーブしてみたぞ。次はアーニャンがそれを付けて、魔力を送り込んでみてくれ」

「分かったわ」

アーニャンは指輪を付け、そして魔力を送り込んだ。

「これ‥‥かなり魔力が必要なのね」

アーニャンでも発動までに十数秒の時間を要した。

これでは急いでいる時に助けが間に合わないどころか、他の事ができない可能性がある。

戦闘中に俺たちを呼ぶ事は不可能だろう。

試しにとんでみたら、とぶ事はできた。

「一応大丈夫だけれど、ちょっと実用的ではないかもな」

「でも、全く使えない訳じゃないわ」

「一応それはそれで使い道もあるか。とりあえずもう一つ作ってみるよ」

今度はアダマンタイトとダイヤモンドの組み合わせでやってみた。

するとどうだろう。

実に落ち着いた魔力の流れ。

「できたかもしれない。このままだとセーブポイントとして若干出力が弱いくらいで、少なくとも俺たちなら問題なくとべるだろう」

俺はセーブして指輪をアーニャンに渡した。

アーニャンはそれを付けてから十メートルほど俺から離れる。

「どう?移動できるかしら?」

「大丈夫だろう」

俺は問題なくアーニャンの横へと瞬間移動できた。

アダマンタイトとダイヤモンドの組み合わせが最良かどうかは分からない。

だけれど実用可能レベルのセーブポイントが作れたのだから、これはこれでいい。

「大丈夫そうね。これ、貰ってもいいかしら?」

「ああ。問題ないぞ」

「お金は警察の方から、できるだけ振り込みさせるわね」

「そっか」

金は別にいいけどな。

でも、ダイヤモンドは割と高いし、貰えるものは貰っておこう。

「ついでにこっちのもいい?」

「失敗作の方か。いいよ。それはそれでずっと付けていられるから、アクセサリーとしていいかもな」

アーニャンのレベル次第にはなるけれど、もしかしたらそちらの方が使いやすくなるかもしれない。

尤も、それなら単純にセーブポイント発動魔法が使えるアイテムを作った方が効率は良いと思うんだけれどね。

或いは『召喚の指輪』のような。

召喚の指輪の詳細は‥‥最初の作品を読んでねw

「じゃあそろそろ狛里たちを呼ぶか」

今日の目的は、そもそもセーブポイントの設置ではなかったのだ。

深淵の闇の中を前々から確認したいと思っていたのだけれど、東京で確認して何かがあったら困る。

何かがあっても大丈夫な場所ってのをずっと探していた。

適当に山の中とか入れば大丈夫だとは思うけれど、誰かに見られたりトラブルが起こる可能性はできるだけ排除しておきたい。

そんな話をしていたら、アーニャンがこの魚釣島の地下を勧めてくれた。

但し理由もなく部外者を入れる訳にはいかず、だったら『セーブポイントの設置や施設建造を手伝う』という理由で入る事になったのだ。

俺はテレパスで狛里たちを呼んだ。

すると直ぐに俺の横へと現れた。

「策也ちゃん遅いの‥‥」

「ホント。もう半分寝ちゃってたわぁ~。ふわぁ~」

いや半分どころか熟睡してただろ。

狛里にはヨダレの跡、天冉には顔に腕枕跡が残されていた。

「僕もそれ、見させてもらってもいいかしら?」

「ああ構わないよ。但し深淵の闇は基本的には危険だから、確認できるまでは闇に落ちないように気をつけてな」

「了解」

「あっ!それと今まではなかったけれど、向こう側からこちらに何かが出てくる可能性もゼロではないから、警戒はしておいてくれ」

色々と本を読んでいたら、深淵の闇を通って向こう側の住人がやってきたという記述が見つかった。

こちらから向こうに行けるのなら、向こうからこちらに来られても不思議はない。

よく今まで大丈夫だったよ。

「うん」

アーニャンは狛里たちよりも距離を取り、緊張した面持ちで俺の行動を待っていた。

やっと落ち着いて深淵の闇が確認できる。

アルカディアでは精霊界、魔界、暗黒界、そして地獄へと続くものだった。

イスカンデルでは本当の闇が広がる世界だった。

今では闇の家とかあるし、闇の住人である妖凛たちのお陰で、俺の庭みたいになっているけれどね。

そしてウインバリアではバグ世界へと通じていた。

バグ世界も、今では俺にとって庭の一部。

流れ的には今度も俺の庭になるような世界が広がっているはず。

俺は期待を持って魔法を発動した。

「ではいくぞ。深淵の闇!」

すると目の前の地面には、二メートルほどの闇が出現した。

見た所今までの深淵の闇となんら変わりはない。

邪悪な気配もなく、俺の中にいる妖凛も穏やかだ。

どうやらこの先は、確実に悪い世界ではないな。

しかし戻れなくなる可能性などは排除しきれない。

一つずつ確認していくぞ‥‥。

「どうなの?‥‥。大丈夫なの?‥‥」

「大丈夫じゃないかしらぁ~」

「僕は油断しないわよ」

そう言いながら、みんな闇へ近づこうと一歩踏み出した。

その時だった。

闇から何かが飛び出してきた。

俺たちは咄嗟に後ろへと跳んだ。

「何か出てきたぞ!警戒‥‥」

俺はそこまで言った所で、飛び出してきたものの正体を確認できた。

小鳥が地下空間を飛び回っていた。

「小鳥なの‥‥」

「これはジョウビタキだわ」

「可愛らしい鳥ねぇ~」

「ふぅー‥‥」

ジョウビタキか。

ジョウビタキと言えば雀くらいの大きさで、公園やなんかでも見かける割とメジャーな鳥だ。

しばらくするとジョウビタキはアーニャンの肩に止まっていた。

「ここは何処?この小鳥が不思議がっているわ」

「そんな感じねぇ~」

「ここは魚釣島なの‥‥。鳥ちゃんは何処から来たの?‥‥」

「そりゃ深淵の闇の中だろ‥‥」

って、闇の中からジョウビタキ?

俺はこの予想外の展開に驚いた。

深淵の闇と言えば、どこの世界でも普通は入るべきではない所へと繋がっていた。

しかし今回はどうだろうか。

小鳥も住んでいるような世界って一体‥‥。

「あっ!」

アーニャンの肩に止まっていたジョウビタキは再び飛んで、そして迷わず闇の中へと入っていった。

どうやら今回の深淵の闇は、闇の世界ではないらしい。

俺は一寸神の白光を召喚した。

白光の俺は、闇の中へと入ってみる。するとそこは‥‥。

「お花畑?」

辺りは美しい景色で、アルカディアで見た山頂の楽園のようだ。

今は空中都市に引っ越してはいるけれど、ずっと住み続けるならこういう所がいい。

「策也ちゃん‥‥どうなの?‥‥」

白光の俺は、本体の俺の所にセーブポイントを使って戻ってきた。

「ああ、入っても問題はなさそうだ」

俺はそう返事をすると、先に闇の中へと入った。

狛里たちも後から続いて、この世界に入ってからは言葉を失う。

ただ美しい景色を眺めていた。

「まさか深淵の闇の中にこんな世界があるなんて‥‥」

「どうやらここわぁ~、零世界(リセットワールド)って所みたいよぉ~」

天冉がそういう言い方をするって事は、みたまがそう言っているのか。

「世界が崩壊するとぉ~、世界はリセットされぇ~、そして新たな世界が作られる。らしいわぁ~」

なるほどな。

つまりここは、ひな型世界。

或いはデフォルト世界か。

「とっても綺麗で良い所なの‥‥」

しかし狛里の言う通り、この世界はコレで最高に素晴らしく完成しているのではないだろうか‥‥。

人が増え、人の手が入る事で、世界は徐々に壊されてゆく。

そんな風にも思えてしまうくらい今が素晴らしい。

世界が創られてゆく事全てが悪い訳じゃないけれど、自然を失う事はやはり人間にとって損失であろう。

だから日本人は自然を大切にし、それと共に生きてきたんだよな。

世界にとって、自然が最も大切だと分かっていたんだ。

尤も俺が死んだ頃の日本では、日本人も自然の大切さを忘れていた気がするけれどね。

メガソーラーとかガンガン作って、自然をドンドン破壊していた。

もしもこの世界が俺の世界だとしたら、できるだけこの美しい景色が残るように発展させていきたいな。

「この世界はきっと策也ちゃんの世界なの‥‥」

「えっ?」

「そうねぇ~。もしかしたら創造神としての仕事をする時が来たのかもねぇ~」

俺もみゆきやみたまのように、世界を創る神になるのか?

「いやそんな話は聞いてないし。まあでも、もしもここが俺の世界だとしたら、俺はこの世界をこのまま残す方向で考えるよ。ここだけしか見ていないのに決めるのは、時期尚早だと思うけれどね」

ここは自然豊かで素晴らしい所だけれど、そうではない所も沢山あるだろうから。

俺は白光の一寸神で、再び深淵の闇を作りそこに飛び込んでみた。

すると元の場所へと戻った。

エルドラールでは、これで確認すべき世界は全てのようだな。

「ここって、人は住んでるのかしら?」

「どうなんだ?」

俺は天冉の中のみたまに尋ねた。

「ん~‥‥。リセットワールドには、基本的に人も魔獣もいないみたいねぇ~。動物は住んでるみたいだけれどぉ~」

「なら、ここが策也の世界だとしたら、全てが庭って事になるのかしら」

「こりゃまた贅沢な庭だな」

昔『渋谷は俺の庭』なんて言っていた事もあったけれど、比べ物にならないくらい規模が大きすぎるぞ。

「でも策也ちんが望めばぁ~、人も魔獣もきっと生まれてくるわねぇ~」

俺が創る俺の世界か‥‥。

つかアルカディアもある意味俺の世界だし、世界を創るなんて事はあまりやりたくないんだよね。

とりあえずここは当面このままでいいだろう。

そしてこの世界を見て回り、それから考える事にしよう。

一応セーブポイントは作っておくか。

俺はなるべく自然を壊さずに済みそうな所にセーブポイントを作った。

セーブも当然しておく。

それから一旦家のセーブポイントに戻って、再びリセットワールドへと戻って来られるか確認する。

「セーブポイントは有効のようだ。だったらここにも家と防壁だけは建てておくか。狛里、天冉、手伝ってくれ」

「分かったの‥‥」

「はいはい~」

俺たちは自然をなるべく壊さないように、防壁と家を建てていった。

「僕は邪魔しないように見てるわね」

「悪いな。地下施設の方も後でちゃんとやるから」

この後は魚釣島地下施設の基礎工事もやる事になっていた。

トイレや風呂、各種部屋、訓練場などを整備する。

アーニャンは俺に任せる方が早くて良いものができるって知っているからね。

俺に依頼するのも当然だろう。

しかしまさか深淵の闇の先で家を建てる事になろうとは。

いや、期待はしていたんだ。

闇の家、バグ世界ときていたから。

これで今度は、恵美やこれから出会う仲間と、仕事が終わった後も会える可能性が高まった。

やっぱり、出会いと同じ数の別れがあるのは寂しいからね。


リセットワールドには、家を壊したりする生物はほとんどいないと思われる。

だから程々に対策を施して、俺たちは元の世界へと戻った。

それからまた同じような作業をして、夕方には終了した。

「策也、狛里、天冉ありがとう。正直これだけ充実した状態にするまでには、僕たちだけだと一ヶ月以上はかかるわ。場所を考えれば一年かかっても不思議じゃないよ」

「人数を集められればいいけど、ここに入れられる人も限られているだろうからなぁ」

この場所の機密を守る為にも、知っている人は少ない方が良い訳で。

これで少しは日本の防衛に役立つ事ができただろうか。

「問題ないの‥‥。人助けをするのは当たり前なの‥‥」

「それにお金もいただいているわぁ~。毎度ありがとうねぇ~」

この二人も、いつの間にか建築関係の仕事ができるようになっている。

まだまだ細かい所は俺の役目だけれど、萬屋らしくなってきたな。

戦うだけだと萬屋じゃないよね。

「それじゃ、俺たちは帰るよ」

「うん。また何かあれば頼むわね」

「分かったの‥‥」

「それじゃぁ~」

こうして俺たちの今日は終わった。


その頃アマゾンでは、各国首脳の懸念したていた事が現実となり始めていた。

それは世界を揺るがす大きな波。

だけれど俺たちはまだ気がついていない‥‥。

ブンブンブン、蜂が飛ぶ~♪

ちなみにあの漫画では蟻だったんだけどねぇ。

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