7.波乱のパーティー(ミリア目線)
ミリアは王太子を見つけて、アンネルのことを思い出していた。
ミリアは、アンネルのことが好きだった。
とても美しいと評判の姉であり、高慢な態度も無くいつも優しく接してくれる。そんな姉の婚約者が王太子に決まったと知らされた時は、嬉しいと同時に酷く妬ましい気持ちになった。
だから、お父様とお母様にお姉様ではなく自分を王太子の婚約者にして欲しいと願い出たのだ。もちろん、それが叶うことは決してなかった。
その件から、次第に姉のことが嫌いになっていった。いつも面倒だと言ってだらけているくせに、何をやっても完璧にこなす。尊敬の念を抱いたが、次第に嫉妬と憎悪の感情が募っていった…。
そんなある日、パーティーの前日になって姉から
婚約破棄を考えていると言われ、ミリアに王太子と婚約して欲しいと頼まれた。
なんて嬉しかったことだろう。今まで姉を嫌っていたはずなのに、一瞬でそんな感情が吹き飛んでしまう。そして自分を頼ってくれたということが何よりも嬉しかった。
そんなことを思いつつ、王太子に近づいて挨拶をする。
「お久しぶりです、レオナルド王太子!」
満面の笑みで挨拶をすると、王太子は一瞬驚いた表情を見せながらも
「やぁ、久しぶりミリア嬢。」
と優しく微笑んだ。ミリアはその声と微笑みだけで胸がいっぱいになる。やっぱり好きだ…。
「お姉様ったら、殿下を放っておきすぎだと思いますわ。いつも殿下はお姉様に会いに来てくださるけど、お姉様は殿下に1度も会いに行ってませんよね?本当に愛があるのかしら…。」
「そうだね…。アンネル嬢は私に会いに来たことはないかもしれないなぁ。」
王太子はさほど気にしてないような口調だった。
もしかしたら、お姉様のことを愛していないのかもしれないと期待をする。
「私なら、殿下を愛して差し上げるのに。ねえ、殿下…」
その先を続けようとすると、王太子に遮られてしまった。
「私はね、アンネルのことが大好きなんだ。だから、今回の君を利用して婚約破棄をしようとしている計画も可愛いものだと思ったんだよ。だけど、実際に誘惑されると虫唾が走る。まぁ、残念ながら君に対して微塵も興味はない。もし、アンネルのことを傷付けようとしたならば、いくら妹といえども容赦しないからそのつもりでいてね?」
恐ろしく冷たく、低い声だった…。聞いているだけでも鳥肌が立ち、体が震えてしまった。
今まで抱いていた王太子に対する恋の感情が、一気に冷めていくのを感じた。敵とみなされてしまったのだと気付いた時には、涙が零れていた。
「あぁ、泣かないで。アンネルが心配してしまう…。私以外のことをアンネルが考えることになるなんて嫌なんだ。」
それを聞いた私は、王太子の姉に対する異常な愛の感情を感じ、さらに恐怖を抱いた。
王太子は、姉以外の人に対して興味が無いのだ。
姉に対する執着と独占欲は凄まじいのだろう…。
そう思ったら、姉のことが心配でたまらなくなった。きっと、王太子の本性を知らないのだろう。
すぐに教えてあげなければ、そう考え足早に立ち去ろうとする。
「し、失礼しました。では、私はこれで…。」
「そうだ!もし、アンネルに余計なことを言ったら許さないからね?」
にっこりとそう告げられ、私は立ちすくんでしまう。
ダメだ、姉はこの人から逃げることは決して出来ない…。
王太子は震えて動けない私を見て、満足そうな顔でバルコニーの方へ向かった。
「お姉様…。本当にごめんなさい…。」
そう呟いて、静かにパーティー会場を後にした…




